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狂い踊れ 果てなき“愛”よ  作者: ベクトヴァイシル
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序章「胎動」

「寧々狐様・・本日も良き実りを・・・」

 寒空の中、かつて栄華を極めたであろう古びた大教会にて一人の少女が敬虔に祈りを捧げていた。

 彼女の名はルカ、狂信や背徳といった「カオス」が闊歩した世界にても女神への礼拝を欠かさない純真なる少女である。

「そうだ!今日村で祭りがあるんだった!いけないいけない!」

 彼女が焦るのも無理はない、なぜなら祭りの日でのみ出されるアップルパイは彼女の大好物なのだ。

「今日は~アップルパイ♪アップルパイ♪」


「・・・いつまでもこのような酷なことをなさるつもりなのです?彼女はあなたを本当に慕っている、かの(・・)者らのように信仰を違えるとは考えられません・・・」

 ルカが去り、誰もいないはずの教会で荘厳な声が鳴り響く。

「あなたから口を開くなんて珍しいですね、ヴァイシルさん?まあ彼女に対して酷な事を強いているのはわかっています、もちろん、その純粋な信仰心も。」

 それに答えたのは対照的に澄み渡った女神特有の声。そう、女神・寧々狐、その人である。

「ならばどうして!?彼女にあり(・・)も(・)しない(・・・)幻影(・・)を見せ続けているのです!?」

 先ほどとうって変わって怒号を放ち、ヴァイシルと呼ばれたこの男の名は、ベクドヴァイシル、旧き時代より女神寧々狐に仕えし騎士である。

「はぁ・・。ところでヴァイシルさん、これまでの村の祭りの周期、その回数、そして私が神託を下すことが出来る年齢・・今ここで口に出してみてください。」

「一体何の関連が・・、祭りは一年周期で行われ明日で15回目、そして18歳の誕生日には神託が「そして彼女をここに連れてきたときはちょうど3歳になった誕生日。」

「あ・・・」

 ここにてようやく彼も女神の考えが理解できた。

「神託を受けし勇者クラスで無ければ、かの「カオス」の世界に飲まれてただ死ぬだけ・・。焦りは禁物でよ。」

「・・承知いたしました。」


「おじちゃん!今年のアップルパイもおいしいね!」

「おぉ~ルカちゃんか。今年もいいリンゴがとれ・・」

 彼女は15年間過ごしたこの村でいつも通りの日を過ごす・・はずだった。

「ウッ・・!?」

 突如目の前を霧が覆い、腫れた後、少女ルカが視た景色は・・荒野だった。

「え・・みんな?」

「お誕生日おめでとうございます。ルカさん。15年ぶりですか?」

 状況を受け入れるだけの間髪も入れず、背後より美しき・・けれどどこか懐かしい女性の声がし、そしてその刹那、この村に来るまでの3年間の記憶が彼女の頭を駆け巡った。

 邪教・ねぇねぇ教に染まった父、天元神楽の下僕となった母。そして得体の知れない軍勢によって燃やされた故郷の城より、人ならざる手で助けられ、この偽りの村で暮らすこととなった過去を・・。

「思い出されましたか?この偽りの町に来るまでの経緯を。」

「・・はい。・・そして・・・貴女は・寧々狐様・・?」

 あまりの情報量にパンクしそうな頭を抱えながら彼女は言葉を紡いだ。

「その通りですよ。フフ、すぐにその言葉が出るあたりやはり貴女は利口です。」

 そのあまりの美貌に女性ながら息を飲みながら、ルカは思考した。―一体何の用があって私に会いに?―

「あぁ、それはですね・・」

 さも当然のように心を読み、その質問に答えた。

「あなたに勇者となり、この世界を救って欲しいと思っているんですよ。」

「・・え、えぇと・・拒否権は・・?」

「もちろんありませんよ。(ニコッ」

(いい笑顔で遠回しに死刑宣告された・・!?)

 彼女はこれより訪れるであろう非業の死を予感し嘆いた。

「安心してください、ルカさん。貴女にはこの剣と・・。あとは・・「私の同伴を許可して頂きたい。」・・!?ヴァイシルさん・・。」

 女神の傍らにいた騎士が突如口を開いた。

「・・貴方でも生きるか死ぬかは分からぬ世界、しかも私達神族は特性上これ以上の成長は無い・・。それでも行きたいのですか?」

「えぇ、もちろんです。」

「・・はぁ。貴方の正確は分かっています。好きになさい。」

 そしてルカの方に振り向くと、

「貴女には、この“剣”、そして・・私の「騎士」を貸し与えましょう。では、ごきげんよう。」

「え、ちょ、まって・・」

 彼女が状況を完全に理解する間も無く、足下より暴風があふれ出した。

「え・・あ・・ね、寧々狐様!が、頑張ってきます!」

「えぇ。頑張ってらしゃい。私の妹に似た少女さん。」

(ここで衝撃事実発覚!?て、この風どこに飛ばしていくのー!)

 ―そして少女ルカ、そしてその騎士ベクドヴァイシル。二人の冒険が始まった。



「このような「カオス」を極めた世界・・もはや壊そうと考えていましたが・・。まぁあと少し猶予してあげますか・・。」


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