53:襲撃者
霊華が地上に帰ってくる1時間前の話である。
最初に異変に気付いたのは里の子供達だった。
『ねーねー、なんか揺れてない?』
『私知ってるよ!これ地震っていうんだって!』
『すごーい!そんな事も知ってるんだね!』
わいわい子供達が騒いでいると外で水を撒いていた男が子供達に話しかける。
『どうした?なんかおもしれぇもんでも見つけたのか?』
『なんかねー!地震が起きてるんだって!』
『地震?あれ、本当だ。小さいけど揺れてるな』
『地震って揺れるんだね〜』
『おう、たしかにお前らぐらいの年だと地震を体験したことねぇもんな。ま、小さいから大丈夫だけどよ。地震は危ねぇんだからもしも揺れたら家に急いで帰るんだぞ?』
『ねぇねぇお兄さん』
子供の1人が男の裾を引っ張っていた。
『ん?どうした?』
『何か音が聞こえない?』
その言葉に男は耳を澄ますと男の耳にも子供の言う音が聞こえた。
(なんだぁ……?まるで地割れみたいな音が……)
男が音について考えていると突如でかい音が響き渡った。
子供達が悲鳴をあげたので急いで男が子供達の前に庇うように立つ。
すぐにぞろぞろと人が集まってきた。
どうやら音が気になって皆集まってきたらしい。
そして皆が音源へ視線を向けると、人里から離れて遠いが、遠くの地面から巨大な蛇の頭が8つも出てきた。
『お、おい!あれは妖怪じゃないのか!?』
その動揺した言葉をきっかけに次々と悲鳴があがる。
『ば、化け物が出たぞぉ!!!』
『は、はやく逃げないと危ないんじゃないかい!?』
突如出現した化け物の姿に里の者達は混乱を起こした。
-現在-
霊華があっけにとられていると頭が8つの巨大な蛇が人里の方向へ動き始めた。
『……ッ!!』
霊華は全力で地面を踏んだ。
あまりの衝撃に辺り一帯の地面が沈む。
そして。
霊華は化け物に向かって跳躍した。
『させる……かっ!!』
霊華は勢いよく巨大な蛇の体に拳で突く。
ズンッ!!と鈍い音が響くと巨大な蛇はようやく動きを止める。
動きを止めた巨大な蛇はギロリと8つの頭がそれぞれ霊華を睨みつける。
『お前が里に手を出そうってなら……ぶっ潰すぞ』
霊華が青筋を浮かべて低い声で巨大な蛇に言う。
しかし巨大な蛇は霊華から視線を外すとまた里に向かって何事もなかったかのように移動し始めた。
『待て!行かせんぞ!』
霊華は巨大な蛇の動きを止めるためにもう一度拳を叩き込もうと拳を握った瞬間、突如8つの頭のうち1つの頭が首を振り霊華を吹き飛ばした。
『ぐっ……!』
とっさに霊華は両腕を交差し、防御をするが両腕からミシミシと嫌な音が聞こえてくる。
霊華は人里まで飛ばされてしまう。
里までかなりの距離があったはずなのに霊華は里まで吹き飛ばされた。
その事実に霊華は驚きを隠せなかった。
そのまま長屋に激突してようやく霊華は止まった。
(ただの妖怪かと思ったらこの力……。妖怪の類じゃないな……)
霊華はゆっくりと激突した勢いで壊れた長屋から外に出る。
次に霊華は軽く手を握りしめる動作をした。
(腕はなんとか動くが……左腕がマズイな。感覚がない。)
攻撃される事で冷静さを取り戻した霊華は次に相手の分析をする。
ただの妖怪と思って無視していたがそうではないと断定した霊華は相手が何であるか考える。
答えはすぐに出た。
(古い文献で読んだことあるな……。しかも文献通りだったら益々マズイ……が、妖怪でないとすると……)
霊華が文献で読んだことのある名とは。
八俣遠呂智。
日本神話において最大級の大妖怪として名を連ねる名であった。
古事記では八俣遠呂智と書かれているが、他の書物では八岐大蛇とも書かれています。
つまりメジャーな誰もが聞いたことのある名前、ヤマタノオロチの事を指しております。




