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並行世界(パラレルワールド)は君のいる世界  作者: 方丈 治
第二章

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将軍の秘密

 

 団子屋では見知らぬ薬師に邪魔をされたものの、双子は標的のチガヤ将軍と着実に関係を築いていた。いまや並んで歩くことができるほどまでに。


 彼女たちはこの数日間、それは奮闘した。まずはチガヤの行動範囲をさらに観察し、団子屋の他にも、行きつけらしき書房と呉服屋を調べ上げた。城から私邸に帰る際、大抵、そのどちらかに寄っていくのだ。


 そして、双子はそれぞれ書房と呉服屋に別れて待機した。チガヤがどちらに向かっても、「団子屋での女人」に再開できるように。これは彼女たちが一卵性双生児だからこそできる作戦だった。


 かくして、一日目は書房、二日目は呉服屋、三日目もまた呉服屋で、チガヤに「団子屋での女人」を会わせることに成功した。実際は中身がキギである時もあり、スイである時もあり、日によって入れ替わっているのだが、チガヤは全く気付いていなかった。


 偶然の再開が何度も重なることを面白いと思ったのか、それとも彼女たちの美貌にかれたのかは分からない。だが、チガヤに興味を持たれたのは確かだった。


「私たちが何度も出会うのも何かの縁だろう。少し話をしないか? 貴女に聞きたいことがあるのだ」


 チガヤにそう告げられたのは、三日目に呉服屋で鉢合わせた時のことだった。その時の「団子屋での女人」はスイだった。スイは一歩前進できた嬉しさで叫び出したいほどだったが、何とか堪えて言葉を返した。


「私も同じことを思っておりました。貴方様のことをもっと知りたいです」


「明日の夕刻は何か予定はあったか?」


 チガヤは後ろを向き、家令に明日の自分の予定を尋ねた。家令はすぐに答える。

「いえ、特にございません」


「では、明日も同じ刻頃にこの店で」

「はい」


 そうして、二人は明日また会う約束をして別れた。


 その後、スイは姉と落ち合うと、興奮冷めやらぬ様子で呉服屋での出来事を話した。


「よくやったわ、スイ!」


 キギも顔を輝かせて喜んだ。そして少し考えてから、スイに告げた。


「じゃあ、私が将軍と会っている間、スイは将軍の屋敷の潜入して秘密を探ってきて。あんたの方が忍び足上手いしね」

「キギの方が立ち回りが上手だしね」


 二人は笑い合うと、互いの手をパンと交わし合った。



 ◇◇◇



「あら? 旦那様はご一緒じゃないの?」


 ここはチガヤ将軍の屋敷。帰ってきた家令を見つけて、小間使いの女が声を掛けた。主人は城でのお勤めが終わった後は大体、家令を連れて寄り道してから一緒に帰ってくるので、一人帰ってきた家令が珍しいのだ。


 そんな彼女に、家令はどこか誇らしげに答えた。


「旦那様は今、逢い引き中だ。私が居てはお邪魔になるだろう?」

「だ、旦那様が逢い引き……⁉」


 小間使いが仰天して、家令に詰め寄った。


「お相手は女人なの? いえ、そもそも人間なの? あの旦那様が人に興味を持たれるなんて……」

「ふっふっふ、安心したまえ。間違いなく女人だ。しかも美人だ」

「なんてこと……! 赤飯を炊かなきゃ……!」


 小間使いの目に思わず涙がにじむ。家令も今までの苦労を思い出して、しみじみとつぶやいた。


「これまでどんなご令嬢との縁談にも見向きもされなかった旦那様だからな……おまえの気持ちはよくわかる。病で療養中の大旦那様にも良い知らせをお持ちできそうで、私もとても嬉しい。とにかくこれで、旦那様の代でナナギタ家が潰える心配がなくなった……」

「そうね、あとはお相手の方が旦那様のあの・・ご趣味を理解してくださればいいのだけど……」

「いや、それは明かさないままの方がいいだろうな……だって、あれは──」


 口ごもる家令に、小間使いはビシッと正論を言った。


「でも夫婦になるのよ。それに、一緒に暮らしていたらいつかは知られることでしょう?」

「むむ……」


 この屋敷の使用人では、チガヤの秘密を知る者はこの二人だけである。外の厳重な警護はその秘密を守るためにあると言っても過言ではない。チガヤを、ナナギタ家を守るため、決して世間に知られてはいけないのだ。


「ねね、そのお相手の方ってどんなお方? 旦那様の秘密を守ってくれそうな感じ?」

「ううむ、私もまだそれほど深くは関わったことがないからな、何とも……」


 その時、二人のもとに若い使用人がやって来た。


「あの、今、旦那様のお知り合いという女人が来られたのですが……お通ししたらよいのでしょうか?」


 その言葉に、家令と小間使いが顔を見合わせた。


「……私がお出迎えする!」


 そう言うと、家令は小間使いと共に、玄関に急いだ。外に出ると、門の前に一人の女人が立っていた。家令はその顔に見覚えがあった──旦那様と逢い引き中のはずの、あの女人である。


「貴女様は……! 旦那様とのお約束がおありだったはずでは……⁉」

「そうなのですが……昨日の呉服屋でお待ちしていたのですが、約束の刻を過ぎてもあの方が来られなくて……。何か手違いがあったのではと思い、お伺いしてしまいました。あの、ナナギタ・チガヤ将軍でいらっしゃいますよね……? 団子屋で初めてお会いする前にも、何度かあの方を街でお見かけしたことがありまして……」


 舞耀に住む者なら、チガヤの顔を知っていて当然である。そして、ナナギタ家の屋敷も有名であるから、この女人が訪ねてこられたのも不思議ではない。


 しかし、そんな考えもすっ飛ばして、家令の頭はぐるぐると同じことを考えていた。


(旦那様は一体いずこに……⁉)


 逢い引きに誘った方が約束を反故にするとは。このままでは、この女人に嫌われてしまう。

 これは主人の一大事だと瞬時に悟った家令は、頭を深く下げて言った。


「どうぞ中でお待ちください! すぐに旦那様を探してまいります!」





 家令に屋敷の中を案内されながら、スイは上手くいったことに内心安堵していた。


(うまく騙されてくれて良かった……。警護が厳重だし、使用人も厳しいのかなって思ってたけど、案外そうでもなかったわね)


 廊下を歩きながら、前を歩く家令が隣の小間使いの女に囁く声が聞こえた。


「この方を部屋にお連れしたら、私は旦那様を探しに行く。お前は向こうを頼む」


 小間使いが頷くと、家令とスイからすっと離れて行った。スイはその行く先を目で追うと、小間使いは枝分かれになった廊下の先を行った。


(……向こうにあるのね)


 小間使いはきっと、主人の秘密を守りに行ったのだろう。万が一でも客人に見られないように。


(そこに例の妾がいるのかしら?)


 それから程なくして、家令は一つの部屋に入った。ここが客間なのだろう。


「では、申し訳ありませんが、しばしお待ちください。私はこれから旦那様を──」


 家令はそう言って部屋を後にしようとしたが、異変に気付いて足を止めた。


「ど、どうされたのですか……⁉」


 女人が腹を抱えてうずくまっている。顔を歪めて息も絶え絶えに声を絞り出す。


「持病の癪ですわ……こんなところを誰かに見られるのは恥ずかしいので、どうか私のことは放っておいてくださいませ。しばらくすれば治りますので、お気になさらず……うっ」


(そういえば、あの時も……)


 家令は団子屋で初めて出会った時のことを思い出した。主人と少しぶつかっただけでよろめくほどに、この女人は体が弱いのだ。


 家令はすぐに屋敷で抱えている薬師の部屋へ駆けつけようと思ったが、すぐに「駄目だ」と思い直した。間が悪いことに、薬師は先ほど、薬の調達に街に出て行ったばかりだ。


 だが、こうして目の前で苦しがっているのに、いつ帰ってくるかもわからない薬師を待ってはいられない。


(この先、奥方となられるかもしれぬお方の危機……! こうしてはおれん‼)


 家令は決断すると、スイを部屋の中に寝かせながら言った。


「少々お待ちください! すぐに町の薬師を連れてまいりますゆえ……!」


 それだけ言うと、家令は脱兎のごとく部屋を出て行った。その足音が聞こえなくなった頃、スイはむくっと起き上がった。


「……ごめんね。将軍を連れて来られたら困るから」


 今、キギが将軍との逢い引きをしている最中だ。そんなところに呼びに行かれたら、作戦がすべて台無しになってしまう。それだけは避けなければいけないのだ。


 屋敷の薬師が不在であることはあらかじめ調べていたので知っていた。だから、家令が町の薬師を呼びに行くのは必然だった。

 そして、彼がすぐに戻ってこられないように手は打ってある。仲間に頼んで、この近辺の養生所はすべて「急病人」で立て込んでいるか、薬師に不在にしてもらっているからだ。


(この間に、秘密を探る……!)


 でも、素直に部屋を出て行くなんて愚かな真似はしない。他の使用人に見られては台無しになるからだ。

 スイは上を見上げると、傍にあった机に上り、天井に手を伸ばした。触った部分が、ぱかっと開く。そこをするりと抜けて、スイは天井裏へと上がった。外した天井板を戻すと、忍び足で梁を伝っていく。


 あの時、小間使いが向かった先はこの辺りだったはずだ。見当をつけると、スイは天井板の隙間から下を覗いた。今自分がいるのは廊下の真上のようで、先ほどの小間使いが、ひとつの部屋の前に立っているのが見える。


(……ここね)


 スイはちょうど部屋の真上にあたる所に移動すると、天井板をゆっくりと外した。幸い、誰もいない。扉のすぐ外にいる小間使いに気付かれないよう、音を立てずに部屋の中へと降り立った。


 立ち上がり、スイは目を見張った。


「……これは……」


 部屋の中をぐるりと見渡してから、思わず声が漏れてしまった。


 秘密の部屋に隠されていたのは、妾ではなく、女人が使うような着物や装飾品だった。それもぱっと見ただけでも分かるような上等なものばかり。

 それらが部屋一面に大切に飾られ、まるで珂族の令嬢の衣裳部屋のようだった。


 普通に考えれば、別に隠すほどの物ではない。だが、チガヤはそれを厳重な警護で隠そうとしていた。


 ……人に無関心でいて、女人を目で追う。

 ……屋敷の中で目撃した、きらびやかな女人の姿。

 ……珂族の女人は暮らしていないはずの屋敷に、厳重に守られた衣裳部屋。


 それらが結びついて、スイの頭にある考えが浮かんだ。


「チガヤはもしかして……」


 そのようには見えないが、人は見かけによらないものだ。


 兎にも角にも、将軍が隠したがっていたのはこれ・・だ。早く頭領に伝え、この秘密を世に暴かねば。


 そうとなれば長居は無用だ。スイが再び天井裏に飛び移ろうとしたその時、外から話し声がしたと思いきや、突然扉がばんと開かれた。


 そこには、チガヤが立っていた。


 スイが部屋の中にいることにチガヤはひとつも表情を変えず、ゆっくりと部屋の中に入ってきた。後ろで小間使いが「何故、あの方がここに……?」と困惑した顔をしているのが見える。


「どうして貴女が我が家に? 呉服屋で待ち合わせの予定だったが」


 チガヤは怒ることもなく穏やかにそう訊ねたが、スイとしては、そっちの方が恐ろしかった。スイの心臓がバクバクと跳ねる。


(将軍が戻ってきた……! どうして? キギと会っていたんじゃないの⁉ どうしよう、どうしよう……⁉)


 将軍の言い方からすると、呉服屋で待っているはずのキギと、なぜかは分からないが、落ち合えていない様子だ。そうとくれば、スイの取るべき行動はひとつ。


 スイはにっこりと笑った。危機の時こそ上手に仮面を被るのだ。


「そうでしたわね。申し訳ありません、チガヤ様とお会いできるのが楽しみですっかり失念しておりましたわ」


 チガヤもフッと微笑んだので、スイは安堵した。が、それは早とちりだった。


「……よく私の名を知っていたな。それに屋敷も」


 ──疑われている。そう悟ったスイは、さらに微笑の仮面を被りなおした。


「チガヤ様は智将で有名な方ですもの。この都で知らぬ者はおりませんわ」


 それに対し、チガヤは何も言わない。ただじっと、スイを見つめている。その仮面の下を探るかのように。



 ◇◇◇



 奈美はご満悦だった。この数日、毎日ライカが甘味処に連れて行ってくれるのだ。舞耀に来た日に訪れた団子屋に再び行った後、違う甘味処を数店訪れた。

 それを毎日繰り返している。


 そんなわけで、今日も絶賛甘味処はしご中である。店先の長椅子に座りながら、奈美は汁粉をすする。


(あ~~……間違いなく太ってるわ、これ……)


 都の街並みをぼんやりと眺めながら、思う。思うが、食べる手は止まらない。甘い物が好きだから仕方ない。


 でも、こちらの世界に来てからずっと甘味どころではなく、しかも窟に帰ればまた甘味とは縁遠い生活になるのだ。今くらい思う存分食べていてもいいはずだ。


 奈美は隣のライカをちらっと見た。ライカは甘味は頼まず、茶だけを飲んでいる。視線に気付いたライカが、口を開く。


「何だ?」

「いや……毎日毎日、甘味処ばっかり連れて行ってくれるから何なのかなと思って。なに? 私を太らす計画でも企ててるの?」


 もちろん冗談で言っただけだ。こうして毎日甘味処のはしごをするのは、何か大事な仕事のためだというのは分かる。それが何かは分からないが。

 ライカはそれが冗談だと気付いていたが、まじめに答えた。


「……この前、テスに食い物を分けてやってただろ? そのおかげで、あいつが文句も言わずに仕事をしたんだ。その礼だと思えばいい。あいつは何か不満があると不平たらたらで面倒くさいからな」


 それを聞いて、奈美はきょとんとした。


(それって……あの、曲芸師の劇の後のこと?)


 確かにあの時、露店で買ってきた食べ物はすべてテスに与えた。テスが目を輝かせて喜んでいたのを覚えている。


「あはは、礼をされるほど大したことしてないわよ。ただ空きっ腹の弟がかわいそうで、ついあげただけ」


 奈美がカラカラと笑って言うと、ライカがふ、と微笑んだ。


「隊員の空きっ腹を察知して咄嗟に取った行動か。大した料理番だ。おまえもすっかりカンドル隊になくてはならん存在だな」

「……私が?」


 奈美は目を見開いて、ライカを見た。すっかりカンドル隊の一員になっているなんて、こんな所から早く逃げ出したいと思っていたあの頃の自分が聞いたらさぞ驚くだろう。


 だがそれ以上に、嬉しかった。この男に認められたのが。


(……顔がにやけちゃう)


 コホンと咳ばらいをすると、奈美は仕切りなおした。早くこの汁粉を食べ終えなければ。きっと今日も、次の店に行くのだろう。


 奈美の予想は正しく、ライカはそのつもりだった。


 というのも、チガヤ将軍を見かけた団子屋に再び赴いた時のことである。女将に尋ねたところ、将軍は甘味が大好物で、店の常連らしい。将軍が城に向かう前は私邸のすぐ近くにあるこの団子屋に、城から戻る際も他所の甘味処に食べに寄ることがあるというのは都では有名な話だそうだ。団子屋の女将は、このところは連日来店していて珍しいと言っていた。情報屋の話によると近頃の将軍は確かに激務だそうなので、辻褄は合う。


 そこで、ライカはこの舞耀で有名どころの甘味処を見回ることにした。その目的は将軍ではなく、団子屋で将軍とぶつかったというあの女だ。あの女が本当に将軍に近付こうと画策しているなら、将軍の向かいそうな場所で待ち伏せしている可能性が高いためだ。


 だから、喜んで甘味を食べてくれる奈美をあちこちの甘味処に連れまわしている。テスの件での礼をしたいというのも嘘ではないが、実を言うと、あの女を捕まえるための行動である。


(結局、曲芸師の宿はつかめなかったから、あの女を捕らえるしか方法がない……。しかし、相手はテスの尾行を撒くほどの者……)


 ライカは考え事をしつつも、目は人通りに注意深く走らせていた。


(舞耀の滞在予定期間はすでに半分過ぎている。そろそろあの女に接触したいところだが……)


 隣では、奈美が汁粉を食べ終えた様子だ。ライカは焦る気持ちを抑えて、次の甘味処へ移ろうと腰を上げたその時だった。見覚えのある年寄りが目の前を通り過ぎるのが見えた。


(あれは……確か将軍の)


 団子屋で将軍を見かけた時に傍にいた老人だ。将軍の家令だろう。彼はやけに困り顔で、どこに向かうわけでもなくウロウロしている。


 ライカが何とはなしに見ていると、次の瞬間、バチッと目が合った。その家令もライカの姿に見覚えがあったのか、サッと隣に座る奈美の姿を見つけると、鬼気迫る顔でこちらに駆け寄ってきた。

 そして、ぽかんと口を開ける奈美に、一息にまくし立てた。


「先日こちらでお会いした薬師様でございますね? 不躾で申し訳ございませんが、診て頂きたいお方がいるのです! 今すぐ我が主の屋敷まで来ては頂けないでしょうか⁉ 無論、謝礼は幾らでもお支払い致します‼」


 よほど切羽詰まっているのか、ぐいぐいと奈美に近付いてきたので、ライカが間に入ったくらいだ。


「え、ええ……?」


 状況を呑み込めない奈美が戸惑っていると、ライカが代わりに口を開いた。


「何故、俺たちに頼む? 薬師は他にいくらでもいるだろう」

「それが……今しがたこの辺りの薬房はすべて駆け込んだのですが、どこも不在か、急患対応中で捉まらず……。屋敷抱えの薬師もちょうど不在にしておりまして……。しかし、あの方のあの苦しみよう……すぐに薬師様に来て頂かなければ……!」


 顔を青くして喋る家令を見て、奈美がライカの背中から顔を出した。


「そんなに苦しがってるの?」

「はい……! 息をするのもお辛そうで──」。

「どんな人なの? 何か病気を持ってる人?」

「持病の癪だとおっしゃっていました。先日も貴方様にこの店で診ていただいた、あの女人でございます」


 奈美が目をぱちくりとさせていると、横からライカがきっぱりと言った。


「では、案内してくれ。うちの薬師様は診てくださるそうだ」

「……は?」


 奈美が怪訝な顔でライカを睨むと、家令がぱあっと顔を輝かせて喜んだ。


「診て頂けますか! 感謝致します‼」


 早速、家令は二人を引きつれ、屋敷へと案内する。彼の後ろを付いて行きながら、奈美はライカにこそっと抗議する。


「ちょ、ちょっと、どういうつもりよ?」

「おまえのことだ、どうせ放っておけないんだろ?」

「まあ、そうなんだけど……」


 ライカの一言に、奈美はうぐと口ごもった。確かに、団子屋で会ったあの女性のことは、あれからどうなったのだろうと少し気になってはいた。きちんと薬師に診てもらいたいところだが、他に薬師がつかまらないのなら仕方ない。差し出がましいが、少し様子を見させてもらおう。

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