65:近づく真実
『一条?名前は?それ苗字でしょ?』
『あー……いや、その……』
一条の歯切れの悪さに菫子は眉をひそめる。
少し間があって一条は制服の胸ポケットから生徒手帳を取り出す。
『……?』
一条から生徒手帳を渡されてそれを見る。
顔写真が貼ってあり、生年月日、名前などが書いてあるごく一般的な生徒手帳だ。
その生徒手帳に記された名前には「一条」しかなかった。
『……益々意味が分からないんだけど』
菫子は生徒手帳を一条に返す。
『や、俺って実は名前が無くてですね……』
『はぁ?何でよ』
『えー、ここら辺はかなり込み入った事情があるので……』
とても言いづらそうにしているのを見て菫子はため息をつく。
『……分かったわ。そこは聞かないであげる』
『ありがとうございます』
『それと入会も認めてあげる』
『あ、え?いいんですか?』
『ええ、それじゃ早速行きましょ』
『はい!』
(ま、どうせ他の奴らと一緒で少しいれば勝手に抜けていくでしょ)
そう思っていた。
しかし、一条はまったく秘封倶楽部から抜けるそぶりもなくそれどころか進んで自分から活動もしようとしている。
そんなこんなでもう1ヶ月が経ったある日。
『ねぇ一条?』
『どうしました?』
『つまらなくないの?自分で言うのもあれだけどこんなオカルトとか研究しているサークルなんてロクなサークルじゃないのよ?』
『全然大丈夫ですよ〜。俺オカルトとか伝承とか大好きで家などでも色々と本を読んでいるんですよ』
『へぇ〜、それなら色々知ってるんだ』
『まぁ、本が好きなので人並みにはオカルトの知識があるとは思いますが』
菫子はふととある事を思いつくと一条に別の話題を振る。
『……ねぇ神隠しって知ってる?』
『有名な現象ですよね。昔なら行方不明になったら神隠しって扱いになるぐらいは』
『そう。そして私は神隠しの主犯を知ってるの』
『え、それは人が神隠しをしてるって事ですか?』
『ちょっと違うわね。んー、妖怪ってレベルかな……そうね、神様が自分の意思でワザと神隠しをしてると思っていいわ』
一条は少し考えるような素振りをした後菫子に質問する。
『どうやって知ったんですか?』
『その言葉を待っていたわ』
菫子はニヤッと笑う。
一条はなんか企んでるな、と思いながら何も言わず次の言葉を待つ。
『幻想郷、ここには私達が知らない真実がたくあるわ』




