9 成長と予兆
その日、さらに散策を続け、もう数匹モンスターを狩った。
モンスターには死体が全部残ることもあるが、場合によっては死体が消え、一部だけが別の形や、何かのアイテムだけが残って消えたりする。
とてもゲームチックすぎて現実感が薄くなってくるが、このモンスター討伐をするにあたってクレアやモルド、アーシュやギルドの人たちに聞いてみたが解ってはいないらしい。
おそらくとしかわからないらしいが、マナで形成されている部分の多いモンスターたちは大半がすぐに世界に還元されているからではないかという話らしい。
その代わりに余ったマナの一部が経験値とは別にもたらされる報酬なのではないかという話らしい。
学者たちが何世代にもわたって調べ続けている現段階の一つの結論だそうだ。
らしい、ばかりなのは、確証を持って言える根拠がいまだ不明だからである。
では、討伐系の報告はどうするのか?
それが、ギルド専用の、板。
鑑定である。
正確にはそれの簡易版だそうで、何を討伐したか、成したかがわかるものらしい。
いわゆる、行動記録。
ログである。
このおかげで、特に以来の任務の達成とかは証明できるらしい。
偽造しようとしても、どういう原理化、そこには、反映しないそうで誤魔化しは不可能なんだと。
ギルドの受付の美人エルフのお姉さんに聞いた。
ログについては、いくつかの方法で変えたりできるそうだが、そもそも成果の虚偽をすれば後々痛い思いをするのは、やった当人になるのでよほどの理由がない限りは進んで偽装するものはまずいないそうだ。
そして現在。
夕方、日がオレンジに染まり、沈み始めた頃。
俺はそろそろ、と孤児院に帰るために門に向かって歩きながら自分のステータスを眺めていた。
そんで今のスタータスがコレ。
【クリス】3才
レベル 1→4
HP 3 → 15 MP 2 → 8
STR 1 → 6
VIT 1 → 5
INT 1 → 4
RES 1 → 4
DEX 1 → 6
AGI 1 → 5
LUK 1 → 3
『欠損』
・・・・・・
低っ!
あ、いや一応成長してるんだから強くはなっているはず。
確かに数字だけを見れば、前回より最低でも3倍は成長してると・・・言えなくもない。
しかし、どうしたものかと、クリスはうなっていた。
「う~ん、レベルはまあ最初だから上がりやすいと考えることもできるが・・・それにしたって数値が低すぎてこれは、色々と今後のことを考えても俺にとってまず、一般的な強さを手に入れるには相当レベルアップが課題になるぞ?
現状、それ以外の方法がわからないし、これをアーシュたちに見られれば今後も外に出ての討伐も難しくなる。
クレアさんなんかに見られたら・・・・終わりかもな」
と、そんなことを考えつつ、門が見えたのでステータスを消し、近づいて行った。
「おおう。
クリス君、ずいぶん遅かったね。
心配したよ」
「すいません。
なかなかモンスターが見つからず、あちこち歩いていたから」
「・・・まったく。
こんな時間まで探していたのかい?
そんなことをして、もっと遅くなってたらクレアさんが門の外まで行って探しに行くかもしれなかったよ」
「・・・ははは。
ごめんなさい」
「とにかく、早く孤児院に帰ってあげなよ?」
「はい!わかりました。
それじゃあ」
「うん。
気をつけて帰るんだよ」
門のおじさんと軽く話した後、まっすぐ孤児院に帰った。
「ただいまー」
「!クリス君!
もう、心配したのよ。
初めて町の外に出かけたその日にこんな遅くまで帰ってこないなんて」
「ごめんなさい、クレアさん。
思ったより時間が掛かっちゃった」
「?時間が掛かった?」
「あ、うん。
ちょっと、モンスターと戦ってみたかったから。
あ、でもあくまで戦ったのはリンスラとかだよ?」
「・・・。
それにしたって、遅すぎです」
その後、どれだけ心配したかを、無茶はしちゃだめを何回言われたことか。
ほかの子供たちを連れたシスターが食事にするために話しかけてくれるまで優しいお説教が続いた。
「それで?どうだった?」
食事のための広場で孤児院たちシスターたちが集まって全員で夕食を取っている時、真っ先にクレアにお説教をされていたところを聞いていたアーシュが聞いてきた。
「何が?」
「外に出たんだろ?
モンスターは倒したのか?」
アーシュは聞きたそうに身を少し乗り出した。
「アーシュ、暴れないで。
こぼれちゃうから」
ご飯がお皿からこぼれそうになった所をミィナが注意する。
しかし、ミィナも興味があるのかクリスに体を向けている。
ロークやモルドも興味があるのか、こちらを向いている。
「・・・倒したよ、一応」
「うっそだー」
「アーシュ」
「だってモルド兄ちゃん。
クリスはみんなの中でかなりトロいんだぜ?
今日、初めてだし、いきなりモンスターはムリだよー」
「・・・ああ。
アーシュも初めていったときは怖がって戦いなんて出来なかったからなー」
「そ、そんなことないって。
オレはちゃんと倒したぜ?」
「それは、僕が瀕死にしたところでアーシュに狩らせたからだろ?」
「・・・そんな昔のことはいいんだよ。
今はクリスのことだろ?
クリスが倒したって嘘だよ」
「ねえ、クリス?
あなた、本当に倒したの?
モンスター」
「うん・・・まあ一応ね」
「ホント!すごいなぁ、ぼくだったらできるかわからないよ」
「ロークなら魔法でどうにかできるじゃない。
あなた、攻撃魔法とか使えるでしょ?」
「いや、ボクのは攻撃魔法といってもまだ自分のものになってないから使うのに時間がかかるんだよ」
「あれ?そうだったっけ?」
「うん、ボクのはモルド兄ちゃんの攻撃魔法みたいにステータスに出てきてないんだ」
「でも、ローク、普通に使えてるじゃない」
「あれは、魔法の本とかに書いてある方法を順番通りに魔法式を組んでやってるからだよ」
「へー。
そうだったんだー」
話は派生し、ロークの魔法についての話になったが、ロークの魔法に素直に感心していたミィナだったが、ミィナにはまだ魔法についての方式は難しかったらしく途中から考えるのをやめた。
「それでクリス?
モンスターを倒したんだろ?
どうだった?」
「・・・少しだけ、辛くなった。
生きているものを殺すことだから」
「・・・そう。
僕たち冒険者は生きる上で、依頼で場合によってはやらなくてはならないこともある。
・・・クリスはそのことを知ったんだね」
「うん、これも冒険者には必要なことなんだと思う」
「・・・クリスみたいな考え方をする人もいる。
何も冒険者は討伐ばかりがメインじゃない。
様々な仕事から自分に合った生き方を選ぶのもいいよ?」
「俺はそれでも冒険者になる。
なって世界を自分で見に行きたい」
「そうか、じゃあ頑張っていくしかないな」
「うん!」
「むう、二人だけで話しててわかんない」
「ははは。
いつか、ミィナも大きくなったら好きな仕事で生きていきたいねっていう話だよ」
「ふ~ん」
「まあ、今は今で楽しく過ごせたらいいさ」
「うん、そうするー」
「ははは」
「って!そんなことよりクリス。
モンスター倒したんだろ、何匹倒したんだ?」
アーシュは結果を聞きたくて仕方がない。
そんなアーシュに呆れる、モルドとロークだった。
「探し回ってて、見つけ次第だったから詳しくは覚えてないけど・・・10匹以上?」
「はあ!?初めてでそんなに倒したのか?」
「う~ん、たぶんとしか言えないけど・・・」
「初めてでそれはすごいな」
「そうなの?」
「うん。
モンスターにもよるけど、やっぱり最初は怖かったり、躊躇ったりするもんだから」
「もしかしてお前・・・レベルとか上がってないか?」
「へ?
うん、そうだけど」
「マジかー」
「それはすごいね」
「で、どれくらい上がった?」
「えっ?」
「レベル、もう7,8くらいは上がったりしたのか?」
「アーシュ。
そんなに簡単にレベルが上がったら苦労しないよ」
「まあな。
でもレベルって結構簡単に上がるだろ?」
「はぁ、それはアーシュが速いだけだよ。
アーシュみたいに半年足らずで、そう簡単に上がったりはしないの。
普通は上がれば上がるほど経験値の必要量が増えるんだから」
「あ、そっか」
「忘れてたろ?」
「いやー、あはははは」
「ふぅ・・・それでクリス?
レベルはいくつになったんだい?
もちろん言いたくないなら言わなくてもいいんだよ?」
「・・・えっと・・・よん」
「よん?」
「・・・・・・・・・・・レベル4になった」
「・・・・ぷ、ははははははは。
レ・ベ・ル4!」
「ちょっとアーシュ!
笑いすぎよ!」
「だってレベル4だぜ?」
「いや、それでも、自力で頑張って上げたんだから、すごいことだよクリス」
「ひひひ、ひー。
それにしたって4はさすがにねえだろ。
モルド兄ちゃん甘すぎだって」
(くそっ、やっぱり低すぎたんだな。
それにしてもアーシュのやつ、これ見よがしに笑いやがって・・・)
何かのツボにハマったのかアーシュは笑い続け、モルドたちに注意され、やっと笑いが治まってもまた思い出し、くくくっ、と笑い続けた。
「でも、クリスはすごいよ?
ひとりで行ってレベルだって上げたんだから」
「そうよ。
別に笑うことじゃないわ。
アーシュが悪いのよ」
(いいんだ、ローク、ミィナ。
むしろその純粋な慰めが心をえぐる)
二人のフォローがより深くボディブローとして効いた。
「いや、ホントすごいなクリス。
自力ですぐにレベルを上げたってのは。
レベル4でもちゃんと強くなったってことだよ」
「あ~~面白かった~。
まさか、クリス、レベル4にもなってなかったなんてな」
「普通はもっと上なの?」
「うーん・・・王都とかで普通に暮らしてて、町の外に出ない箱入りとかだと、かなり低いが・・・それでも、クリスくらいの年齢だったら、もう5~7くらいは勝手に上がってるものだから」
「むしろ、今までどうやって生きてたんだよ?
まさかレベル1で生きてきたなんて、ありえないし」
(む、アーシュのクセに鋭い)
と、思っていても口には出さないクリス。
「まあ、その調子で強くなっていったらいいだけだから、無茶はせずに頑張ってね?」
「・・・うん、わかった」
そう言って、モルドが締め、この話は終わった。
ただ、少し離れたところからクリスたちの話し声を聞いていたクレアだけがクリスのことを心配していた。
その後もクリスは度々、一人で門の外に出て、狩りを続けていた。
そんなある日、町に暗い話がもたらされてきたがクリスがそれを知るのは少し後になる。
「こんなにケガ人が増えたことなんてなかったのにどうしてでしょうシスター長?」
「クレア、手伝ってちょうだい。
もしかしたら、これは近くで何か大きなことが起こっているのかもしれないわ。
ココの治療がひとまず終わったらほかの教会の方々と一緒にギルド長に話を聞きに行きますよ」
「はい、分かりました」
そう言ってクレアたちは治療を待ってる病院の患者たち所に向かった。
その患者たちの体には、いたる所が黒く変色したり、攻撃を受けたのだろうところが黒くもやが罹って、受けた箇所が見えづらくなっていた。
―――――――――ステイメッカから少し離れた森の奥。
たくさんの木々に覆われほとんど日が差さない暗がりに一人、男がゆっくりした足取りで目的の地に向かって歩いていた。
「・・・これも必要なことの一つとはいえ、なんとも面倒な事か。
ここまで来たのに無駄足だったら、勢いで街を滅ぼしてしまおうか?
かまわないよな・・・・」
男は誰かに向かって話しているが、その場所を歩いているのは男だけであった。
「・・・ふん。
分かっている、そちらはそちらで好きにやればいいさ、私は私で目的を果たす。
・・・・ああ。
それまでは協力する心配するな。
そちらもミスをして私の邪魔はするなよ?」
男は迷うことなく歩み続ける。
「・・・・なに?
奴が来るのか?
・・・・こちらの用事が終わったら、邪魔程度にフォローしてやる。
だから、それまでは気づかれるなよ?」
だれかとの話はそこで終わったのか、男は黙って歩く。
足元から黒いもやを吹き上げながら・・・。
【クリス】3才
レベル 4→7
HP 15 → 23 MP 8 → 15
STR 6 → 11
VIT 5 → 9
INT 4 → 8
RES 4 → 8
DEX 6 → 13
AGI 5 → 10
LUK 3 → 7
『欠損』
~らしい。
とかいい加減に書いてしまっているところはご愛敬で。
さて前回からやっと主人公が戦い出しました。
冒険系だけどバトルシーンが少なかったので、ここからたくさんクリス以外も戦うシーンが増えてくると思います。
しかし、今回は会話シーンがメインだったから、今後大丈夫か・・・・・ま、なるようになる。
ということで、今後ともぜひ楽しんで読んでいただけたら幸いです。
優しいアドバイスと誤字のご指摘お待ちしております。




