63:始点
『……なんだか変な夢だったな』
朝の光が差し込む部屋で男は目を覚ます。
すごく長い夢を見ていたような気がする。
顔が熱いことに気づいて触れると目から涙を流していたようだ。
『……?』
自分で流した涙のはずなのに自分が流した涙じゃないような奇妙な感覚に陥る。
『なんか怖い夢でも見たのかなぁ……。覚えてないけど』
そう言って目元を服で拭って視界がハッキリしてくると次に妙なものが映った。
薄く今にも搔き消えそうな女性が漂っていた。
『……んん?』
何かの見間違いかと思い目元を再度服でこする。
しかし目の前の女性は消えない。
すると女性はこちらの存在に気づいたのか、こちらに視線を向ける。
『ひぇ……』
『……心外ね。そんな声を出されるような事したかしら?』
『……喋れるんですか?』
思わず質問してしまった。
なんというか場違いな行動を取ってしまったような気がするが男はそんな考えを頭の片隅に追いやる。
『……そうみたいね。私からも質問があるわ』
『は、はい。なんでしょうか』
『ここはどこかしら?後……私が誰だか知らない?』
『は?』
-宇佐見宅-
『……学校かぁ』
菫子は自身の好きなようにレイアウトされた部屋を見渡す。
これが本当の私の居場所。
私の家。
だけど物足りないのは何故だろう?
『長い冬休みだったな……』
こちらに帰ってきてから寝てもあちらに行けなくなってしまった。
理由は分からない。
けどこれが本来の私なのだと菫子は自分に言い聞かせる。
ただの学生で、オカルト好きで、超能力を持った、人間。
それが私だ。
『そろそろ行かないと遅刻しちゃうよね……。はぁ……やる気でないなぁ』
-東深見高校-
学生達が授業を受ける中1人だけ居眠りをしている生徒がいた。
隠れてスマートフォンをいじったり、小説を読んでいたりする生徒もいるがあくまで彼等は隠れて違反するのである。
しかし居眠りをしている生徒は隠す様子もなく、堂々と教科書も出さないまま机に突っ伏して寝ていた。
その様子に先生は怒りその生徒に注意をする。
『こらぁ!宇佐見!居眠りしてるんじゃねぇぞ!』
『……何ですか。眠いんですよ』
『授業中に寝るとはどういう事だ!』
『だって退屈なんですもん』
『何だとぉ?じゃあこの問題を解いてみろ!』
先生は数学の問題を黒板にチョークで書き込む。
ちゃんと授業を受けていた生徒達であれば気づいただろう。
先生の書いた問題は自分たちがまだ習っていない範囲の問題であるという事を。
だが誰もその事を言う者はいない。
何故なら先生を恐れて言えない者が大半を占めているためだ。
それもあるが宇佐見は学校では人付き合いが悪く、苦手としている人が多いのも理由の1つであろう。
『分かりました』
だが宇佐見は気にする様子もなく席から立ち上がると早足で黒板に近づく。
チョークを手に持ち、数秒問題を見つめると正しい解答を黒板に書き出していく。
書き終わるとチョークを元の位置に戻しまた早足で席に行き、頬杖をつく。
『どこか間違ってますか?』
『い、いや正解だ……』
先生は驚いたような声をあげて生徒達はざわめく。
-放課後-
『おーい、宇佐見』
『はい?』
菫子のクラスの担任が手招きをしていた。
菫子は担任のいる教壇まで行くと担任が口を開いた。
『お前が勝手に作った部活があるだろ?』
『サークルですね』
『そうそう、それ。そのサークルに入りたいってやつがいたんだけどさ』
『え?私のサークルにですか?というか正式な部活じゃないからそういうのは認められないんじゃないですか?』
『お前が言ったらダメなような気がするんだが。ま、そうなんだけども……本人の強い要望でな。俺が対応したからっていうのもあるんだけどね?』
『はぁ……』
『いや、一応お前が勝手にやってるだけって事になってるから他の先生方も無視してるけどさ、それでも目の敵にしてる先生が少なからずいるみたいでどうやら部活の用紙の紙に間違えて書いたみたいなんだ』
『わざとじゃないんですか?』
菫子は顔をしかめるが先生は首を振る。
『書いたところで何の意味もないだろ。なんか急いで紙面作成してた時にお前がやってるサークルの事知ってその紙にメモしたみたいなんだ。そしてそれを消し忘れたままコピーしちゃったんだと』
『大の大人が何やってるんですか……』
『取り敢えずお前の名前教えといたから後で来ると思うし対応しておいてくれよ』
それじゃ、と言うと担任は教室から出ていった。
『ええ……来たら速攻断ろう』
基本誰とも接したくないと考えている菫子はこういう部分で人付き合いが悪いと称される所以である。
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詳しい内容はそちらで書きますが
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