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幻想異変録  作者: 凍曇
6章 秘封倶楽部
73/151

73:後の祭り

『おい!夢美!!急げ!!私じゃ手に負えない!』

『今向かってるわ!なんとかそれまで持ちこたえて!』


 ちゆりは荒く携帯の電源を切ると上のスーツを脱いで目の前の男の腹に巻きつける。

 ちゆりは焦らず、的確に応急処置を施していく。

 しかしちゆりの表情は時間が経つたびに険しくなっていく。


『くそ……!どうなってるんだぜ……!まさかこいつが1人でこれを……!?』


 ちゆりはそう吐き捨てて周りの現状を確認する。

 そこにはビルが倒壊しており、もはや見る影もなく破壊されていた。

 所々からガレキが黒ずんでおり焦げ臭い匂いで充満していた。

 そしてもう1つ。

 見たこともない文字がビッシリと空間に書き込まれており、その文字は空中に浮いていた。

 一般人であれば異常な光景だがちゆりは知っていた。

 知っていて当たり前の現象である。


『魔法……?空中固定の光の魔法……だが、見たこともない文字……益々意味が分からん』


 ちゆりは血まみれで倒れている男を見る。

 パーカーは血で染め上げられており現在進行形で赤い液体が男の体から溢れている。

 ちゆりは男の腹に巻いたスーツを押さえつけて圧迫しているが止まる気配ない。


『遅くなった!』

『早く!血が止まらないんだ!』


 夢美は走ってちゆりの元へ近づく。

 そして夢美は男の腹に手をかざす。

 すると夢美の手から柔らかい光が灯る。


『何があったの?私の方からは突然爆発があったと思ったら貴女から電話がかかってきたんだけど』

『……分からない。私が来た時にはもう既にこうなっていたんだ』

『……取り敢えず止血が終わったら急いで病院に搬送よ。ここまでくると私のレベルじゃどうにもならないわ』


 夢美と話しているうちにちゆりは少しずつ冷静さを取り戻してきた。


『近くの検問場所に来るように指示を出しておくぜ』


 ちゆりは携帯に番号を打ち込み電話をかける。


『もしもし、私だ。ああ、大丈夫だ。頼みがあるんだ。急いでB-3地点に救急車を呼んでくれ。迅速にだ』


 ちゆりは電話をしながら夢美の肩を軽くゆする。

 夢美はちゆりの方へ向くとちゆりはとある方向に指を指す。

 電話をしているため喋れないのだろう。

 代わりに口だけを動かして夢美に言葉を伝える。


『あ れ の か い せ き を た の む ?あれって?』


 夢美はちゆりの指差した方向へ顔を向けると光の文字が空中にビッシリと書いてあった。


『……無茶苦茶な方式だな。無理矢理結界としての形を維持してる』


 そう夢美は呟くとちゆりは驚いたような顔で夢美を見る。

 え?お前あれ分かるの?みたいな顔をしているな、と夢美は思った。

 ちゆりは電話から耳を離してボソッと言った。


『え?お前分かるの?』

『本当にちゆりって思ったこと顔に出るわよね。私のこといいから早く話つけなさいよ』

『ああ、いやもう話は終わったんだ。今からこっちに救急車が来るってよ』

『よく来る気になったわね。あの腰抜け達にそんな決断が出来るとは思わなかったんだけど』

『いや、救急隊員が反対を押し切ってこっちに来るんだとよ。手間が省けて良かったじゃないか』


 夢美は止血されてると確認した後かざしてた手から柔らかい光が消えた。


『丁度良いタイミングね。私達も救急車に乗せてもらって病院まで行きましょう』

『だな』


 救急車のサイレンの音がこちらに近づいてくるのをちゆりと夢美は聞いていた。

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