7
ゴールデンウイークもあと一日で終わろうとしている。
響はまたあの公園に行き、ベンチに寝転び目を閉じて木陰に差し込む日差しを浴びる。
「また、ここにいるのね」
その声が御厨ミラノだということはすぐにわかった。
「こうしていると落ち着くんだ」
「邪魔しちゃ悪いかな?」
「いや、大丈夫だよ。ちょうど誰かと話したいと思っていたんだ」
「そ……そう。じゃあ、私が話し相手になってあげてもいいわよ」
「ありがとう」
響は起き上がった。その隣にミラノが腰掛ける。
「何かあったの?」
「何も」
「何も?」
「そう、特別なことは何も。ボク自身が妖かしに繋がりがあること、ミラノさんが妖かしに憑かれているということ……そのくらい普通のことしかボクの周りにはないよ」
「それが普通のこと?」
「そう、ボクたちにとってはいたって普通のこと」
ミラノは少し困惑するような表情をしたが、すぐにそれは穏やかなものに変わった。
「そうね、普通のことよね」
そう言って、それ以上は何も話そうとはしなかった。
それは特別なことなどではない。
あの影の感情を、自分は知ることが出来た。
それは外部からの情報とは違っている。あの感情は、自分の中から湧き上がってきたものだ。
それが自分という存在で、それが自分の中にある力なのだ。
――私はね、人間の妖かしなのですよ。
いつか伽音が言っていたことを思い出していた。ひょっとしたらあれは伽音自身のことでありながら、同時に自分に対しても言っていたのではないだろうか。
それは自分たちにとって日常でしかない。
そう自然に思える時がいつか来るだろう。
了




