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幻想異変録  作者: 凍曇
3章 争奪戦
34/151

34:逃走劇

 意思の伝達とは簡単に出来る。

 意思の伝達とは言葉だけでなくとも可能である。

 それは行動や性格を知ることによっても何を考えているのか分かる事も可能だ。

 たとえば、自分の好みを相手に伝える。

 相手は自分の好みを理解して自分という存在を確立させていく。

 そう、理解してくれる事によって。

 ここで最初の言葉を思い出してみよう。

 意思の伝達とは簡単である。

 もしも、サンジェルマンの情報を相手に伝えればそれはきっとサンジェルマンを理解した(・・・・)という事になるのだ。


『この結論は強引かもしれないがあいつの正体は意思(・・)だ。バグと言い換えてもいい。あいつを理解した時点で既に汚染される。全くもって珍しいやつもいたもんだよな。 希代の魔術師とはよく言ったもんだよ』


 洞窟ではその声を静かに聞いている人物が何人もいた。

 その声の主である女性は金色の髪を静かに揺らしながらゆっくりと立ち上がり、出口に向かって歩を進める。


『私は言ったはずだ。どんなものを犠牲にしてでもウズメを取り返す。それが、里の人であれ私であれ…』



 霊夢達は少しずつ焦り始めていた。

 何をすれば良いのかが全く分からない為である。


『相手が何もしてこないのがかえって不気味ね…』

『……チッ。逃げるぞ』

『やっぱりそれしかないわよね!』


 霊夢はいつのまにか近くにいた亀に乗り空を飛ぶ。

 菫子もそれに続いて能力で浮遊する。


『なんじゃ!?亀は飛んどるし、嬢ちゃんも飛べたのか!』

『その話は後で!あなたは逃げる手段あるの!?』

『もちろん……っと!!』


 僧は一度しゃがむとそこから飛び跳ねて屋根に着陸する。

 そのまま僧は屋根から屋根へと飛び移りながら霊夢達に呼びかける。


『急いで逃げるぞ!まず我の仲間と合流する!そうすればなんとかなるかもしれん!』

『取り敢えずあの僧についていく方が良さそうね!』

『は、はい!』


(これであのサンジェルマンとかから逃げられれば嬉しいんだが…ま、十中八九無理じゃろうな。1番面倒なのは我が里の人を傷つけるという行為を取ることじゃな)


 僧は屋根から下を時折見ながら移動する。


(茶屋では気絶させるだけで済んだが次からはそうもいくまい。であればいざとなったら八雲に頼るのが最終手段かの…)


 僧が思案にふけっていると後ろから声が響く。


『ちょっとアンタ!避けなさい!!』

『あん?……ってうおおお!!』


 突如として黒い渦が目の前に出現して僧を巻き込もうとしていた。

 僧はとっさに横に飛び、屋根から地面に落ちる。

 黒い渦はそのまま飛んでいき、やがて見えなくなった。


『危ないのう…!』

『逃すと思いますか?』

『しつこいやつじゃ!これでも食らえ!』


 僧は口から霧を吐き出す。

 あっという間に辺りは霧で包まれ視界が白くなる。

 空を飛んでいる霊夢達も例外ではなく、霧に包まれて身動きがとれなくなる。

 しかし。

 菫子は霊夢と亀を抱きかかえるとまるで見えているかのように移動を始めた。


『ちょ、アンタもしかして見えてるの!?』

『ええ!私の能力で透視が出来ますので大丈夫です!』

『あの僧はどうするの!?置いていっても良いのかしら!』

『はいはい?呼んだかの?』

『……!!??』


 気づくと霊夢の隣には僧が飛んでいた。

 霊夢は驚きながらも僧に話しかける。


『アンタ飛べたのね…』

『これは我ではなく、そこの嬢ちゃんが不思議な力で我を運んでるみたいじゃぞ』

『はい、私の念動力で今運んでいます』

『はー…。アンタ凄いのね〜見直したわ菫子』

『そりゃどうもです。けど全く見つかりませんね…』

『うーむ…。困ったのう』


 3人の逃亡劇はまだまだ続くのである。

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