18:天狗
『あやや、これはこれは…』
そう呟いたのは天狗の妖怪「射命丸文」である。
そして文の目の前に広がる光景は小さい天狗の子供達が文の自室で寝ているのである。
文は天井を仰ぎ見ると呟いた。
『早苗さんに相談しましょうか…』
-守谷神社-
『はぁ…それで私の所に来たと』
『ええ、まぁ…』
『そんなの自分のとこでちゃんと世話しなさいよー』
帽子を被った子供みたいな女性が文に文句を言う。
みたいな、とは見た目は子供に見えるがその実何百年も生きている神様だったりする。
その神様の言葉に文は萎縮しつつも言葉を返す。
『諏訪子様の仰る通り私も最初はそう考えたんですが今の山だと少し危ないかと思いまして…』
『山が?おやおや、それは一体どういう意味だい』
文の言葉に反応したのは諏訪子の隣で胡座をかいていた彼女もまた神様であり、諏訪子と年もどっこいどっこいである。
名前は「八坂神奈子」
諏訪子は見た目は子供だが神奈子はしっかりとした女性という見た目であり、威圧感も滲み出ている。
『は、はいそれがですね…皆さんは我々天狗の社会の仕組みは分かりますよね?』
『えーっと色んな天狗がいてその天狗の種族によって地位があり、上の命令は絶対ですよね?』
『はい。早苗さんの言う通りでその天狗の頂点に立っているのが大天狗様なんですが…』
『その大天狗がどうかしたのかな?』
『最近大天狗様の様子が変と言いますか…』
『要領を得ない言い方だねえ。もう少し詳しく言ってくれないかい?』
神奈子がため息をつく。
文は何かを言い淀んでいたが神奈子の言葉で決意を決めたのか真剣な顔つきになると言葉を紡ぐ。
『どうやら大天狗様の上が存在したそうなんです。それでその上の天狗が現れて仕切り始めたんですよ』
『あれ?でもさっき天狗の頂点は大天狗って言ってなかったけ?』
文の言葉に諏訪子は首を傾げる。
『そのはずなんですが…天魔の鬼と名乗る天狗らしいのですが…』
『天魔の鬼!あっはっは!その言葉を聞くのは何年振りだろうな!?』
『か、神奈子様?何か知っているのですか?』
『ああ、天魔の鬼とはな天狗そのものよ』
『神奈子、分かりやすいように説明して』
『簡単に言えばあれだ、人から天狗になったやつのことを天魔の鬼、もしくは大魔王とか呼ばれるんだよ』
神奈子はあっさりと恐ろしい事実を言う。
『ひ、人からですか…?それに大魔王というのも言い過ぎじゃあ…』
『そうか?まぁ確かにその天狗が現れたんじゃあ大天狗も分が悪いな』
『そ、そんなに凄い天狗なんですか?私も天狗ですが天狗の良いところなんて自分で言うのもあれですがあまりないですよ?』
神奈子は欠伸をしながら説明を続ける。
『そもそもお前らのせいで天狗の存在が勘違いされやすいが本来天狗っていうのは人間からなった妖怪だからな?』
『『え』』
早苗と文は神奈子の言葉に信じられないという風な顔をしている。
『ま、私としてはなるべく関わりたくないね。お前もあまり関わらないようにな』
『は、はぁ…』
『あの子達は私達がちゃんと預かっているので安心してください』
『早苗さんがそう言ってくれるなら安心ですね』
それではこれで、と言い残すと文は外に出て目にも止まらぬ速さで消えた。




