78:事態の急変
『おいおい、しっかりしてくれよ。魔法使いさんよ』
魔理沙は退屈そうに言う。
周りには戦闘の跡が所々に見られ地面がめくれ上がっている。
魔理沙は箒に腰をかけながら足をブラブラさせていた。
対して夢美はボロボロになりながらも立っているのがやっとという状態であった。
夢美の後ろには傷だらけで倒れているちゆりがいた。
『バカだねぇ。そんなお荷物さっさと捨てれば勝ち目は多少あるだろうに』
『バカは貴女よ。これぐらいが丁度いいハンデになるから全然大丈夫よ』
『さて、そんな強がりも聞き飽きたし私達もあまり時間も残ってないから……殺すか』
魔理沙が人差し指を夢美に向ける。
後は魔力を通せば魔法が発動し夢美達を襲うだろう。
夢美は後ろのちゆりを守るために防御魔法を発動させようとする。
だが。
2人の魔法が発動する事はなかった。
なぜなら魔理沙が突如左を向いたからだ。
その無防備な行動に夢美は思わず魔法を使うことすら忘れて魔理沙の行動を見ていた。
『……アリス?』
『……?』
魔理沙は今までにない真剣な表情になり箒に跨ると、先程まで魔理沙が向いていた方向へ飛んで行った。
『助かった……のかしら……?』
-数十分前-
『はぁはぁ……くそっ……』
『残念だったわね。貴方には驚かせてもらったけど何もあれだけが私の攻撃じゃないのよ』
一条の周りには鋭い槍、剣などを持った小さい人形が数体武器を構えて囲んでいた。
一条は疲れたように息を荒げているがアリスは息を切らしてすらいない。
『何ですか貴方達は……!』
『別に、ただの魔女よ。弱い人間さん』
(どうせ魔理沙の事だから遊んでるんでしょうね。あちらが死ぬ事は確定してるのなら情報は彼から手に入れようかしら。ただの人間だし)
アリスは一条を捕らえようと糸を動かそうとした時である。
アリスの体に違和感があった。
アリスは違和感がある脇腹を見た。
そこには短剣がアリスの脇腹に深く刺さっていた。
『……え?』
気付いた時にはもう遅い。
脇腹からは灼熱のように熱く激痛がアリスの体を支配する。
フラリと体を揺らすとアリスはパタリと倒れてしまう。
それと同時に一条を囲んでいた人形も動きを停止し地面に転がる。
『はいはい、まず1人。いやぁこんだけ派手に遊んでるとはねぇ。おねーさんも遊びに混ぜてよ?』
近くから若い女性の声が聞こえてきた。
一条はゆっくりと声の方向へ顔を向けると、真っ白な肌にうっすらと腰まである赤みのかかったストレートの長髪でワンピースを着た女性が立っていた。
『おいおい……なんでもアリですか……!幻想郷ってのは……!』
一条の行動は迅速だった。
オカルトボールを使いとある事を具現化させた。
すると周りに少しずつ霧が漂い始める。
『お?霧?いいねぇ』
『貴女がどこのどなたか知りませんがこれだけは言っておきますよ』
『なんだい?』
『あなたろくな死に方しませんよ』
『ハハッ!死ぬ予定はまだないんでね』
『それじゃあ後ろを見てみてください』
言われた通りに彼女は背後を振り向いて見るが霧があるだけで特にこれといった特徴的なものはなかった。
『何にもないけど……』
彼女は途中で言葉を切った。
気づけば一条はおらず、アリスの姿もなかった。
ただそこにあるのは動かなくなった人形ぐらいであった。
『やってくれるじゃん』
一条はアリスを背負いながら重い足取りで移動していた。
(早く逃げなきゃ……!少しでも遠くに……!)
霧の中行くあてもなくただただ逃げていく一条。
彼は限界に近い体力を振り絞って重い足を無理やり動かしていく。




