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27話 覚醒?





27話

覚醒?








(もうだめなのか)



魂を抜かれ続け、意識がが朦朧とした頭で考える。


今から何ができる、どうすれば助かる、死ぬわけにはいかない冷静に考えろ気を落ち着けるんだ俺は死なない。


まだ動く眼球であたりを見回す。


一瞬の光と爆音ののち、頭痛も暗闇も無くなっている。



……ということはだ、なんらかの理由でリッチとマインドフレイアの行動は無力化されていると考えて良い。


幸い、オリシュ達が閉じ込められていた部屋からは10m程離れているため、その"なんらか"の原因には巻き込まれずに済んだようだ。



(……体が動かない。大きな障害は…………左腕は絶望的か)



左腕は腱が切れ筋肉が千切れ、皮が裂け、肩が根元からもげかかっている。


この傷では迅速な治療を行い、高価な触媒と高度な治療術師が必要だ……現状では致命的か。


義手義足、または融合という裏技すら存在する世界だが、たかが一冒険者風情が受けられる施術ではない。



右腕に二本、胴体に三本、両足に一本ずつに首の側面にも一本の触手が刺さっており、触手は一本約三~五cm……つまり体が穴ぼこということだ。


現在進行形で力を吸われ、さらに触手から分泌される筋肉弛緩の効果を持つ毒を体内に直接注入されているため、まったく動くことができない。


例え動けて、この触手を抜くことができたとしても、すぐに治療をしなければ出血多量で死に絶えるだろう。


軽傷治癒を発動しようとするが、現在進行形で力を吸われ続けているため当然発動しない。



(動かせるのは眼球だけ……周りには手持無沙汰なソウルイーターにソウルシーカーがうろついている。


 "隙を見て担いで俺を担いで逃げろ"と命令していたオクラも、隙が無いため行動ができない……仮にできてもここには辿り着けないだろうが)



この吸収行為は、MPが吸いつくされHPまで致命的な域に入ってから初めて、経験値(魂の力)まで吸われることになる。



(しかし不思議な感じだ……これだけの時間力を吸われ続けているのに未だMPすら枯れ果てていないとは)



つまり未だ経験値は吸われていない……のだが、動けない現状時間の問題かと思われた。



(俺は搾取する側の人間だと、奪う側の人間になると誓ったのにこの様だ。


 これ以上に搾取される側になることなんてできるものか……魂すら搾取されるというのか俺は)



「ぐ、ほ」



声すらまともに出ない。


詰んだか、これで終わりなのか……そんな考えが脳裏を過る。



このままコノママ搾取されたまま絞りつくされて死ぬのか、精神的にも身体的にも干物みたいになって死ぬなんて耐えられないありえない。



「ァぐ」



――この"力"は俺のだ、お前らにくれてやるために貯め込んだんじゃない。


――もっと効率よくたくさんの"力"を奪うために貯め込んだんだ、一寸たりともくれてやらない。



ぐいぐいと吸われる力、水流のようなその流れを全力で引き留める、引き寄せて逆流させる。


最初は川に手を突っ込んでばちゃばちゃと水をたたくように、板で堰き止めるように、堤防を作り、ダムを造り。



「グぉあるぁァあああ!!」



力が、力が流れ込んでくるのを感じる。


今まで吸われ続けていた自分のエネルギーに加え、明らかに異質なエネルギー、これは間違いなくソウルイーターのもの。



「GIAA,ZYOGUOOOOOO」



――他者の力を自分に適応させる力や、吸い取る力など人間は持ち得ていない、そう、普通の人間には。


この感覚、味あわせてばっかりで味わったことないだろう?



「せがいに愛されていなぐだってなあ、俺は、お゛れは特別スペシャルなんだよ」



そうだ、たまに忘れそうになるが、俺はスペシャルだ。











――――俺は、マクロなんてものが体に染みついている、融け込んでいる、半人半記号の化け(モンスター)なんだ。










"ポーン"


『******素質項目[早熟]クリア。前提条件[称号"基礎の塊"]クリア。特異状況29による素質項目[吸収]クリア。特殊プロセス発生******』



『特殊覚醒称号を獲得しました』



『"人工生命体/ホムンクルス" 造られし人外。物質を取り込み適合する』



『体質[早熟][吸収][適合]発現。


 能力[都合の良い半身:意識を記号の半身に移すことで、都合の悪い精神異常のみを軽減させることができる]発現』













……そうか、この半身が俺に冷静な思考をさせているのか。


そのまま勢いで、ソウルイーターから搾り取るエネルギーを強引に"力(経験値)"に変えようとするが……。



「お、オげぇええ」



内臓が裏返るような苦痛を覚える。


だめだ、俺の"適合"力じゃ、そこまで"弄れない"。



已む無くそのまま抽出することで、生命力と魔力に変えて強引に体を動かす。



「よごぜ、寄越せよ、その触手と器官ぅ……」



オレガ搾取するんだ。


俺が奪うモノダ。


その機関はオレニコソ相応しい。



歯を剥き出しにしてカブリツク。


ずたぼろになった左腕に触手をねじ込み、触手の根元にあるソウルイーター本体の塊に顔を埋める。



「GYOGUAAAAAA,GU,A,GI……」












"ポーン"


『******体質項目[早熟][適合]クリア。前提条件[称号"超回復"]クリア。特異状況274による素質項目[融合]クリア。特殊プロセス発生******』



『特殊覚醒称号を獲得しました』



『"融合生命体/キメラ" 混ざりし者。他者を取り込み融合する』


『体質[融合][変異]発現。能力[体内操作:自分の体内の、血流や臓器、細胞の動きを任意で操作することができる]発現』





















体中に口があるような感覚に身を任せ、体表から吸収するように、ソウルイーターの能力の根幹となる触手と体核を喰らう。




[融合]発動。


"触手""吸収器官"を取り込みました。



――自分の体の表皮が触手と体核を包み込んだ。



[変異]発動。


取り込んだ器官をオリジナルの体に合わせて縮小変異。


エラー。


エラー。


エラー。


エラー。


対象との細胞の類似性が皆無、変質限界。




――ぐちゃぐちゃと粘土をこねくり回すように、皮膚が、肉が、臓器が変形していく。




[体内操作]発動。


体内の細胞を取り込んだ器官に適合。


エラー。


エラー。


エラー。


対象との細胞の類似性が皆無、変質限界。




――体の中が、自分が自分でないように作り変えられていくような感覚に酩酊感が襲ってくる。



「とりあえず動けばそれで、い゛いっ」




[適合]発動。


体内の細胞、体液を変質適合。


エラー。


エラー。


対象器官は外部からのエネルギー供給で動いているため完全に取り込むことができません。


細胞間の反発が強く長時間の接続はできません。





「が、うえぷっ。まるで、体の機関が増えたみたい、だ、ギ……ぐうぅ」




先程からの異変に気づいたのであろう、ソウルシーカーが俺に群がり、ソウルイーターが触手を伸ばしてくる。



「ちっ」



右腕に辛うじてひっかかっていた荷物を、薬が入った場所を下にして触手に放り投げる。


粉砕した鞄から、真下にいた自分の体に回復薬が撒き散らされる。


[吸収]を発動しながらできるだけ体に浴びるように受け止める。


称号『超回復』なども相まって、少しだけ体力に余裕ができた。



「おおっ、『金剛身』『部位受け』『真剣白羽取り』」



金剛身で衝撃を受け流し。


既に原形を保っていない左腕で部位受けを行い、ちぎれ飛ぶ肉片を引き換えに触手の威力を削ぎ。


右手一本で真剣白羽取り――当然片手では白羽取れないので、攻撃を逸らした――で肉を切らせて骨で攻撃を止める。



――――勢いを削いだそれらの攻撃の全てを、あえて受け入れ、敵の体を自分の体に食い込ませることで、強引にエネルギーを逆流させ奪い取った。



「GIAGAGGUU」


「GOJIJIJIJIJIJIJI」


「O,OOO,OEEEE」



「は、あぁ……これでやっと、経験値にして取り込め、る」



今まで味わうことのなかった感覚に、じたばたびくびくとのたうつソウルイーターは後回しにし、徐々に色薄くなっていくエネルギーの塊のようなソウルシーカー達を手早く取り込む。



通常、レベルが上がるだけの経験値が貯まってもその場で即座に力が急激に上がるわけではなく、少し時間をかけながら体に馴染むように上がる。


格上を倒すことによる、"経験値酔い"なるものがあるくらいだが、今はそんなものを味わっている暇はない。



経験値がごりごりと貯まっていくのを感じながら、[適合]を発動し経験値を強引に取り込む。


そうすることで自分の強さを――存在の格を――即座に上げる。



「っく、ふひはは、力が漲る……」





■レベルが上がりました。 33→71





全身が快感に包まれ、今なら何でもできるという全能感が溢れ出す。


……が、まだ油断はできないと、冷静な半身が囁く。


こちらからも取り込んだ触手を刺し筋弛緩毒を注いではいるものの、ソウルイーターにはまだ抵抗できるだけの体力がある。


念には念を……そしてなにより、早くこの全能感を奮い何かを破壊したかった。



「っるォああああああああああ!!」



『大車輪』→『大車輪:濁流』



右手で水属性の槍を握りなおし、痛みを噛み殺し、全身を捻りながらソウルイーター共の足元を薙ぎ払う――!


莫大な魔力を注ぎ込まれた槍から、驚くべき勢いで水流が発生しその速度は止めようがない。


様々な魔物に寄生したソウルイーターの中には優れた防御力を有する個体もいるのだが、そんなもの関係がなかった。


硬い甲羅に覆われた亀型の魔物の甲羅を粉砕し、頑強な肉体をもつ鬼族の魔物の両足をえぐり、その他雑多とした魔物の足を、四肢を、機動力を奪っていく。





「ひ、っひひはははハハハはは」





抵抗する力を完全に失ったソウルイーターに改めて触手を伸ばし、その身に宿る魂の力を吸い取ってしまう。




■レベルが上がりました。71→84




「これだ、俺の求めていた力……」




背後から、じゃり、と土を踏む音。





「ス、スティル……?」



やっと無駄にふらふらしてた伏線回収。

なんだよ小市民じゃないじゃん、結局チート?

と思われるかもしれませんが、マクロが染みついている時点で普通の人間じゃありえないというのが私の考えです。

わかりにくいけど伏線張ってたんだからね!


考えようによっては無敵じゃね?というような能力ですね。

まあそんなことはないんですけど。


どうして最低でも70の敵をドレインしたのにもっとレベル上がらないの?と思われそうなので先に書いておくと、流石に魔物の吸収器官でもまったく無駄なく吸い取ることは不可能だからです。

自分の生命力、存在の核に合わせる内にどんどんロスしていくので。

この経験値ドレインは結局あれです、めっちゃ効率よくレベル上げ、みたいなものです。



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