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並行世界(パラレルワールド)は君のいる世界  作者: 方丈 治
第二章

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42/67

夜が明けて

 屋敷の離れでヨミとマナホの尋問が滞りなく行われた後、ライカは主人の待つ部屋へと赴いた。


「……私です。二人の尋問の結果をお伝えします。入室してもよろしいでしょうか?」


部屋の中には、オウキと奈美、そしてイルグカが座っていた。イルグカは襲撃事件の主犯格を捕らえたという知らせを受け、急ぎこの保養地までやってきたのだった。


「入ってくれ」


そう答えたイルグカを、奈美は驚いた顔で見た。


「でも、オウキさまが――」

「よいのだ、ナミ。ライカ殿は忠義に厚く、信頼できる者だとわかっておる。そなたも申していたではないか。のう?」


そう言って、オウキがニヤリと笑いかけた。


「あ……」


この温泉へ向かう途中、馬車の中の会話を奈美は思い出した。


──なかなかカッコイイところもあるもんですよ、私の知ってる男たちは。


 確かにそんなことを言った。言ったが。


(カンドルのみんなのことを言ったのであって、別にあの人のことだけを言った訳じゃ……)


 奈美は心の中でぶつくさ言ったが、それは誤魔化しに過ぎないことにオウキはもちろん気付いていた。


「何より、あの者は私に一片の関心もないしな。誰かさんのことで頭が一杯のようだ」

「……は?」


奈美がきょとんとしていると、ライカが扉を開けて入ってきた。イルグカとオウキにひざまずいて礼を尽くすライカを見て、思わず奈美の口からため息が漏れる。


(はー……きれいな礼だわこりゃ。私の礼儀作法見て、そりゃ呆れるワケだわ)


ライカはイルグカから座るよう促されると、イルグカから少し離れた正面に座った。


「それにしても、いまだ信じられぬ。まことにマナホが内通者なのか?」


イルグカの顔から察するに、マナホだけは内通者でないと思っていただけにまだ戸惑いが隠せない、といった様子だ。


「……お嬢様からの文でまさにその疑念をうかがえたことで、下手人を捕捉する助けとなりました。感謝申し上げます」

「……いや、私はただ誰かに苦しい胸の内を明かしたかっただけかもしれぬ……。だが、そのお陰で父上や母上をはじめ、家の者皆の不安を取り除けたのだな。まこと礼を言うぞ、ライカ殿。ナミもな」


オウキが微笑みながら言った。マナホが捕らえられた直後は見ている方が辛くなるほどの取り乱し様だったが、今はもう落ち着きを取り戻している。やはり強い人だ、と奈美は思った。


「……というか、え? オウキさま、うちの隊長と手紙のやり取りしてたんですか?? 初耳なんですけど……」

「すまぬな、ナミ。ライカ殿に口止めされていたのだ。そのこと含め、今回の『作戦』に関わることは極力、そなたには報せぬようにと」


それを聞いて、奈美は少なからずショックを受けた。頼りにならないのは自分でも分かっているが、オウキを守りたいと思う気持ちは本物だったので、なおさらだ。


(……つまり、それほど信用されてないってことですか。もしくは、アテにされてないか)


奈美がじとっと睨んでくるのに気づいたライカが、その心を読んだのか、素っ気なく言った。


「仕方ないだろう。おまえはすぐ顔に出る。余計なこともしそうだしな。実際に勝手な行動をしただろ」


ライカがオウキの影武者のことを言っているのは明白だ。


「なら、止めればいいじゃない! どうりであっさり認めたと思った……!」

「下手に止めれば、何を仕出かすかわかったものじゃない」

「あのね……!!」


奈美がカッとなった途端、オウキが間に入ってきた。


「まあ落ち着け」

「あ……」


(偉い人の前でケンカしてる場合じゃなかった……!)


奈美は急に恥ずかしさが込み上げてきて、居ずまいを正した。


オウキは奈美の方に顔を寄せると、父とライカに聞こえぬよう、奈美の耳元で囁く。


「気付かぬか? ライカ殿がそなたに何も報せなかった訳を。そなたを出来る限り危険から遠ざけるために決まっておろう。惚れたおなごを守りたいと思うのは当然のこと。な?」


オウキの言葉に、奈美は目をぱちくりとさせた。


( ライカ(このひと)が私を危険から遠ざけたいのは、自分自身を守るためでもあるしわかるわよ。でも、『惚れたおなご』? 誰? ……え、私?)


惚れてるならば、普通は首に剣をあててきたりしないし、凍てつくような視線も送ってこないはず。

そこで、奈美は断言した。


「ないない。ありません絶対に。ないです」


頑なな奈美の表情を見て、オウキは呆れたようにため息をついた。


「そなたも頑固だな。男嫌いの私にでもわかるというに」


そのとき、イルグカが焦れったそうに話を元に戻した。


「……して、マナホは何故、我々を裏切るような真似をしたのだろうか?」


それはオウキにとっても、最も知りたいことだった。


「……これを預かって参りました。私の口から説明するより真実の目が覗けるかと」


そう言って、ライカは持っていた(ふみ)をオウキに差し出した。

オウキは受け取った文をしばらく見つめていたが、やがて意を決したように文を開き、読み始めた。

そこに何が書かれていたか、奈美には分からない。だがオウキの顔色を見れば、何となく察しはつく。

文を横に置いたオウキは突然、立ち上がった。


「すまぬ。少し席を外す」


その反応を予想していたのか、少しも驚くことなくライカが口を開いた。


「罪人の見張りをしている隊員には、あらかじめお嬢様がおいでになることを伝えてあります故、心ゆくまでお話しになって下さい」

「……かたじけない」


オウキはほんの少し顔を歪ませてそう言うと、奈美たちを置いて一人部屋を出ていった。


(……オウキさま、今にも泣き出しそうな顔してたけど大丈夫かな……)


奈美がそう思っていると、横でイルグカが床に置かれた文を取り上げた。読み進めるにつれ、苦々しい顔になっていく。


「そうであったか……。長い間、我々がマナホを苦しめていたのだな……」


イルグカは重々しく息をつくと、顔を上げた。


「ライカ殿は、マナホが怪しいと気付いていたのか?」

「……ええ、多少は。二度目の襲撃のあと、イルグカ様は内通者の疑いある者を消すため、屋敷を護る私兵の数も減らされました。これは敵方には絶好の機会のはず。しかし、敵は襲ってはきませんでした。そこで思ったのです。内通者は裏でカンドル隊(われわれ)が関わっていることを知っているのではないか、と。つまり、内通者はまだ屋敷の中にいる……しかも内部事情に詳しい者ではないかと思ったのです。そう考えている時に、お嬢様からの文で確信を得ました」

「……なるほど。それ故、私と娘、マナホにしかまことの保養地の行き先を伝えず、他の者には別の保養地を伝えていたのか」


内通者が偽の情報を掴まされていたのなら、この温泉に敵は現れていなかったはず。だが、敵は現れた。それはつまり、内通者が真の保養地を知る三人の中にいる、ということだ。

奈美はもちろん真の保養地を知らされていなかったが、イルグカたちの話を聞いて、むしろ知らされなくて良かったと安堵した。


(……もし私が本当の行き先を知ってたら、他の誰かにうっかり喋っちゃってたかも……)


「ところで、罪人の兄妹は捕庁に突き出せばよろしいでしょうか?」


ライカがそう訊ねると、イルグカが決まり悪そうに口を開いた。


「……それは少し待ってはもらえぬか。いや、無論解っておる……例え罪人が身内の者だとしても、珂族に仇なす者を匿えば私が裁かれることは。だが、娘の判断を待ってはくれぬか」

「……はて、いま何かおっしゃいましたか」


ライカは聞かなかったフリをしているのだ。案外人間らしいところもあるんじゃない、と奈美が思っていると、ぎょっとした。

イルグカがライカに深々と頭を下げているのだ。


「かたじけない」


どうか頭を上げてください、と奈美は言いそうになったが、ライカは何も言わず、じっと見ている。


(……そっか。イルグカさまの想いを受け止めているからこそ――なんだ)


奈美は目の前の二人を見ながら、ふと思った。


(オウキさま、今頃マナホさんと話してるのかな……)


◇◇◇


部屋で一人、マナホは壁を見つめて座っていた。


既に真実はすべて、カンドル隊の隊長に話した。オウキにも直接それをしたかったが、もう彼女は自分に会ってはくれないだろう。当然だ。

だから、恐れ多くも文をしたためた。伝えたいことは全部、それに詰め込んだ。

あとは処分が下されるのを待ち、それを受け入れるだけだ。


「マナホ」


突然懐かしい声がして、マナホはハッと扉の方を振り返る。


「私だ。入ってよいか?」


もう二度と会えないと思っていただけに、マナホは驚きと嬉しさ、そして申し訳ない気持ちで心が乱れる。

オウキが扉の前に立っていたカンドル隊の隊員と少し言葉を交わすと、扉を開けて入ってきた。

いつもと変わらぬ凛としたその顔を見て、マナホは胸が締め付けられた。周りにはなんと気丈な娘だと思われるだろうが、マナホから見れば、その裏にあるのは憔悴しきった顔だ。だが、その原因が自分なのだから、オウキの心配をする権利はどこにもない。


オウキがマナホの正面に座ると、ゆっくりと口を開いた。


「先にそなたの兄に話を聞いてきた。……そなたの文の通りだった。私は何も知らぬ愚か者だったのだな――」

「なりません!」


最後にオウキが口を開きかけた時、マナホが何かを察してすかさず止めた。


「尊い身であられる珂族のお嬢様が、平民……何より罪人相手に謝罪の言葉を口にされていいはずがありません」


マナホの力強い眼差しを受けて、オウキは悲しそうな目でマナホをじっと見た。


「……私は謝ることさえ許されぬのか」

「どうして罪人に謝る必要がありましょう。詫びなければいけないのはこちらの方だけなのですから。お嬢様や旦那様にお許しいただけるのであれば、兄ヨミと私は自害し、お嬢様方を脅かした罪を償います」


そして、マナホは深々と頭を下げた。


「……いえ。自害して赦しを請おうなどという甘い考えは持っておりません。どうか捕庁に突き出し、厳罰をお与えください」


マナホの訴えに、オウキは何も言わない。やはり悲しそうな目で見ているだけだ。


「……ひとつ、教えてくれ」


突然呟かれたその言葉に、マナホは閉じていた目を開く。


「ナミが私の代わりに温泉に入ることを、そなたは予め知っていたな。それをそなたの兄に報せる時間は十分にあったはず。だのに、そうしなかったのは何故だ?」


マナホは頭を下げたままで答えないので、オウキが代わりに答えた。


「報せなければ、私の人相を知らぬそなたの兄は、ナミが私であると思い違いして事を成すはずだったからだ。つまり、そなたは防ぎたかったのだ……私がそなたの兄の手にかかるのを」


マナホはいまだ顔を上げない。しかし、その肩は微かに震えている。


(思えば、この時から分かっていたのかもしれない……お嬢様を斬れないことは)


熱い雫がマナホの頬を伝って、鼻先からポタポタと落ちていく。


「もうそなたに謝りはしない」


オウキがマナホを包み込むように、優しく抱いた。


「だが、そなたたち一家の無念を無駄にせぬ為にも、私のやり方で落とし前をつけさせておくれ。……いいな?」


◇◇◇


奈美はカンドルの窟に帰るため、馬車の荷台に乗っていた。揺れる荷台の上で、馬に乗って前を行く隊員たちをぼうっと眺める。

無論、女物の衣裳はすでに脱ぎ捨て、元の「男の奈美」に戻っているわけだが。


護衛任務も終わり、カンドルの窟に戻ろうという時、最後の最後までオウキに「本気で私の小間使いにならぬか」と引き留められた。

そこまで言われるのはとても嬉しかったが、奈美も戻らない訳にはいかなかった。腹を空かせているであろう隊員(なかま)たちに食事を作ってやらなければならなかったし、それにテムルのこともある。ライカの傍を離れる訳にはいかない。


そうして別れを惜しんで、只今、イルグカの屋敷からの帰路である。


ライカとダンチョウは今回の任務の始末があるらしく都に残ったので、今この列に二人はいない。任務が終わり、隊長不在もあってか、隊員たちは各々気楽に喋っている。

奈美の前には、馬車を操るセトと、その横に獣使いのイスビが座っている。奈美は二人が話しているのを何とはなしに聞いていた。


「イスビ、おまえ、温泉から最も近くの守備だったよな? 姫様の湯浴み、うっかり覗いちゃったりしたのかよ!?」


からかい半分でセトが聞くと、イスビはだるそうに答えた。


「そんなことしてたら今頃俺ぁここにゃいねーよ、ばーか。隊長の厳しーいお達しがあったろ」

「でも、敵一人の侵入を許しそうになったんだろ? そいつを捕まえた時、温泉の中に入ったって聞いたぜ」

「俺じゃなくて、オオカミな。俺はその時、離れたとこにいたの」

「なんでぇ、つまんねぇな」


その会話を聞いて、奈美は心の中で呟いた。


(……はい。そのオオカミに会ったのは私です)


今思えば、危なかった。温泉の中に入ってきたのがオオカミではなくてイスビだったら、裸同然のあの姿では、完全に女だとバレていた。


(私もこの会話に入りたいけど……私が身代わりになって温泉に入っていたことは他言無用だってライカ(あのひと)に念押しされたしね)


秘密を守るには黙るに限る。奈美が喋りたいのを我慢していると、セトがくるりとこちらの方に振り向いた。


「しっかし、おまえも災難だったよなー」

「え?」

「女の格好させられて、ワガママな姫様の側付きさせられてたんだろ? いくらおまえが女っぽく見えるからってそりゃナイよなぁ」


(……それは知ってるのね)


それはそうだ。奈美がこの任務についていくことはカンドルの皆が知っている。ただの料理番がついていくのは変なので、皆を納得させる相応の理由が必要だったのだ。

男嫌いの姫の側付きをするのに、カンドルで最も女っぽく見える奈美が女装する必要があった──と言えば、満点の理由になる。


「ま、まーな」

「で、姫様に男だってバレたりしなかったのかよ?」


(女だとはバレました……もとい、バラしましたけどね……!)

とは口が裂けても言えない。奈美が答える前に、セトが口を開いた。


「ま、最後まで側付き出来たってことはうまく隠し通せたってことだよな! さすがナミ! 初対面の人間に十中八九、女だと間違われるだけあるぜ!」

「はは……」


奈美が口の端をひくつかせて笑っていると、黙って聞いていたイスビが言った。


「……そーいや、ナミ。姫様の温泉に、おまえも一緒に付き添ってたんだよな?」

「え? う、うん。俺は脱衣所の建物の中で待ってたけど……」

「そう……だよな。やっぱり俺の勘違いだよな……」

「???」


イスビが難しい顔で何やらつぶやいているので、奈美は首を傾げた。セトの方に目配せしたが、セトは首を横に振った。彼にもわからないらしい。

と思いきや、セトははたとあることに気が付いた。ニヤニヤと笑いながら、奈美の方を振り返る。


「しかし、脱衣所には居たんだよな? 向こうにゃ男だとバレてなかったんなら、着替えなんかも手伝わされてたんじゃねえのか? 姫様の尊~~いお姿は――」

「見てるわけないだろ!」


奈美はセトを思いっきり睨みつける。これだから男という生き物は。


「よう、お疲れさん」


その時、横からグクイラが馬を寄せてきた。グクイラにも任務が始まってから会っていなかったので、何だか懐かしい顔だ。


「グクイラさんこそ」

「今しがた、他の奴に聞いたんだが、知ってるか? オウキお嬢さんのことなんだが」


敵の首謀者を捕らえてからのことは、奈美はイルグカの屋敷の者やカンドル隊の仲間から聞いていた。

マナホとその兄ヨミは捕庁という、現代日本で言えば警察のような所へ連れていかれたらしい。二人は処分を下されるまで、牢の中で過ごすようだ。そして、オウキはそんな二人に会いに、毎日捕庁に通っているという。

彼女たちのことは気になっていたので、奈美は食い込み気味に訊ねた。


「オウキさまの?」

「どうやら、お嬢さんが上奏したらしいぞ」

「……ジョウソウって?」

「王に意見する文書を出すことだよ。今の景王は人ができてるけど、王様に意見するってのは相当覚悟がいることだろうよ。いくら珂族様でもな」


この景ノ国に暮らす民は、基本的に身分問わず上奏を行うことができる仕組みになっている。民に広く政に参加してもらうという名目でつくられた制度だが、実際には王城から目をつけられては堪らないと、上奏を行う民は滅多にいないのが実情だ。


「上奏の内容は?」

「詳しいことは俺も知らんが……捕庁での取調べに関することだそうだ。あそこじゃ身分の低い者への不当な扱いは、ま、横行してるからな」


それを聞いて、奈美はピンときた。オウキが別れ際に、ニヤリと笑ってこう言っていたからだ。


『マナホとその家族の件は、このまま風化させはしない。まあ、見ていろ。すぐに分かる』


(今回の襲撃事件のそもそもの原因は、マナホさんのお兄さんへの不当な取り調べだった。オウキさまはそれを無くすつもりなんだ……!)


――マナホのために。ひいては、国の平民のために。


◇◇◇


「――この者か」


山中深く、ダンチョウの案内を受けたライカは、あるものを見下ろした。黒装束を纏った男の死体だ。

カンドル隊はヨミら襲撃犯の一味が温泉を襲ってきた際、一味の一人が逃げ出すのを確認していた。

そのような場合の対応はあらかじめ、敢えて討たずに泳がせる、と隊の中で決めておいた。この事件の真相に近づけるかもしれないからだ。

そのため数名の隊員に尾行させていたのだが、ライカのもとに届いたのは「逃亡者死亡」の報告だった。


「……死後硬直が始まっているな。闇に乗じて殺されたか」


ライカは死体を調べながら呟いた。うつ伏せに倒れた死体の背中には、大きな袈裟斬(けさぎ)りの跡。


(敵ながら、こいつらは中々の手練れだった……。そんな相手にこんな傷を与えられるものか? 逃亡で疲弊していたのもあるかもしれないが……)


ライカが何を考えているのか解っているのか、ダンチョウが補足した。


「前王一派の重鎮らの周辺を張らせておいた隊員たちからも特に目立った報告はありませぬ。これで真相は闇の中ですな……あれば、の話ですが」

「いや、ある。確証はないが」


そこまで言って、ライカは思い起こした。あの温泉での出来事を。ヨミが突如として現れたのは、まさにあの神出鬼没のシスイを彷彿させる。

この事件は本当に、ヨミという一人の男の怨みによって始まったものなのだろうか。ライカには何となく、そうは思えなかった。


だが、すべての真実は、目の前の死体で途切れてしまった――。

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