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幻想異変録  作者: 凍曇
8章 孤城落日
88/151

88:救われた少女

『俺の名前は一条、そしてこちらが魅魔さんです』

『そうかよ。それでお前らは何しに来やがった。私を殺したって金目のものは持ってないぞ』


(敵意満々だな……。こいつ鬼か?ツノが少しだけ見えるな)


 魅魔がそんな事考えていると一条はチラリと魅魔を見てきた。

 魅魔は好きにして構わないと頷く。


『貴女を助けに来ました』

『……レミリアさんに頼まれたからです』

『誰だそいつ?それに私を助ける理由になってねぇだろ』


 一条は早足で少女の元まで近づくと胸ぐらを掴む。


『お前を助けるためにここまで案内してくれた彼女だよ……!』

『……!』

『彼女は自分の身を呈してでもお前を守ろうとしてた。お前は気づいてたはずだろっ!!お前を襲っていた妖怪を倒してお前を守ったのは誰だ!!忘れたとは言わせねぇぞ!!』


 少女は一条の言葉に目を見開く。

 やがて少女はポツリと言葉を零す。


『……そいつはどうなった』

『消失した。最後の最後までお前を守ろうとしてたよ』


 答えたのは魅魔だった。


『そ、うか……。あいつ……』

『彼女は最後まで貴女の事を心配してました』


 もう一条の口調はいつもの丁寧な口調に戻っていた。


『そして最後に彼女に頼まれました。貴女を助けてほしい、と』

『……そうか。いや、すまない……。私も疑心暗鬼になりすぎてた……』


 一条は手を離すと魅魔に話しかける。


『魅魔さん、この方を神社まで連れて行ってもらえますか?』

『あ、ああ。それ自体は構わない。お前はどうするんだ?』

『俺はちょっと……、ここで調べ物があるので』

『そうか、夕刻までには戻ってこいよ』

『はい』


 魅魔は少女をおぶさると来た道を戻る。

 外に出ると新鮮な空気が2人の肺を満たす。

 やがて少女は魅魔に対して問いかける。


『どうしてそこまでして私を助ける?』

『アイツが言っていた通りだ。頼まれたから……ってのもあるんだろうけど結局のところお前は助けられてたよ。』

『……なんでだ?』

『アイツはすごくお人好しでな……近くに傷ついているやつがいたら自分の危険も顧みずに助けちまうバカなんだ』

『……そのバカを見込んで後で頼みたい事があるんだ』

『いいぜ。どうせ一条は断らないだろうから今のうちに聞いといてやる』

『姫が敵に捕まっちまった。私を助けるために……』


 少女の声は震えていた。

 魅魔の服をキュッと握りしめる。


『私は、姫を助けたい。けど私1人じゃ何も出来なかった……』

『なるほど、それじゃ益々アイツは断らないだろうな。それで?その姫様はどこにいるのか分かってるのか?』

『ああ、とある城に幽閉されている。城の名前は……』


 少女は魅魔にその名を伝える。


『輝針城っていう逆さまの城だ』

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