54:地上にて
とある場所で八雲は何も喋らず地上を静観していた。
『……』
『よう八雲、地上はどうなっておる?』
下駄の音を響かせながら歩いてきて八雲の肩に手をまわす。
八雲は疲れた様子で溜息をつく。
『動きだしたが……想定よりもマズイ状況だな』
『そうか……ならそろそろ我も動くかの』
そう言うと沙霧は八雲の肩から手を離し下駄の音を響かせながらどこかへ行こうとする。
『妖怪の山か。なぁ、お前が無理にいかなくても……』
八雲が言葉を言い終える前に沙霧は立ち止まり振り返らず、言葉で遮る。
『分かっておる。お前が夢想天生を使えば幻想郷を助けられるかもしれないって事ぐらいな』
だけど、と沙霧は間を置く。
『あの山は我にとって大切なものでな……。それにお主からしても生き残りがいた方が助かるじゃろ』
『その言い方はずるいな……。私を1人にしないでくれよ?』
『もちろん。ああ、そうじゃな。ならお主に頼みがあるんじゃが』
『なんだ?』
『もしも、我が死にそうになったら助けてくれよ。八雲』
『もちろんだとも。沙霧』
カカっと愉快そうに沙霧は笑うとまた歩き始めて八雲の耳からは下駄の音が遠ざかっていく。
下駄の音が完全に聞こえなくなると八雲は独り言のように喋り始める。
『お前もいいぞ。元々私達はそういう集団だ。そのための集団だ。守りたい奴がいるならそいつを命に代えても今度こそ守るんだぞ』
すると、いつの間にか魂魄が頭を下げて姿を現した。
『本当にお世話になりました。このご恩は忘れません』
『おう、頑張れよ』
気づくと魂魄の姿はもうどこにもなかった。
八雲はまた地上の様子を見ていると、眉をひそめる。
『おいおい、ガキどもまで旧都から出てきやがったのか。さとりに頼んだはずなんだがな……』
-地上-
『萃香!全速力であの化け物に突っ込むわよ!』
『おう!振り落とされるなよ!』
霊夢は萃香の背中に必死に掴まり、萃香は全速力で地上を走っていた。
しかし萃香は途中で足を止める。
『ちょっと!なんで止まるのよ!』
『霊夢……それどころじゃないよ……』
萃香の目の前に立ちはだかる人影があった。
それは、羽衣を纏い首元には勾玉が何重にも連ねられている首飾りを付けていた。
燃えるような赤い髪、鋭い眼光を湛えた男がそこにはいた。
-同時刻:地上-
『そこらへんで色々と変な気配があるな……どう思うよ』
勇儀は肩に乗っている紫に話しかける。
紫はとても難しい顔をしていた。
『ここまで大掛かりに蹂躙されているのに妖気がまったく感じられないのは……異常ね』
『……だな。それよりあのデカブツが気になるな』
勇儀の視線の先には8つの頭がある巨大な蛇、八俣遠呂智がいた。
『あれもまったく妖気がしないのよね……というより神気がするから蛇の神様か何かじゃないかしら』
『神様ときたか……そうするとこの変な気配のほとんどが神様ってか?笑えない冗談だ』
『……そうね。取り敢えずあそこで霊華が戦っているから助けに行って欲しいの』
『あいよ。さとりにお前らの子守を頼まれたからな。特にお前』
『そ。ならちゃんとエスコートしてくださいな』
『私のは手荒いがな!』




