26.決着と別な意味での衝撃
幻想天狗は混乱していた。
幻想天狗は万全な状態で霊華の攻撃を対処しようとしていた。
そのために本気で、全力で、力を惜しみなく出したつもりだ。
なのに、なのにだ。
なぜ目の前の景色が180度回転しているのだろうか?
『え…?こ…れは…?』
早苗はいつのまにか浮いていた。
紫も同様である。
しかし、紫はあまり動じた様子はなくむしろ慣れている感じで自由に動いている。
『これが霊華の「夢想封印」よ』
『夢想封印ってあれですか?霊夢さんが使ってる後ろからブワーって出てくる…』
『そうよ。霊夢の場合は追跡型の強力な霊力の塊で他にも色々と能力はあるけど…』
『け、けどその霊華さん?の夢想封印は全く違うような気がするんですが…?』
『霊華の夢想封印は領域よ。範囲は分からないけど発動したら最後、解除されるまでその効果範囲では通常の法則が効かなくなるの』
『…つまり?』
早苗はその意味を分かっていながらそれでも紫に答えを求めた。
これは確認というよりも確信を得た問いであった。
その問いに紫はハッキリと答える。
『領域内では彼女がルール。彼女が思うがままにルールを作り支配するのよ』
幻想天狗は地上に落下していく。
(なんだこれは!なんだ!なんなんだ!?)
幻想天狗は混乱しながらもなんとか空中に留まろうとするがまるで最初から羽が無かったみたいに羽がピクリとも動かない。
幻想天狗が霊華を視線の端で捉えた瞬間にはもう目の前にいた。
『夢!』
霊華は足で幻想天狗を蹴り上げ空中に無理矢理飛ばす。
『想!』
回し蹴りで次は横に吹き飛ばす。
『封!』
そしてかかと落としで地面に幻想天狗を叩きつける。
『印!』
力を込めた渾身の拳を最後に振り下ろす。
あまりの衝撃に地面がどんどんひび割れていく。
それと同時にものすごい砂煙が吹き荒れた。
『…すごい』
早苗は思わず呟いてしまった。
早苗は自分が震えている事に気づくと自分が尻餅をついている事にも気づく。
『あれ?解けた…?』
数秒して砂煙の中から霊華が気絶した幻想天狗を肩に担いで歩いてきた。
紫は急いで霊華の元に駆け寄ると心配そうな顔で話しかける。
『…大丈夫?』
『大丈夫だよ、心配性だなお前は。しっかり3分のうちに終わらせただろ?』
霊華は微笑みながら紫の髪をわしゃわしゃする。
チラホラと雪が降ってきた。
霊華は銀色に染まった雲を眺めながら言った。
『こいつどうすんの?』
『私に任せてください。彼女には聞きたいことが沢山あるので』
『あ、そう?それじゃあ私達はどうしよっか紫』
『そうね…冷えてきたし守谷神社で少し暖をとりましょう霊華の体の具合も気になるし』
霊華は神奈子と諏訪子を両脇に抱えるとそのまま守谷神社に行く。
そして雪が強くなってきているここにいるのは気絶した幻想天狗と早苗だけだ。
早苗は倒れた幻想天狗の近くにしゃがみ能力を使うと幻想天狗の傷を癒し始めた。
程なくして幻想天狗はう…、という呻き声とともに意識を取り戻す。
『…良いのか?我は敵じゃぞ?』
『幻想天狗さん…どうしてわざんざこんな手間暇かかる事をしたんですか?』
『手間暇か…なんじゃバレておったか』
『私が作った式神は私と感覚共有をしていますから、それで分かりました。あなたは私達を殺す気もなければ倒す気もない。遠くから雷が落ちたのを見ましたが雲の量の割には少ししか雷を落とさないんですね』
『…。それもバレておったか』
『あなた本来の目的は一体何なんですか?』
幻想天狗は倒れたまま雪を見ている。
上を向いたまま早苗に向く事なくポツリと話し始めた。
『時間稼ぎじゃよ。友人に頼まれてな…んん??』
『どうしたんですか?』
突如幻想天狗が目をこすりながら早苗の後ろを凝視している。
幻想天狗が凝視していたものは赤い雪みたいな何かだった。
最初は目に血が入って赤く見えているだけかと思ったが他の雪は普通の雪にしか見えない。
そして幻想天狗は目の前の巫女に聞いてみる事にした。
『なぁ…あれはなんじゃ?』
『あれ?あら本当何この赤ぶ!?』
早苗は幻想天狗が言っていた何かを見つけ眉をひそめた瞬間突如赤い雪は早苗の顔面で破裂し煙を吐き出す。
あまりの出来事にあの幻想天狗も目をパチクリさせていると目の前で煙を浴びた巫女の姿が消えた。
幻想天狗は驚いて体を無理して起こすとあることに気づいた。
そう。
早苗は消えていたのではなく、小さくなったから仰向けの状態から見れなかったのだ。
そして目の前にいるのはさっきの巫女の服をブカブカだか着ている子供が一人。
幻想天狗はんー、と唸って上を向く。
そして。
『いや、なんでだぁぁぁぁ!!!?』




