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幻想異変録  作者: 凍曇
9章 雪山にて
118/151

118:魔法使い誕生

 霊華は思わず回避しようとするが間に合わない。

 椛は確実に当たる!と思った。

 だが、


『ぐぎぎ……』

『……マジですか』


 霊華は刀を口でキャッチし、歯で無理矢理抑えていた。

 呆気にとられた椛は数秒思考が停止する。

 その瞬間に霊華は顎に力を込めて刀を噛み折る。


『……っ!』


 椛は刀を投げ捨て後ろへ一歩下がる。

 すると椛の影だけはその場に残り微動だにしない。

 椛が動かない自分の影を踏むと、まるで影は水面のように揺れて椛を飲み込む。


(消えた!いや、違う、影か!)


 霊華はすぐさま椛の影から距離をとろうとするが、影が突如形を持って霊華の足を貫く。


『なっ……!』


 すぐさま霊華は影を掴むと影はパキリとひび割れた音をだして消失する。


(能力は通じてる。となるとやはりこの影はなにかしらの能力で実体があるということだ。……主格はあの人間だな)


 トプンとまた水が跳ねたような音が聞こえてきた。


『後ろか!』


 振り向きざまに神速の拳を放つ。

 拳には風船を割ったような微かな感覚、それもそのはず、霊華の影から出てきた一条はまるで水風船みたいに体が破裂し下半身だけが残る。


 だがそれもつかの間、すぐに再生した一条が霊華の腕を掴む。

 霊華は腕を持ち上げるだけで一条の腕ごと捥ぎ取った。


 今繰り広げられたこの闘争は数秒で起きたことである。

 どう見たって霊華の圧倒的な力に椛達は負けているように見えた。

 だが、そんな状況の中、一条は口元を笑みで歪めていた。


俺に触れたな(・・・・・・)?』


 その時、また突然出現した椛が半分折れた刀を霊華の肩に後ろから突き刺した。

 霊華は反撃をしようと思ったがいつのまにか身体中に赤い鎖が巻き付けられており身動きがとれなかった。


 椛は霊華が動けないと判断したのか背中を見せて一目散にその場から逃げ出す。

 その際に、


『一条!言われた通りにやったぞ!』


 そう叫んだ。


 その言葉に霊華は困惑する。

 奴はどこに向けて喋った?

 一条とは今私の後ろにいる男のことではないのか?





『……人は夢を見る』


 遠く離れた場所で一条はそう呟く。

 すると一条の髪が伸びてきて腰あたりまでどんどん伸びてきている。

 それに合わせてか、一条の右手にある文様が紅く輝き少しずつ体を覆っていく。


『夢は人を魅了し、人は夢を渇望する』


 一条の髪はある程度まで伸びるとそれ以上変化は起きなかった。

 その様子を見ていた者は2人いた。

 現実では視認される事はない、魔法使いと吸血鬼だ。


『……よくパチェの魔術回路をそのまま譲る気になったな』

『譲ってなんかないわよ。これは継承っていって……簡単に言えばコピーみたいな感じね』


 基本的に不老であり何かが起きない限り死ぬ事もない魔法使いだが、魔法使い達には共通点がある。

 それは魔力容量と魔術回路である。


 魔力容量とは文字通り自身の魔力量の事を指す。

 魔法使いによって様々ではあるが、長生きしている魔法使いは基本的に魔力量が圧倒的に多いためそこまで重要視されてはいなかったりするのだ。


 では魔術回路とは?

 魔法使いが体内に持つ、魔術を扱うための擬似神経である。

 あらゆるものを魔力に変換する為の「炉」であり、基礎となる魔法に繋がる「路」でもある。

 魔法を電気とするなら、魔術回路は電気を生み出すための炉心であり、魔力を精製する為のパイプラインでもある、魔法使いには必ずかかせない代物である。


 ちなみに魔術回路は基板みたいな物をイメージしてもらえると分かりやすいかもしれない。

 何もない基板に魔法使いは様々な学んだ、もしくは作った魔法という配線を作ってゆく。

 そして、その基板は配線により「回路」となる。

 その魔法使いが覚えている魔法の数、種類によって魔術回路は様々な形へと変わっていく。


 例として魔理沙は基本的に光と熱の光線魔法を得意としているため、かなりの偏りがある。

 もしも魔理沙が他の系統の魔法を使うとなればかなりの時間を必要とする。

 新たに配線を組む必要があるからだ。


 ちなみに、一から魔術回路を作る場合、時間ではなく年月を必要とする。

 だからこそ魔法使いは不老となる必要があったのだ。


 やがて自分で限界を覚えた魔法使いはある悩みに帰結する。

 それは、「これ以上魔法を知る事は出来ても理解する事は難しい、私ではこれ以上魔術回路を作るのはもう無理だ」と。

 そうして悩んだ魔法使いはやがて弟子をとり、その弟子を魔法使いに育てていく過程で自身の魔術回路を継承させる。


 継承、つまり自身の魔法の知識を教えるという事である。

 そのため誰にでも継承出来る訳ではなく、魔術回路が複雑であればあるほど継承する側はそれを理解する為の理解力が必要となってくる。

 その上、ただ継承するだけでは意味がない。

 継承された側はその魔術回路をより一層複雑化し、師から受け継いだ魔術回路を進化させなければ継承させる意味がないのである。

 なので弟子は師匠を越えることが第一目標とされている。


 パチュリー・ノーレッジの魔術回路となればかなりの高度な複雑さである。

 それを一条が難なく継承した、その証が右手の甲にあった文様である。

 並みの魔法使いからしたらそれは驚愕の事実だろう。

 まだ少年であるというのに、パチュリーの100年以上の知識を全て理解したという事になってしまうからだ。




 つまり、事実上ここに、パチュリー・ノーレッジの魔術回路を継承した新たな魔法使いの誕生である。

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