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幻想異変録  作者: 凍曇
9章 雪山にて
113/151

113:激突

『さっきの轟音は何?』

『……ふむ』

『ちょっと!聞いてるのかしら!』


 サクヤは声を荒げるとようやく幻想天狗は反応する。


『崩壊期に入る前にも似たような事があったはずじゃ』

『それって前例があるって事?』

『うむ、結論だけを先に言うと結界が破壊された音じゃの先程のは』

『……その言い方だと他にも意味が込められているのかしら?』

『……実行犯はおそらく我を打ち負かした女の武闘家じゃ』

『はぁ!?え、貴女が負けたって……そんなバケモノが侵入したの!?』


 サクヤは思わず椅子から立ち上がってしまい、テーブルに置かれていたティーカップから紅茶が溢れる。


『うむ、緊急事態じゃ。お主と我とで奴を押さえ込みに行くぞ』

『……そうね。けど相手がどこにいるのか分かるの?』

『手当たり次第に探せば見つかる。とにかく奴の攻撃は威力がデカすぎて目立つからの』






『……そうだ、1つ聞き忘れてた。貴方の名は?私の名前は犬走椛です』

『一条です。……突然丁寧な口調になりましたね?』

『いや、本来の口調はこんな感じなんです。敵対者などにはあえて高圧的な口調で会話してるだけであって……』

『ああ、なるほど……。それで今の音が何か分かりますか?怖い顔してましたけど』


 椛は一条の言葉に頷き、説明する。

 先程の音は結界を破壊された音で昔に似たような出来事があった事、そして恐らく主犯の人物は人間だが恐ろしく強いという事を。


『……なるほど。つまり予想外の侵入者って事ですね』

『ええ、本来であれば我々が対応するんですが……今の状態ではやられるだけなので撤退させます』

『……ごめんなさい』

『いえ、仕掛けたのは我々ですし一条が謝る理由はありませんよ』


 一条は自分の体の調子を確認する。

 取り敢えずまだ体は動く。

 マジックアイテムもまだ魔力切れは起こしていない。

 レミリアさんは……俺の体が多分持たないからもう交代は出来ないだろう。


(天子さん達との接続も残り10分ぐらいかな……。長続きはしないから早めに侵入者を倒さないと能力解除されて普通の体に戻ってしまう)


 一条は懐から何枚かのカードを取り出して椛に手渡す。


『何ですか?これ』

『念のための保険です。これを肌身離さず持っていてください。必ず役立つと思うので』

『はあ……』


 次に一条は"眼"で周りを見渡す。


『……何か物凄いスピードで走り回ってる人影がありますね』

『一条も良い目を持っていますね。能力ですか?』

『いえ、体質みたいなものです。私はあくまで無能力者なので』

『なるほど……。さて、では侵入者退治といきますか』

『それについてなんですが俺に案があるのでいいですか?』






 霊華は雪山を駆けていた。

 時折敵かと思われる天狗を見かけたが何故か皆気絶しているか怪我をしているかでそもそも戦える状態ではなかった。


(この山に突入してから大体5分か……。このままなら数十分もあればこの山の制圧も簡単そうだな)


 霊華は途中で足を止めた。

 今いる場所でほとんど地面に雪がなく所々で地面が抉り取られているのを確認したからだ。


(争った痕跡があるな……。しかもついさっきだ)


 霊華が思案にふけっていたその時、椛が何もないところから突如出現して刀を振るう。


『!』


 霊華はすぐに反応し、身を屈めて刀を回避する。

 次に椛は刀を振り下ろそうとするが霊華が足で椛の足を蹴り横転させる。

 そのまま霊華は体制を整えて椛に拳を振り下ろそうとするが椛の姿がないことに気づく。


『消えた……?』


 霊華の思考が一瞬空白になるその瞬間、巨大なエネルギーの塊が霊華に直撃した。

 ズゴォォン!!と雪山に響き渡り、雪崩が起きる。


『どうかしら?』

『直撃しました!急いでここから一時離脱しましょう!』


 一条と椛は要石の上に乗り移動をする。

 そこで椛は疑問に思ったことがあったが口にはしなかった。

 その疑問とは、


(なんで女口調なんだろう……)

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