109:圧倒的な"私"
一条は第2波である矢の雨に対して逃げるのを辞めた。
『風魔「暴威」!』
そう宣言し、一条は掴んでいた杖を真上に振る。
すると風が巻き起こり矢の軌道をずらしていく。
そこからは矢が矢にぶつかり次々と矢は軌道を変えて失速していく。
それでも数が数だけに全ての軌道が変わるわけではなかった。
(隙間さえあれば充分!"眼"で安全圏はもう視えている……!)
一条は安全圏に向かって疾走する。
『一条!インターバル10秒経ったわ!次の魔法も可能よ!』
『了解!』
一条は安全圏に向かい走りながら握ってた杖を背中にしまい別の杖を取り出す。
『矢の軌道を読み込み完了……。逆探知により弓兵の居場所を確認、軸設定完了』
『情報受信完了。軸設定入力確認、いつでもオッケーよ』
『光魔「星降り」!』
一条は杖を先端を地面、もとい雪に叩きつける。
するとそこから丸い光の円が出現する。
数秒も経たず、円から細い光線がまるで噴水のように吹き出し始めた。
一条は安全圏に到達すると光線の噴水を見ながらまだ姿が見えない敵に呟やく。
『さぁ、どう出る……?』
『あいつ魔法使いか……?』
椛は近距離部隊と一緒に侵入者に向かっていながら千里眼で戦況を確認していた。
後1、2分もあれば到着するだろうか、侵入者との距離が近づくにつれて周りの目つきがギラギラとしたものに変わっていく。
(……あの光の噴水。矢を弾き返す為に作ったのか?それにしては矢に殆ど当たらず別の方向へしっちゃかめっちゃかに飛んでいるが……)
椛が噴水について思考を巡らせていると連絡班も兼ねている鴉天狗が大声で叫ぶ。
『おい!長距離部隊が何人かやられたぞ!!』
『……!』
(あの光……矢を相殺したりズラしたりするものではなく元からこれを狙ってか……!?)
『誰でもいい!鴉天狗の誰か!急いで長距離部隊に戻り撤退を指示しろ!全員狙われてると伝えておけ!』
『は、はい!』
『全員武器を構えろ!後数秒で戦闘開始だ!』
椛がそう叫んだ瞬間、槍のような紅い物体が飛来してきた。
椛はいち早く気づき横に飛ぶ。
そしてその槍は誰にも当たらず地面に着弾してしまう。
瞬間、着弾地点を中心に衝撃の波が発生した。
『……っ!!』
周りにいた天狗たちもその衝撃に耐えられずなされるがままに吹き飛ばされる。
椛だけはとっさに盾を後ろに構えて衝撃に耐えるが吹き飛ばされてしまう。
『着弾しましたね』
『これが本来のグングニルの使い方だよ。お前は普通に槍として使ってたが本来は投げ槍なんだ』
『しかもコストが安いから俺でも作れますしね』
『私の力があるからね。お前の体で助けられてる身だ。私の力はいくらでも貸すさ』
レミリアの言葉に一条は微かに笑う。
"眼"で周りを見渡しながら再度手にグングニルを作り出す。
『それじゃあお言葉に甘えてレミリアさん、お願いします!』
『ああ、来るぞ。それじゃあ交代だな』
大量の足音が聞こえて来るのと同時に大量の天狗が一条めがけて襲いかかってきた。
『侵入者め!覚悟しろ!』
『覚悟?覚悟決めるのはお前らの方だ烏合の衆が。私に代わったからには、そうそう勝てると思うなよ?』
一条はグングニルを真上に投げつける。
先程とは明らかに投げる力が強く、ボッ!!と音が遅れて聞こえてくる。
次に一条はその場から飛び上がり、近距離部隊の軍勢に向かい突撃する。
『来たぞぉ!!』
一条は天狗の頭を掴むと勢い任せに振り回して投げつける。
後ろから刀が振り下ろされるが身を捻ることで回避。
両手を地面につけ腕の筋力だけでブレイクダンスのように回転し、足でまず1人顔に踵を叩き込む。
そしてその天狗の頭に足を絡みつかせ巴投げのように後方へ投げつける。
投げつけてすぐに一条は足を地につけ、脚力だけで真横に飛ぶ。
一条が急いで横に飛んだ瞬間、上に投げたグングニルが降ってきて地面に着弾する。
その衝撃に周りの天狗たちは成す術もなく吹き飛ばされてしまう。
『ははははは!!!私の元の体には到底及ばないが足や腕が長いのは良いな!!実に気分がいい!!』
次々と体術とグングニルで天狗達を押し始める。
そんな一条の目は紅く爛々と輝いている。
紅く染まった目はただ獲物を見据えていた。




