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幻想異変録  作者: 凍曇
8章 孤城落日
87/151

87:主人との邂逅

『……やりすぎじゃないですか?』

『……うむ、やりすぎたな』


 魅魔の放った光線は目の前の景色をまっさらにしてしまった。

 瓦礫とかも吹っ飛んでもはやどこにもない。


『さて、どうしたものか……。これじゃ本当に手がかりが……』

『魅魔さん、地下に誰かいますよ』

『地下に?……おっと、その前にやっこさんはまだ生きてるみたいだぞ』


 泥状となった"何か"は少しずつ一箇所に集まってもぞもぞと動いている。


『……なるほど。ありゃ何かの思念体だな』

『思念体ですか?とするとあれは誰かの意思ですか……』


 その時一条の頭に頭痛が走る。


『……っ!』

『どうした一条?』

『……いえ、俺のことよりもアレをなんとか……』


 痛みが強くなってくる。

 ズキンズキンと頭の中を痛みが暴れる。


『そうだな。こいつって何かの手がかりに……っておいおい、本当に大丈夫か?』

『か、彼女と話を……』

『彼女?お前何言ってるんだ?』


 一条はフラフラとした足取りで泥に近づいていく。


『おい!危険だぞ!』


 魅魔の制止を振り切って一条は泥に近づいていく。

 一条と"何か"の距離が後一歩まで近づいた時、"何か"が言葉を発した。


『チカヅクナ……コチラニクルナ……』

『違うんです……。俺達はあなたに、この館に害なしに来たんじゃないです……』

『クルナ……クルナ……』

『レミリアさん!!』


 一条がそう叫ぶと泥状となった"何か"の目のような光が細くなる。

 まるで目を細めるように。


『……シタニ』

『分かってます』

『ケガ、シテル、タスケテ』

『分かりました』


 一条がそう応えると"何か"はまた霧状となってゆく。


『一条!』

『大丈夫です。彼女にもう敵意はありません』


(……?なんなんだこいつ。いまいち行動が読めない奴だな)


『アリガトウ……オマエ、ヤサシイ』

『……もう消えちゃうんですね』

『ミンナ、マモリタカッタ、ワタシ、マモレナカッタ』

『……』

『アトハ、オマエ、ナカ二、イル、マダ、タタカイタイ』


 一条は少し顔を曇らせる。


『もう、レミリアさんが戦う必要はないんですよ。こんなになってまで……』

『チカラ、ナリタイ、マダ、ミンナ、マモリタイ』

『……分かりました。俺の体で良ければお貸ししますよ』

『アリガトウ、ホント二、アリガトウ……』


 "レミリア"は霧状となっては一条の体に吸い込まれていく。

 やがて"レミリア"が完全に一条の体に吸収されると再度感謝の言葉を言って消失した。


『……一条。もういいのか?』

『ええ、後は地下にいる怪我人を確認しましょう』

『でも地下と言ったてどうやって行くんだ?ここら辺一帯吹っ飛ばしてやろうか?』


 一条は慌てたように制止する。


『だ、ダメですからね!ちゃんと道はありますから!』


 一条は周りをキョロキョロ見渡すと少し離れた場所まで走って行く。

 目的地に到着すると何もない地面に指をさして魅魔に言う。


『ここら辺の土一帯を移動するって出来ますか?少しだけでいいので』

『まぁ、出来ないことはないが……。ホレ』


 魅魔が指をクイ、と動かすと周りの土が一条の指差した場所を中心に広がっていく。

 するとそこから階段が現れた。


『隠し階段か』

『ええ、この階段を降りていくと地下に行けるはずです』


 一条達は階段を降りていくとやがて広い図書館のような場所に出る。

 ずいぶんと埃まみれで長年使われていない事が伺える。


『……誰だ』


 本棚に寄りかかって苦しそうに肩を上下させている少女がいた。

 黒髪に白と赤のメッシュが混在した頭に、小さな二本の角を持つ少女が。

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