8:パーン襲来 前編
菫子は妹紅をおぶさりながら出口に向かう途中に違和感を覚えて立ち止まった。
先ほど妹紅が言ってた言葉を思い出したのだ。
———変な黒いのに襲われるし
(黒いの……?黒い妖精なんて見たことないけど……もしこの子の言ってる事がついさっきの事なら現在進行形で襲われてる……?)
その考えにたどり着いた瞬間バッ!っと後ろを振り向く。
振り向いた先には黒いフードを被った何者かが立っていた。
フードを被った何者かは無言のままこちらを見つめている。
菫子は冷や汗をかきながら黒いフードを被った何者かに問いかける。
『……貴方誰ですか』
『……私はパーンと申す者です』
『……それで? 貴方は私達に何か用ですか?』
『いえ、あなたに用って訳ではないんですけどもね』
『……? どうゆう……意味ですか……?』
パーンと名乗る何者かの言葉により菫子は確信を得た。
やはり今おぶってる妹紅が現在進行形で狙われてるという事である。
『まぁ、簡潔に述べますと貴方が背負ってるそこの小娘を……』
明らかに空気が変わった。
その空気を察したのか菫子は懐に忍ばせている3Dプリンターで作成した銃を握りしめる。
そしてパーンと名乗るローブを被った人物はゆっくりとこちらに歩いて来る。
そして間をおいて一言。
『殺すだけですよ』
そう言いながらパーンは恐ろしい速度で距離を詰めてきた。
『なっ……!』
『申し訳ないですが邪魔をするなら貴方を殺すのも構いませんよ?』
『くっ……!』
パーンの放った手刀の突きを菫子は横に飛んで回避し、パーンから逃げるように竹林を走る。
『ちょ、洒落にならないでしょ!本当に殺す気満々じゃない!貴方正気なの!?』
『もちろん正気ですとも』
パーンから走って逃げようとするがパーンは人間離れした速度で菫子を追ってくる。
(速い……! このままじゃこちらはすぐにあの黒ローブに追いつかれる……!)
『人間ごときの足でこの私から逃げるとでも?実に甘いぞ人間』
パーンはすぐに菫子の横に並走し回し蹴りを菫子に叩き込む。
『かっ……!? あ、が……!?』
菫子はパーンの回し蹴りを脇腹にまともにクリーンヒットし、竹藪に妹紅ごと吹き飛ぶ。
とっさに妹紅を庇う様に妹紅を抱えて菫子は地面に背を向ける。
ズザザザ!と音とともに菫子は地面と擦れる。
その衝撃で妹紅は目を覚ます。
『ん……え。……お姉ちゃん!?どうしたの!?』
混乱しながら周りを見渡すとパーンがゆっくりとこちらに近づいてくる。
『またあなたなの!? こっちに来ないで! こっちに来ないでよ!!』
『おやおや……。随分と嫌われたものですね』
ローブで見づらいが口元に薄い笑みを浮かべながら近づいてくるパーン。
その時タン、と乾いた音が聞こえたかと思ったらパーンの足に穴が開いた。
『……おや?』
バランスをかざすパーン。
『させは……しないわよ……!』
菫子は地面に這いつくばりながら呟く。
3Dプリンターで作成した銃をパーンの足に撃ったのである。
菫子は銃を護身用として威嚇にしか使おうと思っていたが、相手が命を狙ってる事、そして何より人間離れの動きをしてる時点で菫子は「人の常識は通用しない」と判断したから容赦なく相手目掛けて撃ったのである。
『お姉ちゃん!』
妹紅は心配そうに叫ぶ。
『妹紅……ちゃん……! 今から、言う事を……ちゃんと聞いて……!』
菫子は苦しそうに途切れ途切れの言葉を妹紅に投げかける。
『ここから……真っ直ぐ進めば、出口が……あるから……。そこまで走って……!』
妹紅は泣きそうな顔をして首をふる。
『い、嫌だよ! お姉ちゃんを一人にして逃げられないよ! お姉ちゃん一人であれを何とかするなんて無理だよ! とっても強いんだよ!?』
『うん……。だからお願いがあるの……』
『お願い……?』
『そう、妹紅ちゃんは、ここから……逃げて助けを、呼んで、欲しいの...』
そう言いながら菫子は呼吸を整えながら立ち上がろうとする。
妹紅は涙をポロポロ流しながら菫子の言われた通りに真っ直ぐに走る。
『逃がしませんよ!』
パーンは片足で立ち上がり追いかけようとする。
しかし、菫子がパーンの足元に向けて発砲しパーンを牽制する。
ゆっくりと立ち上がった菫子は苦しそうな顔をしながら大胆不敵とも思える笑みを浮かべてる。
『あの子の所には行かせないわよ……!』




