70:旧市街地
『やったじゃないか夢美。また演説で契約を取り付けられたな!』
『やっと認めてくれたわ……本当に長かった。これも手伝ってくれたちゆりのおかげね』
とある部屋で彼女達は会話していた。
2人は黒いスーツを身に纏っていた。
2人の格好から見るにどうやら正装する必要があったのだろう。
だが今はスーツのボタンを開けて整えていたであろう髪の毛も今はくしゃくしゃになっている。
『おいおい、アンタが全部証明した事だろう。私はただ助手として手伝っただけだぜ』
『助手として優秀すぎたお陰で私は助かったのよ』
『おいおい、そんなに褒めるなって惚れるぜ?』
彼女らの名前は「北白河ちゆり」と「岡崎夢美」。
一度、幻想郷へ行ったことのある科学者にして魔法使いである。
『幻想郷は楽しかったなぁ。また行ってみたいぜ』
『あそこは座標の特定が難しいのよね……。多分特定は出来るけどきっと別の幻想郷に行っちゃうわ』
『あー、あれか。そこら辺は時空移動の弊害だよな。軸が違うだけで別の世界に飛んじゃうんだもんな』
その時、部屋の隅に置いてある黒電話からけたたましい音がなった。
『あら、誰かしら』
そう言って夢美は受話器を取る。
『はい、もしもし。え?はい、そうですが。今からですか?ええ、ええ。……分かりました。そちらに向かえばいいんですね?』
夢美は教授としても世間から高く評価されている。
その為、しょっちゅういろんな場所に呼ばれる事があるのだ。
ちゆりはまた呼び出しかな、と思い。
服装を整え直そうかと考え始めた時、夢美が怪訝な反応を示した。
『旧市街地に人がいる?いやいや!私は知りませんって!そもそもあそこは封鎖されててどうやっても入る事は不可能じゃないですか!』
何やらきな臭くなってきたな、とちゆりはボソリと呟き夢美の近くに移動して聞き耳を立てる。
『そもそも封鎖したのが3日前でしょう!?わざわざ人探知機まで用意して人がいない事も確認したじゃないですか!……え?突然人の反応が先程出た!?……はい、ええ。……分かりました。そこに行くのは私だけでいいです。人は派遣しないでください。ええ、数分でそちらに向かいます』
ガチャリと受話器を元の場所に収める。
『どうした?なんだか物騒な雰囲気だぜ?』
『旧市街地に人の反応があるって話よ』
『おいおい、そいつは……』
ちゆりは苦い顔をする。
夢美は急いでバッグを手に取る。
『急いで行くわよ。また被害者が出たら大変な事になるわ』
『そうだな。まだ外に車があるはずだから事情を話して乗せてもらおう』
-旧市街地-
『ちょ、ちょっと!何突然走ってるのよ!』
『アレが見えてないんですか!?』
『私には突然後ろ振り返ったと思ったら突然走り出したようにしか見えないんだけど!?』
一条は叫びながら逃走する。
『何かよく分からないですが非常に危険なヤツがこっちめがけて追いかけてきてるんですよ!』
『私にはどうして見えないのかしら!?』
『分からないです!恐らくですけどアレが見えるのは俺が今"眼"を発動させてるからだと思います!』
『……取り敢えずどこか隠れましょう!』
見えない"何か"に追われる一条は誰もいない街で逃走劇を始めるのであった。




