50:八雲の誕生
ある女性は戦い続けた。
使命のために、人の為に。
女性は一人で孤独だった。
護るべき人達から恐怖の眼差しを向けられていた。
それでも戦い続けた。
その女性に名前はなかった。
本当はあったかもしれない。
だけど誰もその名前を知る者はいない。
自分も含めてだ。
女性には親しい友人がいた。
何を考えているか分からない不思議な笑みをいつも浮かべている大事な友人だ。
人じゃない。
妖怪だ。
だけど退治はしない。
できない。
女性は自分にとって唯一の繋がりを断ち切る事ができなかったのだ。
きっとこの友人である妖怪がいなかったら女性は一人で孤独に押し潰れていただろう。
だけど。
景色は雨降る夜に切り替わる。
女性は友人である女性の亡骸を抱えて泣き叫んでいた。
守るべき場所はもう無い。
守るべき人達もいなくなった。
寄り添い続けた友人もいない。
何もない。
はずだった。
けど。
突如抱きかかえていた亡骸が消失した。
女性は驚いて亡骸を探す。
すると目の前に目があった。
大量の目だ。
物体ではなく割れ目のようにも見える。
それは女性にとって見覚えのあるものだった。
スキマと友人が名付けていたものであるはずだ。
そのスキマから声が響いてきた。
『俺は契約を果たすためにお前に従うぜ。そんでもって元契約者、八雲紫からの伝言だ。
"ごめんなさい。
あなたには辛い思いをさせたわね。
けど博麗の巫女としての役目を最悪の形で終えたあなたはきっと死ぬんでしょうね。
けどね、これだけは言っておくわよ。
生きなさい。
何か役割がないと生きていけないのはもう知ってるわ……これでも親友だしね。
だから、あなたにはお願いがあるの。
あなたはもう博麗の巫女として苦しむ必要もないわ。
あなたは私の分まで生きるのよ。
私の寿命と力と記憶をあなたにプレゼントするわ。
良き人生を。
後のことは私の記憶が教えてくれるわ。
今までありがとう。
そしてさようなら"
さて、それじゃあ伝言も伝えたし後はお前次第だぜ?頑張れよ新契約者様?』
その女性には新しく名前が出来た。
女性の名前は———
"八雲"




