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幻想異変録  作者: 凍曇
2章 天狗の山
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19:幻想天狗

『これより山を封鎖する。これは大天狗直々の命令だと思え』


 大天狗は様々な天狗の長を集合させると発した言葉の第一声はそれだった。


『ふ、封鎖ですか…?しかしそれは…ちょっと…』

『なんじゃ何か不満でも?』


 大天狗がジロリと睨む。


『い、いえ!何でもございません!』


 天狗の長達は大天狗が本気だという事に気付いた。

 大天狗からの命令は絶対。

 逆らう事はつまり天狗としての意味を失くす。

 それぐらい歪な社会が築きあげられている。


『では散れい!』


 大天狗の号令で天狗の長達は急いで持ち場に戻る。

 大天狗が一人になるとしゃらん…と音が聞こえた。

 大天狗が振り向くとそこには笠をかぶり錫杖を持った女性が立っていた。


『なんじゃ天狗の長達はあんなに腑抜けなのか』

『はっ…申し訳ありません』


 大天狗は冷や汗を心中でかいていた。


(この方はそこにいるだけで凄い圧だ…!)


『ふぅむ…お主もそうじゃが大天狗っていうのはどういう理屈でなっておるんじゃ?力の優劣か?』

『はっ…あなた様の…』

『よい、魔縁なり天魔なり好きに呼ぶがよい。元々天狗に区別はないがここまで多いと区別もたいへんじゃからな』

『失礼な事をお聞きしますがあなた様が天狗になる前の本来の名前などは…?』

『うん?そうじゃなぁ…名前か…うーん、何千年も前の話じゃからなぁ…』


 天狗である女性は腕を組んでうーんと悩んでいる。


『そうじゃな、我の事は幻想天狗のとでも呼んでもらおうか』

『幻想天狗ですか…』

『鞍馬天狗にしてもそうじゃが自分が住む土地の名前をつけて呼ぶのが昔の区別の仕方じゃしな』

『ではこれからそう呼ばせていただきます』

『うむ、してさっきの話の続きじゃが…ん?』


 幻想天狗は周りをキョロキョロ見渡す。

 何事かと思ったのか大天狗は幻想天狗に話を聞こうとする。


『あの…どうかされましたか…?』

()られておるの。はてさてこの類は千里眼じゃな?』



-守谷神社-

『…嘘!』


哨戒天狗が叫ぶ。


『どうしたんですか?』

『千里眼が見破られました!早苗さん急いで子供達の逃走準備を!』

『ッ!りょ、了解!』


 早苗は急いで子供達がいる部屋に行くと部屋にいる他の鴉天狗に呼びかける。


『皆さん!手筈通りにお願いします!』

『分かりました!さ、皆おいで!』


 鴉天狗達は子供達を抱えると羽を広げ裏口に飛んで行く。



-総本山-


『ふーむあれが噂の最近引っ越した神社か』

『あ、あの一体何が…?』


 大天狗からしたら突然幻想天狗が何かに気づいて一人でぶつぶつと言っている風にしか見えない。


『なんじゃお主、千里眼も使えんのか』

『は…え…?それは哨戒天狗だけでは…?』

『哨戒天狗…?また変な名前の天狗が…。まぁ良いお主と今喋ってる時ではないわい』


 幻想天狗はそう言うと黒い羽を背中から生やす。

 大天狗がそれを見て呆気にとられてると幻想天狗が大天狗に向かって話しかける。


『急いで結界を張っておくようあの無能な長どもに言っておけ!』


 幻想天狗は大天狗が急いで頷いたのを確認すると目にも留まらぬ速さで飛んで行った。


『ちょうど良い。我も仕事を課せられていたしなぁ…さっさと終わらせておくかの』


 幻想天狗は凄惨な笑みを浮かべると守谷神社を目指し速度を上げた。


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