30:それぞれの動き
『ウズメが消息を絶った』
どこかの洞窟だろうか。
女性の声が反響して周りにいる人物達に声がしっかりと届く。
『おや、彼女は確か守谷神社を潰す為に行動していたのでは?』
フードを被った青年が出っ張っている岩に座りながら女性に話しかける。
女性は青年の言葉に頷きながら話を続ける。
『そうだ。だがウズメは何者かに攫われたらしいな』
『攫われた?彼女が?』
『信じられないがその通りだ。今から映像を見せる』
女性は指でパチンと鳴らすと空間が歪んで映像が浮かび上がる。
『これはウズメの《目》を介して撮られた映像だ。山に入った時点でもう既におかしかったんだ』
映像にはウズメと呼ばれる十二単に似た服装をしており右目の部分にヒビが入った仮面を被った女性が山で立ち往生している。
どうやら結界みたいなものが張られているいるらしい。
時折轟音など響いておりますます見ているこちら側は混乱する。
『何者かが山に結界を張るように指示したという事ですか?』
『みたいだな…。ここからが敵のお出ましだ、よく見てろ』
ウズメは取り敢えず山から離れようとしたのか動き始めるその時、目の前の空間が割れていた。
そこから出てきたのは異常なほど大きい大剣の様な武器を片手で引きずりながら般若の面をつけた長い黒髪の人物だった。
そして一瞬に映像を真っ暗になった。
つまりここで目を閉じたか、あるいは強制的に意識を落とされたという事だ。
『こいつがウズメを攫った犯人だ』
『…それでどうするんですか?』
『ウズメを取り返す』
女性は洞窟の影からゆっくりと出てきた。
金色の長髪を後ろで結んでおり、ラフな格好をしている。
『多少の犠牲はこの際どうでもいい。どうにかしてでもウズメを取り戻す』
『誰が行くんですかね?』
『サンジェルマンとお前で行けパーン』
『あらら、サンジェルマンはともかく私も行くんですか?本体で?』
『どうせ分身だとそこらの奴にやられるんだろ。ならお前が行った方が手っ取り早い』
仕方ないですねぇ。と呟くとパーンは立ち上がる。
気づくとパーンの後ろには老人が立っていた。
『相変わらず気づくとあなたはいますねサンジェルマン』
『まぁ、影が薄いのはもう気づいてるから…』
パーンは洞窟から外に向かい歩き始める。
それに続いてサンジェルマンもパーンの後を追う。
『それじゃあ争奪戦しに行きますか!』
『嬢ちゃんを助けるために私も一肌脱ごう』
-???-
『おーい、八雲ー?』
幻想天狗が襖を開けるとそこには椅子に座ったまま読みかけであろう小説を顔に乗せて寝ている八雲がいた。
『あらら、寝とるわこいつ』
幻想天狗はフッと微笑むと部屋から出る。
襖を閉めた後廊下を歩きながら誰もいないのにどこかに喋りかける。
『藍、今回は我が出る。ついでに魂魄の嬢ちゃんも借りてくからの』
ー私は構いませんがご主人様が出る予定では?
どこからともなく女性の声が響いてくる。
『あいつは寝とるから寝かせておけ。普段から寝とらんのだからこういう時ぐらいはそっとしておけ』
ー了解しました。それではお気をつけて幻想天狗様。
『おう、さて争奪戦かの』
幻想天狗は獰猛な笑みを浮かべていた。




