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並行世界(パラレルワールド)は君のいる世界  作者: 方丈 治
第一章

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憩いのひととき

 

「あ~~~~~~」


 あまりの気持ちよさに、奈美は風呂釜の中から声を上げた。久しぶりの風呂だからというのもあるが、かまどのついた、一人しか入れない大きさの風呂が、何とも言えず、たまらないのだ。


「五右衛門風呂に入るのって初めてだけど、なに、このじんわり温まる感じ……すっごくハマるわー」


 奈美が腕と顔を風呂桶の縁に載せて至福のひとときを味わっていると、風呂釜のたき口を覗き込んでいた年配の女が顔を上げた。


「へえ、ナミさんのお国じゃあゴエモン風呂ってんだねぇ。あたしらにとっちゃ、何気ないものだけど。気に入ってくれたのなら良かったよ」


 あははと豪快に笑うこの女は、シイラシがよこした女中だ。名はライラという。「いかにも世話好きそうなおばさん」はどの世界にもいるようだ。シイラシによほど信頼されているのか、シイラシから奈美の事情を少し聞いただけで合点承知とばかりに風呂の用意を始めたのだった。

 奈美は湯気が立ち込めた狭い風呂場の中をぼんやりと眺めながらつぶやいた。


「あぁ、毎日このお風呂に入りに来たい……というか、もうずっとここに暮らしたい……」

「あはは。妓楼で暮らしたいだなんて、可笑しなこと言うおなごもいたもんだねぇ」

「笑いごとじゃないのよ、ライラさん! ここにいれば、気兼ねなく毎日お風呂に入れるし、男のフリもしなくていいし」

「あらあら、窟暮らしも大変なんだねぇ……」


 窟では女であることを隠して暮らさなければならないので気が抜けなかったが、この狭い風呂場の中なら少しくらい愚痴ったってバチは当たらないだろう。


「それにしても、カンドル隊の男たちはお風呂に入らないのかしら!?  お風呂なら窟にもあるんだけど、ほとんど使ってないみたいだったし……窟全体も男臭いって言うの? なんだか臭うし……」

「あはは! カンドル隊は男所帯だから男臭いのは仕方がないよ。でも、カンドルの男たちだって、ちゃーんと湯浴みしているよ。窟の風呂場を使ってないのは、みーんな、うちで湯浴みしていくからだね」

「へっ」


 ライラの言葉を聞いて、奈美はどきっとして顔を上げた。ライラがカラカラと笑って言う。


「カンドルの男たちは血の気が多いだけあって、うちの娼妓を買いによく来てくれるからねぇ。暇な時は毎日通ってくれる人もいるから、東菊は第二の棲み処みたいなもんかね」


 分かっている。女の奈美だって、男がそういう・・・・生き物だということは。女とは仕組みが違うのだ。だがしかし、普段しゃべったり笑い合ったりしている身近な間柄である身としては、そういう情報を聞いて全く引かないと言えば嘘になる。


「まったくもう……! アイツらはぁ~~……」


 奈美はムカムカとしてくるのを感じた。他の隊員ならまだ許せるのだが、ライカまでもが妓楼通いの常連だと考えると、何故だか頭に血が上る。

 奈美の考えていることを知ってか知らずか、ライラが言い忘れたように付け加えた。


「ああ、でも、ライカさまだけは違うよ。景趣には滅多に来ないし、たまに何かの用事で来たとしても娼妓と遊ばずにすぐにお帰りになるからねぇ。もしかしてこれまでに一度も娼妓と遊んだことがないんじゃないかね」


 それだけ言うと、ライラは鼻歌を歌いながら、風呂釜のたき口に注意を戻す。

 奈美はというと、ライラの言葉にきょとんとしていた──ホッとしたことにも、「やっぱりね」という気持ちにも気付くことなく。


◇◇◇


 官吏に案内された部屋で待っていたダンチョウは、扉が開くのを見て、席を立った。中に入ってきたのは、自分より一回り以上も齢若い男──主であるライカだった。


「ライカどの」


 声を掛けられて、自分の右腕がいることに気付いたライカは、ダンチョウの方へと歩み寄る。


「王は何と……?」


 ダンチョウにそう訊ねられたライカは、さも不愉快そうに答えた。


「前回呼ばれたときと同じだ。カンドル隊に、直属の部隊になれ、だと」

「やはりそうでしたか……」


 ダンチョウは何度かうなずくと、ライカに言った。


「二度目ということは、王も本気のようですな。……して、ライカどのは何とお答えに?」

「一応、返答を待ってくれと言っておいた。ダンチョウ、おまえがそう言えと言ったんだろ。俺としては、その場で断ってやりたかったがな。過去はすべて水に流して、再び共にこの国を善く治めていこうなどと、何を今さらふざけたことを……」


 憎々しげに吐き捨てるライカに、ダンチョウはなだめるように言った。


「まあそうおっしゃらないでください、ライカどの。一考して損はない……いや、一考するに値する件ですからな。カンドル隊と隊員の将来を考えるならば」


 むすっとした顔をしていたライカも、ダンチョウのその言葉にピクリと反応した。ダンチョウが感慨深い面持ちでつぶやく。


「気楽な荒くれ集団をやめるには、ここらが潮時なのかもしれませぬなあ……」

「…………」


 ライカも部屋の窓から覗く景の都の町並を見ながら、何やら考え込んでいる。やがて溜息をひとつつくと、部屋の扉の方に歩き出した。


「とりあえず、城を出るぞ。こんな所、長居は無用だ。……そういえば、ナミの件はどうなった?」


 後ろについて歩くダンチョウは、にやっと笑って答える。


「無事、シイラシどのに任せてきました。ナミどのは今頃、手厚くもてなされていることでしょうな」


 おまえほどの奴が珍しく見当違いなことを言っているな──とでも言いたげに、ライカは片眉を上げた。


「シイラシは外部の者にはつれないと聞いていたが。ナミのことを引き受けたのも、どうせ渋々だったんじゃないか?」

「私が話をつけたときは、そのような様子でしたな。ですが、ナミどのは不思議なおなご……シイラシどのを変えたとしてもおかしくはないでしょう」

(ライカどの、あなたを変え始めているのと同じように──)


◇◇◇


 長風呂から上がった奈美は、奥の方の目立たない部屋に通されていた。そこは衣裳部屋で、娼妓たちの鮮やかな衣裳が保管されていた。多くの衣裳を目にした奈美は、目を輝かせながらため息を漏らした。


「わあ~~~~! エキゾチックで可愛い服ばっかり!」


 そんな奈美に、ライラが快活に笑って告げた。


「どれでも好きに持っていっていいとシイラシさまから言われているからね。ゆっくり見て選んだらいいさ。ああ、そっちの箱には装身具が入ってるよ」

「本当!? シイラシさんったら太っ腹~!」


 奈美がはしゃぎながら衣裳を物色している様子を、テスは部屋の片隅から呆れた様子で見ていた。


「女って、衣裳がどうとか、飾りがどうとか、そーいうのほんっとに好きっすよねぇ……」


 退屈そうにあくびをするテスに、奈美が冷たい目を向けて言った。


「でも、ランカラさんだって、そーいうのは嫌いじゃないと思うケド。気になる()なら、アクセサリーのひとつでもプレゼントしてみたら?」

「出た、姉貴の異国語! それ、どういう意味っすか──って、」


 首を傾げたテスだったが、急に顔が真っ赤になった。


「なんでナミの姉貴がランカラのこと、知ってるんすか!!?」


 慌てるテスを、奈美はため息をつきながら答えた。


「あのねぇ……あんたのあの態度で分からないとでも? ランカラっていう娘のことが好きなんでしょ。で、まだ想いを伝えきれてないとみた」

「うっ……」

「図星ね。……テス、あんたはまだまだ若いんだから、行動あるのみよ。時間は巻き戻せないんだからね。──あっ、この服ステキ!」


 そのとき、隣の部屋に行っていたライラが、扉から顔を覗かせた。


「ナミさんナミさん。化粧道具も見るかい? 衣裳が決まったんなら、こっちの部屋においでよ。着付けついでに化粧もしてあげるよ」

「はーーい!」


 ライラの一声でテスのことなどすっかり忘れて、奈美は足取り軽やかに隣の部屋に入っていった。テスを一人、衣裳部屋に取り残して。


◇◇◇


 確かに、なれなれしく近づくくせに、いまだ自分の想いを伝えていないのは悪いと思う。でも、誰もが簡単に行動に移せるわけではないのだ。

 テスは衣裳部屋の窓枠にもたれて、つぶやいた。


「ナミの姉貴はああ言うけど……オレは他のやつとは違う・・から……できるワケないっすよ」

「何ができないんだ?」


 突然、背後から降ってきた声に、テスはびくっとした。この声は──


「あッ、兄貴ッ!」


 テスは勢いよく立ち上がると、後ろにダンチョウを連れ立つライカに向かって両手をぶんぶんと振った。


「べ、別に何もないっすよ!!」


 テスが何かを隠していることは誰の目にも一目瞭然だが、ライカは眉をひそめただけだった。


「……まあ、いい。で、ナミはどこだ。用事はすべて済んだのか?」

「あ、いや、実は今……」


 テスが慌てて答えようとしたちょうどその時、隣の部屋の扉ががらっと開いた。


「じゃーん! どうよテス! けっこう似合うでしょ?」


 テスもダンチョウも──そしてライカも──、扉の向こうに現れたあでやかな女を見て息を呑んだ。絹の衣裳を身にまとい、艶のある紅い髪はきれいに結い上げられ、顔に薄化粧を施したその女の美しさは、まるで上級娼婦のように輝いていた。


「私だってねえ、あんな小汚い男物の服なんかじゃなかったら、ここの女の子たちにも負けないでしょお?」


 その女──奈美は、フフンと得意げに笑った。その後ろで、紅筆を持ったライラが自分の腕をパンと叩いた。


「何百人もの娼妓たちに化粧をしてきたこの腕に間違いはないよっ。もちろん、ナミさんの器量がいいのもあるけどね!」

「よしてよ、ライラさんったら! そんな本当っぽいこと言うの!」


 照れながら頭を掻く奈美は、そこでようやくテスの後ろのライカとダンチョウに気付いたようだ。


「……あれ。なに、いたの」

「…………。……おまえな……」


 呆れた様子で溜息をついたライカの傍で、ダンチョウが思わず感嘆する。


「これは見違えましたなぁ……。これほどのおなごがすぐ近くにいたとは」

「ナミの姉貴、すげーっす! 妓楼で一番の娼妓みたいっすよ、ホント!」


 奈美の姿を上から下までじろじろ見ながら、テスも何やら興奮した様子だ。娼妓にはなりたくないが、奈美としては、褒められてもちろん悪い気はしない。


「うふふっ、ありがと」

「今すぐ男物の服に着替えろ」


 唐突な一声で、気分が一気に冷めてしまった。奈美はライカをじろりと睨んだが、努めて穏やかにお願いをした。


「せっかく着たんだもの。もう少しこのままでいてもいいでしょ?」

「駄目だ。次の予定がある」

「……じゃあ、この服は持って帰るわ。シイラシさんが持ってっていいって──」

「駄目だ。他の隊員に見つかってみろ、女であることを白状しているようなもんだぞ。顔も頭も元に戻せ」


 ライカの有無を言わせぬ態度には予想がついていたが、奈美は半ばキレ気味に叫んだ。


「あーもー分かったわよ! いつものように薄汚い恰好してればいいんでしょ!!」


 奈美がバンと扉を閉めて向こうの部屋に引っ込んだのを見て、テスがおずおずと口を開いた。


「ライカの兄貴、少しくらいいいんじゃあ……」

「つけあがられては困るからな」


 ライカはフンと鼻を鳴らした。そう、もうこれ以上、意識するわけにはいけない。彼女をつけあがらせればつけあがらせた分だけ、彼女の存在が自分の中にみ込んでいくのだ──乾いた土に雨がみこむように。そのためにも、美しい女人の姿をされていては困るのだ。


「しかし、勿体ない。勿体ないですなあ……あれほどの美貌を隠さないといけないとは。あのような娼妓がいれば、毎日妓楼に通うでしょうになあ」


 はっはっはと笑うダンチョウに、ライカとテスは呆れた顔でつぶやく。


「ダンチョウ、おまえな……」

「……ダンチョウさん……」


 そのとき、ライカたちの部屋に一人の女が入って来た。東菊の女主人、シイラシだ。


「お待たせしてごめんなさいね。お客の対応が長引いてしまって」


 シイラシがライカにひざまずいて礼を尽くすと、立ち上がった。


「ライカさんのお望みの通り、ナミさんのことは東菊うちでできる限りのお世話をさせてもらいます。それは今日一日だけ、という意味ではなく、私の目の黒いうちはいつまでも──ですわ」


 ライカがダンチョウの方をちらっと見ると、ダンチョウが「私の言った通りでしょう」と言わんばかりの笑みを浮かべた。それからシイラシに視線を戻すと、目で礼をした。


「恩に着る。こちらも東菊にはできる限り迷惑のかからぬようにする。おまえも忙しい身だろうからな」

「あら、ナミさんなら本当にいつ来ていただいても結構ですわ。ナミさんったら、興味深いんですもの」


 くすっと笑いさえしたシイラシを見て、今度ばかりはライカも驚いた顔をした。


「興味深い……?」

「ええ。強さ、勇気、機知、優しさ……あの小さな躰の中には多くのものが備わっているようです。私、あのような女人に会うのは初めてですわ」


 まあ、異世界からやって来た人間だからな──とは言えないが、ライカは心の中でニヤリと笑った。だが、不思議だ。何がシイラシにそう思わせたのだろうか。

 シイラシはライカの疑問を感じたのか、事の一部始終を話し始めた──。


◇◇◇


 東菊の玄関先は、今や黄色い声で賑わっていた。カンドル隊の隊長が珍しく来店したと聞きつけた娼妓たちがライカを一目見ようと、集まっていたのだ。

 奈美がいつもの男の衣裳に着替え、ライラが揃えてくれた必要物品を入れた袋を背負い、いざ出発しようと玄関に出た時だった。


「ライカさまがおいでよっっ」


 その一声で、娼妓の群れがライカ一行を取り囲んだ。


「ライカさまっ、せっかくいらしたのに、もうお帰りになるのですか!?」

「ぜひ私と遊んでいってくださいな! お代は結構ですから……!」

「いえ、私と!」「私の方が……」「私よ!」


 娼妓たちに腕を引っ張られ、体のあちこちを触られ、ライカはいかにもうんざりといった表情だ。娼妓をまるで相手にせず、何とか東菊を脱出しようと前へ進もうとしている。

 とばっちりを受けている彼の部下たちだが、大勢の娼妓に囲まれて顔が緩みっぱなしのダンチョウに、顔を真っ赤にして卒倒寸前のテスと、まんざらでもない様子だ。

 もみくちゃにされながら、奈美はこの状況を見て信じられないという思いでいっぱいだった。


(なになに、なんでよ!? どうして、こんな男ライカがモテモテなわけ!?)


 この世界では、自分の価値観とおおいに隔たりがあるに違いない。ライカたちに何とかついていきながら、奈美はそう思った。

 そのとき、袖が遠慮がちに引っ張られるのを感じて、奈美は後ろを振り返った。可憐な女がせつない瞳でこちらを見つめている。その顔を見て、奈美は「あっ」とつぶやいた。


「あ、あの……さきほどは、どうもありがとうございました。ぜひ、またいらしてください」


 緊張しながらも、フジドケが懸命に礼を言った。それから、頬を赤く染めて付け加える。


「その際は、あの……私などでよければ、その、お、お相手を……」

(お相手?)


 奈美は首を傾げた。お相手とは、喋り相手にでもなってくれるのだろうか。そんなことを考えていると、横から他の娼妓たちが間に割って入ってきた。


「まったく、この子ったら抜け目ないんだから! いま、私が声を掛けようとしてたのに!」

「そうよそうよ! 普段は地味~なのに、ちゃっかりしてるんだから」

「え? 私に? どうして?」


 奈美はびっくりして、思わず訊ねた。今日初めて来たばかりの自分が、見知らぬ娼妓たちに声を掛けられる理由なんて全く思い当たらない。

 きゃっきゃっと黄色い声を上げて、娼妓たちが答える。


「いやだわ、旦那さま! 身を挺して私たち娼妓を守ってくれたじゃないですか! フジドケのお客のことは、もうここの娼妓たちは皆知ってますよ」

「私、そのとき見てましたよ! 並の男なら逃げ出すところを、ナミさんは刃物を持った相手に勇敢に立ち向かって……本当にかっこよかったですぅ」

「一見すると女人のようにほっそりしていらっしゃるけれど、中身は男気がおありなのですね。さすがカンドル隊の方でいらっしゃいますわ。お顔も見目麗しくいらっしゃいますし……素敵です」


 娼妓たちが自分を見て顔をぽっと赤らめ、もじもじとしている……。それを見て、奈美はある事実に気付いた。


(~~~~何てこと! 女の子にモテるなんて!!)


 男にモテるならいい。だが、思いもよらず、女に人気があってもどうしようもない。奈美がショックで言葉を失っていると、ダンチョウが向こうから笑いながら声を掛けた。


「これはこれは……羨ましい限りですなあ、ナミどの!」

(──私が女だって知ってるでしょ!?)


 思わず叫んでやりたかったが、娼妓たちの前で下手なことは言えない。奈美はぐっと堪えて、ダンチョウを睨んだ。


「あなたたち、何をしているの?」


 凛とした一声が響き渡ると、はしゃいでいた娼妓たちがピタッと止まった。一同が振り返ると、そこには困った顔をしたシイラシが立っていた。


「お客様を困らせてどうするの。みっともない真似はやめて、皆仕事に戻りなさい」

「で、でも、シイラシさま。カンドル隊の皆さまはお得意様です。その隊長さまが珍しくいらしているのに、おもてなしもせずにお帰しになるのも……」


 一人の娼妓がためらいつつも、そう言った。他の娼妓たちもうんうんと頷いている。それを聞いて、シイラシは深いため息をついた。


「一流の娼妓になりたいのなら、相手が今、何を求めているのか知りなさい。ライカさんたちは今、先を急がれているのよ。道を開けなさい」


「…………は~~~~い」


 シイラシの言葉を聞いて、娼妓たちは渋々ライカたちから離れ、ぞろぞろと妓楼の中に戻っていく。それを見た奈美は、尊敬のまなざしでシイラシを見上げた。


(シイラシさんかぁ~~こいいっ!)


 ライカはシイラシに目で感謝の意を伝えると、踵を返して歩き出した。シイラシもひとつだけ頷くと、奈美に視線を送った──「またいつでもおいでなさい」とでも言うように。


「ありがとうシイラシさん!」


 奈美はそれだけ叫ぶと、重い荷物を背負ってライカたちの後をのろのろとついて行った。


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