60:理由なき終わり
『私が望むのは幻想郷の崩壊、それによる妖怪達の根絶……とかはどうでしょう?』
『……あ?どういう意味だ?』
『はて、これじゃ納得できませんか』
霊華は八俣遠呂智の答えに苛立ちながらも冷静さを装って会話を続ける。
『意味もなくただ蹂躙してただけとでも言いたいのか?』
『先程もそこの少女に言いましたが"終わりに理由がある"と思ったんですか?』
八俣遠呂智は少し熱をこめながら言葉を言い放つ。
『終わりは唐突に来るものです』
『ストーリーもなく』
『感動的な理由もなければくだらない理由もなく』
『ただただ唐突に"終わり"は来ます』
『それこそ風が流れるのと同じように当たり前のように"終わり"は来るんですよ』
『"終わり"に理由なんて求めてはいけません』
『あって当たり前』
『なって当たり前』
『"終わり"なんてものは形あるものに必ず訪れる運命です』
『自然で必然で当然なんです』
ですから、と八俣遠呂智は言った。
『サヨナラです』
2つの頭が牙を向いて勇儀と霊華を襲う。
2人はその頭を筋力だけで無理矢理止める。
『うぐぉぉぉぉ……!!!』
『うぎぎぎ……!!!』
筋力だけで攻撃を受け止めるという彼女らぐらいにしか出来ない荒技だったが八俣遠呂智の残る頭が横から振り回すようにスイングしてきた。
『あがっ!!』
『ぐ……が……!』
頭は2人の脇腹に直撃し真横に吹き飛ぶ。
ズザザッ!と派手な音を立てながら地面を転がる。
『霊華!勇儀!』
紫は大声で呼びかけるが反応がない。
『気を失ってるの…….!?そんな……!起きてよ!』
『無駄ですよ』
『……!』
『彼女らは心身ともに疲弊しきってましたからねぇ。限界ですよ。これで終わりです』
『そんな……』
『ふむ、まだそちらは終わってはいなかったのか』
突如男の声が聞こえてきて紫はバッと声の方向へ顔を向ける。
そこには燃えるような赤い髪、鋭い眼光を湛えた男が立っていた。
(最悪だ……!どう見ても味方とは思えない!非常にマズイ状況だわ!……霊夢達と菫子は大丈夫かしら。お願いだからこっちには来ないでよ……)
心配すべき彼女達がもうここには存在しない事を知らない紫は彼女達の安全を心で願っていた。
『さて、主人よ。こやつらはどうするのだ?』
『今から終わらせるつもりだったんですけどね』
『少々気分が良くてな。主人が許すのであればこやつらに手を下したいのだが』
『別に構いませんよ。ただ私まで巻き込んで燃やさないでくださいね?』
『うむ!一理あるな!では加減して消し炭にするとしよう』
そう言った男の周りの景色が歪み始めた。
それは男が発した熱によって歪められた。
のではなかった。
『消し炭になるのはお前だ……』
突如聞こえた声に男は悪寒を感じた。
マズイ、こいつはヤバイ、と男は感じて後ろを振り向く。
見えるはずの景色が割れておりそこにはスキマと呼ばれる空間の裂け目があった。
そしてそこから巨大な大剣が飛び出てきて男の体に突き刺さる。
『な……ゴボ……』
巨大な大剣の柄を片手で握りながらスキマから"それ"は出てきた。
"それ"は黒い髪を結んでおり、鬼を模した仮面を着けた八雲と呼ばれる女性だった。




