表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

作者: 藍沢彩

横断歩道を挟んであっち側の人も、こっち側の人も、ほとんどが、街路樹を見上げている。

街路樹の下の歩道は白く汚れている。1匹いっぴきは小さくて、うるさくもないけど、小さな個体が群れになると、結構うるさい。群が空を飛ぶとき、大きな1つの個体のようになる。形を変えて、うねって、通常の生き物ではできないような動きをする。


今日も疲れた。なんの成果もない毎日。努力しているつもりだけど、小さいポカをコツコツ積み重ねているような日々。しょせん つもり だからダメなのか。でもこれ以上どう努力したらいいかわからない。


小さい個体の集合体は今日もうるさく、形を変えながら大きな個体となってうねっている。


ああ、うるさい。緩急をつけて濃淡をつけてぐにゃぐにゃ形が変わる。でも私は頑張っている。淡くなってばらばらと樹にとまる。なんとか持ちこたえる毎日。


口をあんぐりと開けて、鳴き声と羽ばたきで賑やかな樹を見上げていた。


信号が黄色に変わる。

ここは時差式。

先に車が通る。

交差点を車がまがってくる。


ふと目をそらしたら、腕に白い生暖かいものが、べちゃっと音を立てて、飛び散っていた。


汚な


心の中で、おぞましい感情が渦巻いた。

どす黒い怒り。なんで。何したって言うんだろう。

うまくいかないときはとことんうまくいかない。

やり場のない気持ち。大したことないはずなのに、今日は許せない、まあいいやと思えない。

さっきまで形を変えて、ばらばらになっていた一つ一つの暗い気持ちは、一つにまた集まった。

もう濃淡はない。ひたすら濃く黒くなる。うねりはない。ただただ膨張していく。


もうどうでもいい。

まだ青になってない横断歩道に飛び出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ