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あなた色の出会い

放課後の夕焼け

掲載日:2013/10/08





 教室の窓から見る夕焼け空はなんて綺麗なのでしょう。夕靄もかかって空が燃えているみたい。この色はなんと言えばいいのでしょう。明るいオレンジ色。炎のような緋色。桜を思わすピンク色。暗いところは紫色でしょうか。とても言い表せられません。落ちていく夕日の光が靄を通って優しくにじんで、雲と空を染め上げています。風にゆっくりゆらゆらと流される雲はどこか楽しそうで、地上に注ぐ光の形を変えて遊んでいるようです。わたしはこの時間がたまらなく好きで仕方がありません。木立の影も高層ビルの影も幻想的で、単色で言うならば、赤と黒のコントラストが目に焼き付いて離れないのです。


 そしてわたしはいま1人で教室に残っています。人の多いところは好きではありません。はっきり言って嫌いです。大嫌いです。1人が好きなのです。こうして静かに好きな景色を見ている時間こそ至福なのです。なにも友達がいないわけではありません。お昼休みはお友達と一緒に昼食をとってお話もします。たしかにその時間も大切で楽しいのですが、この時間には負けてしまいます。

 もしもこの場に誰かいたのならば、わたしは頬杖を付きながら潤ませた瞳で夕焼け空を眺めて、そっと微笑みながら囁くように小さく優しい声で「きれい」と呟いて見せて、哀愁を漂わせてみたいと悪戯に思ってしまいました。妄想したわたし自身が恥ずかしくなりました。


 それにしても、ほんとうにこの空は綺麗です。美しいです。わたしの見てきた中でも特に鮮やかで綺麗かもしれません。思わず時間が止まってこのままずっと――なんて考えてしまいます。芸術家ならこの瞬間を描いたり写真に収めたりするのでしょうが、わたしの中では無意味なのです。芸術家の方には失礼なことを言ったかもしれません。訂正します。ただわたしはひとときも目を離したくないのです。ファインダーを通す時間も、キャンバスに色を塗る時間ももったいないと感じてしまうのです。たった一秒でがらりと表情を変えてしまうのがこの空なのです。だからわたしは見逃さずに心の中にこの景色を焼き付けたい。この教室からの景色を独り占めしたい。それくらい好きなのです。


 涙が出てきました。じっと空を見ているとだんだん色が変わってきました。どんどん青みがかっていくのです。この時間ももう終わりを告げ始めたのです。零れるように出た溜息に気が付いてわたしはすぐに手のひらで口を押えました。あぶないあぶない。危うく幸せが逃げていくところでした。

 なんだか切なくなってきて教室を後にすると、隣のクラスの男子生徒が廊下に立っていました。彼は廊下から窓の外を眺めていたのです。せっかくの綺麗な夕焼け空を見ないでどこを見ているのでしょう。窓の外に視線を落とすとそこには公園で遊んでいる小学生の男女がいました。もう帰るのでしょうか、手を振って二手に分かれていきました。それを見た彼は微笑んで窓から離れると振り返ってこちらを見たのです。なぜでしょう、どきっとしました。


「夕焼け空もいいけどさ、その反対側もいいもんだよ」


 そう言って手を振って昇降口のある階段の方へ歩いて行ってしまいました。

 手を振りかえして「さようなら」と口にしましたが、きっと彼の耳には聞こえていないでしょう。

 彼の言ったことがよく分かりません。でも、決して耳から離れていきませんでした。


 わたしは振りかえした手を下げることが出来ず、日が完全に沈むまで廊下に立ち尽くしていました。




 

挿絵(By みてみん)


 読んでいただきありがとうございました。

 小説というよりは台詞文の連続のような感じだったと思います。

 今回初めて挿絵を付けてみました。

 もう一度、読んでいただきありがとうございました。


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― 新着の感想 ―
[一言] 私もよく空を見ます。 雲をみたり、星を見たり……夕日の表現が分かりやすくて、胸に染み込んできました。 最後にイラストが目に飛び込んできたとき驚きました。誰かに描いてもらったのでしょうか。イラ…
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