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幻想異変録  作者: 凍曇
9章 雪山にて
114/151

114:最強最悪の敵

『ちょ、ちょっと!天人様が動かなくなったんだけど!?』


 そう叫ぶのは針妙丸だ。

 針妙丸の目の前にはうなだれたまま動かない天子の姿があった。

 だがその光景を見ても魅魔は特に驚かず針妙丸に説明する。


『気にするな、気を失ってるのと同じ様な感じだよ』

『……?つまりどういうこと?』

『そこの天人の魂が一条に憑依してるって思ってもらって構わないよ。厳密には違うけど』

『な、なるほど……?』






『自分で引き起こしてなんだけど凄い雪崩ね……』

『年がら年中雪が降ってますしね……。というか本当に一条ですか?口調と雰囲気バリバリ変わってますけど』

『もちろん一条よ(嘘)私は私よ』

『へー……』


(絶対一条じゃないな……。誰だろ……もしかして多重人格だったりするのかな……)


『そんな事より私も後5分ちょいしかないの。早めにぶっ潰すわよ』

『……了解です』


(男の声で女口調ってなんか気持ち悪いな……。早く元の一条に戻らないかな……)






 霊華は雪崩後の雪から這い出てきた。


『思ったよりいいダメージだった……。手練れがいるな……』


 霊華は体の雪を払いながら敵を見定める。

 

『たしかあっちから攻撃が飛んできたはず……』


 そう言いながら霊華が移動を始めようかとした瞬間辺り一帯が突如暗くなった。

 上に何かいる。

 そう思い霊華が上を向くと、


『覚悟!』


 緋想の剣を携えた一条が上から降ってきた。


『遅い!』


 一条が緋想の剣を振るうよりも先に霊華が回し蹴りを一条の体に当てる。

 一条はとっさに左手でガードしたがそれも虚しく真横に凄い勢いで吹き飛ばされていく。


(……硬いな。人間かと思ったが違うのか……?いや、だが気配は……ん?さっきとは別の気配だと……?)


『……何なんだアイツ……?』





『……っ!なんつー蹴りを放つのかしら……』


 脇腹がジクジク痛む。

 だがそれだけだ。

 まだ戦える、まだ一条の力になれる。


『もう3分もないかしら……何にせよ次で最後ね』


 一条は唾液混じりの血をプッと吹き出す。

 そして緋想の剣を突き出すように前に構える。


『……緋想の剣よ』


 一条が呟くと一条の周りの天候が霧へと変わっていく。

 足元の雪も霧へと変わっていきどんどん雪は消えて霧が凝縮されていく。


『もっとだ……もっと萃まるのよ……!』


 ついには一条の周り全てが霧となってしまった。

 そしてその霧は緋想の剣へと萃まっていく。

 やがて、一条は力を込めて名を叫ぶ。


『全人類の緋想天!!!』






 霊華は確実なトドメをさすために一条の吹き飛んだ先へ向かって駆けていた。

 その途中で霊華は気づいていた。

 この胸騒ぎはきっと何か起きるに違いないと。


『"能力"を使用すべきだな』


 そう呟くと同時に霊華は気づいた。

 いつのまにか雪が降っておらず地面も雪に埋もれてはおらず土が剥き出しになっている。


(何か……何かとてつもない大きな何かが来る……!!)


 そう感じ取り霊華は急いで能力を発動させようとする。


 霊華が能力を発動すると同時に巨大な超高密度の気弾が霊華めがけて超高速で激突され炸裂する。

 ゴォォォォン!!!と響く音に大気を震え、地面を揺れ、景色を真っ白に塗りつぶされていく。

 

『やった……!』


 直撃したのを遠くから見ていた椛が思わず拳を握る。

 確実に当たった。

 しかも先程放ったやつよりも威力は桁違いだ。

 これは確実に我々の勝ちだ、一条の狙い通り5分間で仕留められた!


 なのに。

 なのに!!


『———逃げろぉぉぉぉ!!!!』






『何叫んでるのかしら……?逃げろってどういう……』

『隙だらけだぞ童』

『……っ!!』


 一瞬だった。

 勝ちを確信して油断したその一瞬にヤツは私の後ろにまで移動していた。

 そう、一条の後ろには、無傷(・・)の霊華が立っていたのだ。


(な……なんでよ!?いつの間に!?それに無傷!?確実に当てたのに!なんで!!)


 一条は緋想の剣で霊華を斬り伏せようとするが一条の視界から霊華の姿が消失する。


(消えた!?どこ!?)


 1秒に満たない僅かな時間に考えを巡らせる一条。

 だが一条の考えたことは全て霧散した。

 霊華は一条の懐に姿勢を低くして近づいていたのだ。

 

 間に合わない。

 一条はそう直感した。

 もう目と鼻の先に霊華はいるのだ、どう足掻いたって行動が間に合わない。

 たとえ天子(わたし)と繋がっていて天人の体まで強化されている体とはいえ、あくまで一条の体だ。


 天人として身体能力がそのまま付与された訳じゃない。

 どうしたって、天人もどきなのだ。

 天人のそれとは遠く及ばない。


『———これで終わりだ』


 その言葉通り、嫌なタイミングで一条との接続時間が切れて一条は元の人間へと戻ってしまう。

 魔力もない。

 能力もない。

 ごく平凡の人間だ。


 霊華の拳はその平凡な人間である一条の腹を容赦なく貫いた。

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