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幻想異変録  作者: 凍曇
2章 天狗の山
27/151

27:失踪

 霊華は寝室で神奈子と諏訪子を診察していた。

 もはや忘れられているかもしれないが霊華は医者である。


『うん、異常はないかな』

『刀傷が深そうに見えるけど』

『大した出血はしてないよ、手加減されてる』

『ふーん…益々あいつが何したかったのか分からないわね』


 そう言いながら紫と霊華は部屋から出ようと障子を横に移動させると目の前に幻想天狗がいた。


『ぎゃぁぁああ!!』

『うわぁぁぁあ!!』


 霊華は突然目の前に顔があったので驚き、その反応にビックリし幻想天狗も大声をあげてしまった。


『突然目の前に出てくるなよ…ビックリしたじゃないか…』

『そんな事言ってる場合か!これを見ろ!』


 幻想天狗は紫と霊華の前に小さくなった早苗を突き出す。

 霊華は目を丸くし、紫は…。


『お前が犯人かぁぁあ!!』

『違いますっ!!!』


 しかし幻想天狗の必死の抵抗も虚しくゆかりんパンチが幻想天狗の顔にめり込む。


『どぅどぅ落ち着け紫』

『顔がめり込んだ…前がまったく見えん…』


 幻想天狗は片手で顔をペタペタ触っている。

 紫はハッと我に返りとりあえず落ち着く。


『いや、あのですね…我も何が何やらで…赤い雪かと思ったらなんか破裂しおるしこの子は小さくなりおるし…我も混乱してるんじゃが…』

『赤い雪…?まだ活動してたの…?』

『それでえーっと…我はどうすれば?』

『んー…とりあえず状況整理をしたいから居間に行こう』

『神奈子達はここで寝かせておいて良いの?』

『大丈夫だと思うよ、少し寝かせておけばすぐに回復するさ』

『なら良いけど』


 そう言いながら紫と霊華は寝室から出て廊下を歩こうとするが幻想天狗がいないことに気づき紫が寝室に顔を覗かせる。


『ちょっと、あなたも来ないと話に…』


 紫が寝室を覗いたまま固まる。

 霊華は不審に思い紫に話しかける。


『どうした?』

『……い』

『え?』

『誰もいない…?』


 紫の言葉を聞いて霊華は急いで玄関から外を覗く。

 霊華の目の前に広がっている光景は何もない普通の光景(・・・・・・・・・)だった。


『…あ?』


 おかしい。

 何もないわけがない(・・・・・・・・・)

 何故なら戦闘の際に霊華が最後に拳で地面を割ったはずなのに何事もなかったかのように戦闘の傷跡が何一つない。

 ただ普通のどこにでもある神社の庭しか広がっておらず雪が降っているだけである。


『どういう事だ…?』


 霊華は紫の方に一旦戻るが紫も難しい顔をしていた。


『周りを見て回ったけど誰もいなかったわ』

『こっちも異常事態だ。外を見たんだが雪が降ってるだけで普通の庭に修復されていた』

『修復…?』

『ああ、戦闘の際の被害が消えている。跡形もなくな』


 霊華と紫は狐に包まれたような気分だった。

 まるで本当に何も無かったかのような錯覚を覚えずにはいられない。


『なんなんだ一体…』


 霊華は呟くが紫も難しい顔をするばかりで返事は返ってこなかった。

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