68:帰ってきた世界、見知らぬ世界
『ねえ、一つ聞いていいかしら?』
『はい?』
一条は目的地に向かって移動しながらその合間にパチュリーと会話していた。
『あなた本を沢山読むみたいだけど、楽しいかしら?』
『ええ。文字を読むのは大好きですからね。それがどうかしました?』
『もしかしてだけど……魔道書とか読んだことあるのかしら?』
パチュリーの問いに一条は黙っていたがやがて口を開いた。
『読み……ましたね。全部私には出来ないものばかりでしたけど』
『魔道書っていうのは魔法使いにしか読めない文字のはずなんだけど、どうやって読んだのかしら?』
一条は周りをキョロキョロすると声を潜める。
『……言ってもいいですけど誰にも言わないですか?』
『私はこれでも約束は守る方よ』
パチュリーがそう言うと一条はため息をつく。
そして目を瞑る。
『……?』
パチュリーがその行動に疑問を覚えた瞬間目に違和感がある事に気づく。
パチュリーはこの感覚は自分ではなく、一条の感覚だとすぐに理解した。
『目に違和感があるのは許してください』
一条はそう言うが見た目に変化は見られない。
『どういう事……?目に何かあるの……?』
『なんというか……特異体質って言うんですか?俺は目が良いみたいなんですよ』
『……視力が良くなるとかそういう感じって事かしら?』
『いえ、この状態になると視覚からの情報が異常に多くなるんですよ』
『益々分からないわ』
パチュリー眉を潜める。
一条は一度足を止めて星空を見る。
『例えばあの星空を見るとパチュリーさんは何を思いますか』
『色んな星座の名前とか思い浮かべて星占いなどをするわ』
『俺にはあの星一つ一つの名前が見えるんですよ』
『は?』
『星を見れば名前と時刻を知ることが出来る、文字を読めばどんな文字でも読める、つまりこの目は見えないものを見る事が出来るんですよ』
ま、色々と見えないものもありますけどね。と一条は肩をすくめる。
パチュリーはふと思った事を口にする。
『と言うことは……目からビーム撃てるの?』
『マジすか?』
一条はそんな雑談を交わしながら目的地にたどり着いた。
『時間ピッタリね』
『会長、なんかカッコいい服装してますね』
『私の正装よ』
菫子はポケットからスマートフォンを取り出すと時間を確認する。
画面には2:00と表示されていた。
『一条』
菫子がそう呼ぶと一条はポケットからペットボトルのキャップを取り出す。
そのキャップを菫子の前に投げ捨てる。
すると不可解な現象が起きた。
なんと突如キャップが目の前から消失したのだ。
『……本当みたいね』
『丑三つ時にしか発生しないうえに、こんな通路は誰も基本誰も通らないので気づかれなかったみたいですね』
『それじゃあここを通れば……』
『行く前に言っておきますが』
一条は声を少し重くする。
『どこに飛ぶか、俺にも分かりませんからね』
『……そうね。それでも私達秘封倶楽部の掲げる目標は何?』
『秘密を暴く。それが秘封倶楽部ですよね』
一条は軽く微笑み菫子は朗らかに笑う。
『それじゃ、幻想郷で会いましょう』
『了解です。会長』
2人は目の前の通路を歩く。
そして電柱を越えた辺りで2人の姿は消失した。
菫子は周りの景色が変わっている事に気づく。
『……着いたわね』
『……ノーレッジさん』
『違うわ……。違う……!』
一条は眉間に皺を寄せ周りを見渡す。
一条の眼前に広がる世界は現代の町によく似た知らない世界だった。
『……まいったなコレ。俺が知る情報とどれも一致しない。ここは……元いた世界じゃなさそうだ』




