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幻想異変録  作者: 凍曇
3章 争奪戦
40/151

40:選択

『まぁ、別にそれはどうでも良いよ。皆無事だったのが私としては喜ばしい事だ』


 八雲は戸惑っている魂魄にそう言う。

 魂魄は納得がいかないという感じだったが渋々頷く。


『そういや最期の処理が残ってたな』

『処理?』


 菫子が聞き返すと八雲は頷きながら倒れている霊夢の頭部に触れる。

 するとそこからスキマが出てきて霊夢の頭部の内側に八雲の手が入り込む。


『な、何やってるんですか!!』

『少し静かにしてくれないかな』


 八雲は強めの口調で菫子に返事を返す。

 菫子はその言葉だけで動けなくなってしまった。

 いや、動きたくなくなってしまったのだ。

 菫子の体が動くのを拒否している。

 まるで蛇に睨まれた蛙のように。


『ほれ、嬢ちゃん大丈夫か?』


 僧が菫子の肩をポンと叩くと菫子の体が動けるようになっていた。


『よし、これで完了っと』

『あの……霊夢さんに何をしたんですか……?』

『記憶を消した。と言ってもここで起きた事だけだよ』

『記憶を消したって……!なんでそんな事するんですか!』


 菫子は思わず叫ぶが八雲は声の調子を全く変えず答えを言う。


『元々こっちの問題で巻き込んだからあまり強くは言えないんだけどさ、私としては私達がいた(・・・・・)という事実を知られたくないのさ』

『……どうしてですか』

『お前だから教えてやるけども、私達はイレギュラーに対する対イレギュラーの存在でね。バランサーとして動いているんだが……今回は少々欲をかき過ぎた。反省しなくちゃあね』

『イレギュラーに対する対イレギュラー……?』

『その通り、目には目を歯には歯をイレギュラーにはイレギュラーだ。そして私達は表に出るべき存在じゃあない。特に私と妖夢はな』

『それは幻想郷の賢者だからという意味って事ですか?それに妖夢さん?まで賢者には見えないのですが……』

『言ったろう?対イレギュラーだって。そして私達はイレギュラーだからこそ表には出られない。お前と似たようなもんさ』


 いまいち要領を得ない答えに菫子は頭をフル回転させながら会話を続けようと試みる。


『似たようなって私と八雲さんに共通点があるんですか?』

『だってお前……幻想郷の人間じゃないだろ?外の人間だ』

『……!』


 菫子は八雲に幻想郷の住人じゃない事を看破されてしまい驚きを隠せずにはいられなかった。


『時間もないからここで選択をしてもらう』

『選択?』

ここ(幻想郷)に残るか、あちら(外側)に帰るか。だ』

『戻れるんですか!?』

『お前のそれは夢幻病と思うんだが……お前の体はここにはないんだろ?』

『え、ええ。その通りです。けど本当なら私が目を覚ませば戻れるんですけど戻らなくて……』

『誰の仕業かは分からないが結界が強固になっていてね。内側からも外側からも干渉出来ない。まさに籠の鳥って訳だ』


 それはともかく、と八雲は一区切り入れる。

 八雲は再度菫子に選択を迫った。


『ほ、本当に帰れるんですか……?』

『ああ、お前の他にも別の幻想郷に帰してやった事もあるぞ?えーっと、さとう……なんだっけ?こうすけ?なんか太った奴だったんだけどー』


 八雲はうーん、と悩んでる。


『ま、人の名前を覚えるのが苦手だからしゃーない!とにかく外来人を元の場所に戻す事ぐらいは造作でもないさ。さぁ、どうする?』


 菫子は悩んだ。

 菫子の通っている学校は冬休みはあまり長くない為、正直いって長居は出来ない。

 けれど、菫子は妹紅の事を思い出した。


(そうだ……。私はあの子を……)


 返事を待っていてくれている八雲に菫子は言った。


『八雲さん』

『ん?』

『私はここに残ります。私は……この異変を見届けたいんです』

『……なるほど。うん、分かった。お前がそう言うならそれで良いさ。ただし、条件がある』

『条件ですか?』

『私達の事は誰にも口外しないでくれ。誰にも、だ』

『はい。約束は守ります』


 菫子の言葉に八雲は頷くと空間を、いやスキマを開く。

 八雲は懐から何かを取り出し、菫子に放り投げた。


『そのペンダントをやるよ。何かあったらそのペンダントに霊力を込めるといい。それじゃバイバイ〜』


 八雲に続き魂魄、僧はスキマに入っていきスキマは閉じた。

 菫子はペタンと尻餅をついた。


『疲れたぁ……』


 やがて菫子は霊夢を起こさないように亀に乗せると立ち上がり、神社に帰るために歩き始めた。

やっと三章終了しましたね〜

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