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竜を堕とした私は、妹の「生きて」に殺される

作者: mabaru
掲載日:2026/04/23

 強風が吹き荒れる。

 木はなぎ倒され、岩は動き、小石が飛び散って顔を殴る。

 髪が野放図に動き回り、髪留めなどどこかへ飛んでしまった。

 

 目の前に広がる惨状。それは自らが生み出した光景だった。

 竜が墜落し、見える範囲全てが滅んでいる。

 

 これはなんだ。

 私はこんなものの為に生きてきたのか。

 

 そうだ、そのはずだ。

 見ろ。あの無様な様子を。

 私はあの姿を見るためだけに、研鑽をし、全てを費やした。

 

 だから。これは私の望んだもののはずだ。

 

 背後に気配がする。

 私をじっと見つめている、視線。

 振り返るとそこには、懐かしい顔があった。



 ぽちゃん、と水音がして目を覚ます。

 

 天井近く、小さな天窓からかすかに光が漏れている。

 それをただぼんやりと、眺めている。

 冷たい石造りの床が、背中から体温を奪っても今更気になどしない。

 耳元で、かさかさと小さな虫が動く音もする。

 暗く、湿った、かび臭い、牢獄。

 ここに囚われてから、いったいどれほどの時が過ぎたのだろう。

 時間の感覚など、とうに失われてしまった。

 日に数度、申し訳程度の食事が出されるだけで、それもまばらだ。

 粗末な食事を与えることさえ、厭わしいのだろう。

 

 気持ちはわかる。

 だから、それに対する反応はない。どうでもよい。

 もうすでに終わったことだ。

 

 私の人生は、あの時、憎き竜を堕としたときに終わりを迎えた。


 やせ細り、衰えた身体。

 手枷に施された封印で、元あった魔力路は途絶えて久しい。

 もはや見習いの魔術師にも劣るみすぼらしい、惨めな様を、想像して愉しんでいる人間が、この世にどれほどいることだろう。

 その事実にも、もはやなんの痛痒も感じない。


 ただ、

 ただひとつ。

 

 ひとり残してしまった、私の妹。

 彼女のことだけが心残りで、こうして生き恥を晒している。

 最後に「生きて」と願われた。


 彼女以外、世界中の人間が、死を望んだであろう大罪人。

 神にも等しい存在。竜をその手で屠った者。

 

 血の繋がらぬ妹だと、利用できるから一緒にいたのだと、散々と罵ったその張本人に、涙を流し、それでも助命をと嘆願した哀れでかわいい、私の妹。


 そのたったひとつの願いを、叶えるためだけに生きている。


 言うことを聞かぬ体を無理矢理に動かし、這いずり、泥水と一緒くたになった、かびたパンを、もどしそうになるのを堪え、嚥下する。


 少しだけ、生きる執念が湧く瞬間だ。


 それ以外は、ただうつろに、天井を眺めて終わる。

 そしてこれからも、それがずっと続く。

 食べることさえ億劫になったら、それが私の本当の最後になるのだろう。

 少しずつ、色褪せていく記憶。

 妹の、彼女の顔を、声を、忘れていく。


 そうしてまたひとつ、私は、死に近づくのだ。



 この世界では、竜が遠景に見えるなんて、日常のことだった。

 

 小さく景色に溶け込むその姿が、あまりにも遠くてそう見えるだけなのだということを、幼い私は理解できていなかった。


「ねえ、りゅうじんさまが見えるから、明日は晴れかな?」


 そういって母の手を握って、無邪気に笑っていたように思う。

 

 翌日、その竜に村を滅ぼされるとも知らずに。


 一瞬、なにが起こったのか分からなかった。

 遠くから何かが近づいてくるような音がしたと思ったら、突然、音がなくなって、身体を思い切り引っ張られて、ちぎられるような勢いで、放りだされた。

 天と地がひっくりかえり、自分が上なのか下なのか、どこでどうなっているのか、何もわからなかった。どこかしらに強くぶつかり、打ち付け、転がって、ようやく体が止まった。


 いたい、痛い。耳がきいんとする。

 口が、歯がぐらぐらする。土が入ってせき込んで、吐きそうだ。

 頭のどこかを切ったのか血がどろりと垂れてくる。

 手も足も、体中がいたい。

 それでもどうなったのか、霞む目を凝らして、辺りを見渡した。


 そこは知らない場所だった。

 

 いいや、そこは知らない場所ではない。

 よく見ると、近くに見覚えのある川がある。

 あそこで洗濯や飲み水を甕に入れる手伝いをよくしていた。

 だから、目の前にあるのは、私の村のはずだった。

 

 だけど、どこにもない。

 どこにもないのだ。

 さっきまで、家で、母と父と、一緒にいたのだ。

 生まれてくる妹か弟が、はやくでてこないかと、母のお腹にくっついて。

 それで、私はお姉さんになるんだからと、はしゃぎまわって。

 轟音がしたと思った時、母と父が私に覆いかぶさったのだ。


 あそこ、私の家があった場所。

 なにもない。なにも。


 空には、巨大な竜が浮かんでいた。

 その大きな鼻から、ばりばりと、何回もさっき聞いたのと同じ轟音を鳴らしている。


 鼻息だ。ただの鼻息で、村が消し飛んだ。

 

 ふい、と何事もなかったかのように、竜は浮かんで去っていく。

 本当に、何もなかったかのように。


 なんで?

 どうして、私の村はこうなったのだ。

 何か、竜の気に障ることでもしたのか?

 いいや、ちがう。あいつは何も感じてなかった。

 何も、なにも!

 

 私たちが蟻の巣を気にしないように、あの竜も私たちの村を気にしない。

 気づいてない。自分が何をしたのかもわかっていない。

 知ろうともしていない。

 ここに、私の村が、父と母が、そして新しい命が、あったのに。

 私の家族だけじゃない。村のみんな。

 向かいの家のおじさん、おばさん。一緒によく遊んだ、お兄ちゃん、お姉ちゃん。

 村の村長さんの息子は、きれいなお嫁さんを貰って喜んでた。

 みんな、喜んでたんだ。

 それを、

 

 それを、みんな吹き飛ばしてくれた。

 あっさりと、なんの価値もないように、見向きもせずに。


 しばらくして頭の熱が下がり、体が動くようになって、おもむろに立ち上がった。

 飛ばされた時に捻ったのか痛む足を引きずって、私は周りを探した。

 

 私が生きていたのだから、だれか生きているかもしれない。

 

 父と母はどこだろう。私の近くにいたから、きっと無事に違いない。

 もしかしたら、壊れたのは村だけで、みんな生きているかもしれない。

 そうだ、そうに違いない。

 

 そうやって、無理矢理にでも希望を持とうとした私は、たくさんの原型をとどめていない死体を目にして、力なく膝をついたのだ。


 どれくらい、そうしていただろう。

 

 なにもなくなった村で、ぽつんと座り込んでいた私の耳に、なにかの声が聞こえた。

 人の声。小さいけど、確かに聞こえる。

 私は気づいたら駆け出していた。その声の方向に。

 がむしゃらに、我を忘れて、ひたすらに。

 家屋の下敷きになった、その下から、かすかに聞こえる。

 少しずつ、どかすしかない。

 大きいものは梃子を使って、ずらしていく。

 私が通れる小さな隙間ができれば、そこから中に入れる。

 もしも崩れたら私まで危なかったのに、そんなことには頭も回らず、身をよじりながら中に入って、そこで、小さな女の子を見つけたのだ。

 その子も、母親だったものに守られていた。

 

 泣きじゃくるその子をつれて、外に出る。


「…あんた、なまえは?」

 

 その子のことは見かけたことがあった。でも引っ込み思案だったのか、遊びまわるみんなの中には入らず、じっと外から眺めていた子だと思い出した。


「…りぜ」


 泣きつかれて、しゃがみこみ、ようやく口を聞いたのがその名前だった。

 

「わたしは、カルラ」


 そう、カルラだ。私の名前。

 その名前を呼ぶ人が、この世からいきなりいなくなった。父も母も、もう私の名前を呼ぶことはない。

 この子だけだ。この子だけが私をカルラと呼び、憶えていてくれる。

 リゼ。まだ小さいこの子を、私が守る。

 覚えたてだったが、いくつか魔法が使える。村のおばあに教えてもらえた。

 お前は才能があるよ、と言ってくれてた。

 だから、この力で生き残る。


 最初にしたのは、みんなの遺体を、魔法で燃やしたこと。

 このままだと、獣に食い荒らされてしまう。

 子供の力では集めきれないから、家ごと、燃やした。

 ごめんなさいと、心の中で言い続けながら。


 散らばった食料をかき集めて、袋に詰め込む。

 雨風がしのげないかもしれないから、厚めに服を着て。着替えも何着か用意して。

 

 燃え盛る村の跡を見ながら、リゼを連れて、私は歩き出した。


 涙は、リゼの前では見せない。

 この子が、私の分まで泣いてくれる。

 だから、今から、リゼは私の妹だ。

 生まれてこれなかったあの子の代わりかもしれないけど。

 それでも、今は、私だけがリゼを守れる。

 リゼも、私しかいない。


 私たちの村は、タルボ村と言った。もう誰もいない、滅んだ村。

 だけど私は忘れない。忘れないためにその名前を貰う。


 私はカルラ・タルボ。

 リゼを、妹を守り。そして、いつか必ず、あの竜をーー殺す。



 懐かしい夢を見た。

 

 そうだった、あの子と出会ったのは竜のおかげだった。

 そう考えた瞬間、

 くつくつ、と思いがけない笑いが起こった。

 笑った。実に何年ぶりのことだろう。

 竜のおかげ、なんて。そんな言葉、思いつくようになるほど、もう昔の事なのか。

 

 鼻息で私とリゼの村を滅ぼした竜。

 

 憎かった。許せなかった。一日中、何をしていてもそのことが頭から離れなかった。

 リゼと笑い合っていた瞬間でも、心の中は仄暗い炎に身を焼かれていた。

 あの子は気づいていたんだろうか。

 きっと、気づいていたのだろうな。

 思い返せば、私がやろうとしていることに勘づいていて、止めようとする仕草さえあった。それを私は気づかないふりをして、なかったことにしたのだ。


 あの子のために生きることも、竜を殺すために生きることも。

 私にとってはどちらも必要なことだった。

 

 竜を殺す。殺したんだよな? 私は。

 どうしてか、殺した瞬間をあまり思い出せない。

 

 誰に聞いても、殺すなんて不敬だ。不可能だ。そう考えるだけでも罰が当たる。

 狂っているのかお前は。村のことは災難だったがあきらめろ。

 あれは災害のようなものだ。竜巻や雷、地震などの自然と同義なのだ、と。


 クソくらえだった。

 そんな当たり前の事を聞いて納得するなら、最初に辿り着いた街で平和に暮らしていた。

 理屈ではない。そんなものではないのだ。

 

 この世界で私たちと同じような目にあっている人は、当然いる。

 その人たちは諦められたんだろうか。仕方ないと、思ったんだろうか。

 いいや違う。

 たとえそう見えたとしても。その内側には私と同じ昏い炎がくすぶっているはずだ。

 手段さえあれば、みんな私と同じことをしたはずだ。

 相手が巨大だから。

 一見、相手にするのもバカバカしいほどの圧倒的な存在だから。だから諦めるしかないと。

 そう、周りに言い聞かされて。同調して生きていくしかなかった。

 

 だが、私ならやれる。そして殺した。

 どうやって殺したのか。あれは傑作だった。

 圧倒的な質量を誇る竜に対して、それ以上の質量をぶつけてやったのだ。

 

 隕石を落とした。

 

 古代の失われた魔法。

 再現するのに苦労した。各地に点在していた古文書を漁り、口伝を聞き、その核心たる禁書がある国を見つけ、そこに潜り込んだ。

 戦の絶えない、古い歴史があるだけの国。

 丁度よかった、魔法の腕で成りあがれる国で。

 攻撃魔法に特化した私は、傭兵から成りあがり、軍へと入り、名を上げて爵位を得た。だがそれでも、足りない。王族のみに開かれる禁書庫。そこへと通ずる為にはもっと手柄が必要だった。

 

 リゼも。本当は争いなんて嫌いな子なのに。私を放っておけないとついてきた。

 タルボ姉妹。私とリゼで相乗効果のように名声を得た。

 私と違ってリゼは、攻撃魔法を使えない。代わりに、防御と支援に特化していた。

 二人で戦場を駆け、生き抜き、手柄をたてて。

 民衆の声が、気運が、二人のどちらかを王族と紐づけるように、と流れていった。

 そう、操作されていた。

 

 そうして出会ったのがあの男だった。


 

 レクセン・オルダム第三王子。

 それが、カルラの婚約者となった男だった。

 上の二人の王子とは違い、スペア以下の立ち位置ではあったが軍務に才を見出し、将軍として前線にでていた。カルラは彼の直属の部下という立場だった。

 彼は、カルラをよく使った。

 難しい局面。たったひとりで盤上をひっくり返せるカルラは重宝された。

 そしてカルラも、それに応えることにうっすらと喜びを感じ始めていた。


「レクセン様は、姉さんをいい様に使い過ぎだと思うの」


「命令なのだから仕方ないじゃない。私はこの力を存分に扱えるし。お互い様よ」


 リゼが、いつもの文句にいつもの返しをするカルラをみて、ぶうとふくれる。

 その様子を見てカルラは微笑む。

 最近はめっきりと少なくなった姉妹だけの時間。

 なんてことのない、街角の店で昼食を共にしている。

 カルラの非番の日をリゼが確認して合わせてくれるのだ。

 もっと自分のために時間を使ってもいいと思うのに、この妹はどうやらその姉が心配で仕方ないらしい。 


「また、怪我をしたって聞いたよ。…大丈夫なの?」


「ええ、問題ないわ。ちょっと身体が半分ほど焼け焦げただけだもの。相手の攻撃より、むしろ私の魔法の余波の方がダメージがあるくらいよ」


 カルラのその答えにリゼは視線を鋭くする。眉間に皺が寄り、あきらかに不機嫌さが増したようだった。

 しまった。自分では本当に大したことはないと思っていることをそのまま伝えて、何度この妹にそれは違うと諭されたことだろう。


「…姉さん。治癒魔法にも限界はあるのよ。見てくれは治せても確実にどこかでその代償を支払ってる。不調を感じているはずよ。お願いだから無理はしないで、だってーー」


 リゼのそのあとの言葉は、言わなくてもわかる。

 この世に二人だけの姉妹なんだから、だ。お互いだけが家族で。他にはいない。

 わかっている。無茶をしていることくらい。

 もうすでに、左足の自由が利かなくなってきている。病み上がりだからと杖を補助にしているが、これからは常備することになるだろう。 

 そういえば、味覚も鈍くなった気もする。しかし生きるために食べなければならないだけで、そこまで重要視するほどでもない。


 カルラはそっと、リゼの頬をなぜた。

 あまり悲しむなと。そう伝えたかった。

 

 私には目的があるし、その為に魔法の研鑽は必要だ。ある程度の犠牲はやむを得ない。たとえこの五体が満足に動かなくなったとしても、魔法を極め、そして必ずあの憎き竜を殺す。その為ならなんだってする。

 

 そうしてカルラが自分の思考に意識を向けていると、リゼの様子に気づくのが遅れた。


 リゼがカルラの手を握り、そして淡く発光する魔法力を見せた。


 その瞬間、カルラは手を振りほどいた。

 

 なんということをするのか、この子は。

 あれほど使ってはならないと言い聞かせたのに。

 それもこんな公衆の面前で。誰かに見られていたらどうするつもりなのか。


 カルラは慌てて周囲を見渡した。

 魔法で気配を探っても、注視された様子はない。

 ほっと、一息をつく。


「…リゼ、あなた何してるの。それは使わない約束でしょ?」


「姉さんが、私のいうことを聞かないなら。私も聞かないわ」


 本当に困った妹だ。

 この頑固さはいつからだったか。村から焼け出され、最初に辿り着いた街で、リゼの養い親を探そうかと考えていたとき、ぎゅっとカルラの手を掴んて離さなかった時からか。確かにもうあの時にはもう、絶対に譲らない、という強い視線をよこしていたように思う。

 こうなってはカルラの根負けが確定していた。

 

「…わかったわ。なるべく怪我しないようにする。だから貴女も、その力は使わないで」


 疑いの眼差しはそのままに、カップを手に取りお茶を啜るリゼ。

 信用がない。まあ、なるべくだから。

 しかし今後はもっとリゼにバレないようにしなければいけないなと、考え直す。でなければこの妹は本当にその力を使おうとするだろう。

 

 カルラと違い、攻撃魔法を使えないリゼは、その能力が治癒や結界などの後方支援に偏っていた。

 それだけなら良かった。直接には戦場に出ることがなければまだ比較的安心だ。

 しかし、たった一度。カルラが爆撃魔法を喰らって生死の境をさまよった時。

 

 リゼは新たな力に目覚めた。

 回復魔法。治癒魔法とは似て非なる。現状を完全に回復させる魔法。

 跡形もなく。時間が巻き戻ったかのように、思えるほど。

 それは努力では決して得ることのできない魔法。

 資質と才能と血でもって受け継がれる固有魔法だった。

 

 幸い、カルラを回復させた時には他に誰もいなかった。

 ある程度、自分でそこそこの重傷を演じた。

 リゼにたいそう怒られたが、そんなことは安いものだった。

 

 回復魔法保持者は国に管理されるからだ。

 その力を最後の一滴まで、王侯貴族や国の中枢人物などに施すことを命ぜられる。

 そうして囲い込まれるのだ。

 その血筋が絶えないように、今後ずっとその力が受け継がれるように。


 リゼをそんな風にはさせない。

 この子は、当たり前の幸せを手に入れて生きていくのだ。

 他者に一方的に搾取され続ける人生など、あってはならない。

 

 それに回復魔法には他にも危険性がある。

 治癒魔法とは反対に、術者にその代償を求めるのだ。

 それは使用者の寿命を削るというもの。

 考えなしに使っていれば、早晩、あっという間に死んでしまう。


 リゼは優しい。他人の痛みに敏感だ。

 そんな子に、助けられる力を使うなというのは酷かもしれない。

 だがカルラにとっては、その他大勢よりリゼの命が大事だ。

 

 だから回復魔法の、その代償と存在が知られる危険性を説き、丹念に言い含めた。

 

 もしもリゼが、その魔法を明らかにしていたなら。

 カルラではなく、リゼがレクセンと婚約していただろう、ということは暗に控えて示さなかった。

 

 それがどうしてなのか、その時のカルラにはわからなかった。


◇ 

 

 レクセンと、婚約者という外側だけの間柄だけでなく、男と女の関係に至り。そして隙をみて禁書庫の魔法鍵を複製した。

 王族の身体に隠されているその鍵を、閨を共にする間に探るのはかなり苦労した。

 

 レクセンは物静かな男だった。

 いや、良く言いすぎたな。無口で不愛想で、何を考えているかよくわからない男だ。

 平気で、人を死地に追いやる。

 これでも婚約者だったのだが、しかし私も、それは望むところではあった。

 自分の利用価値を最大に発揮できるのは、復讐に耽溺する合間のわずかな清涼剤でもあったからだ。鬱憤を晴らす、と言い換えても良い。

 

 だが不思議と、隣にいて、落ち着く存在でもあった。

 私を私のまま、受け入れてくれているような、気がしていた。


 長く、夜と戦場を共にする間に。やがて。

 いつの間にか、どうしてか。このままでも良いか、と思い始めていた。


 復讐を忘れる。そんなこと今まで考えもしなかった。

 

 思えばあの時が、私にとって一番、幸せな時間だったのかもしれない。

 

 リゼと、レクセンと、私。

 三人が、同じ場所、同じ空気を吸い、同じ夕日を眺める。

 あのどことなく、寂しい。けれど忘れがたい、情景を。まだ想い返すことができる。


 だが、愚かにも私は、その時ようやく気付いたのだ。

 リゼが、レクセンに向ける視線の意味に。

 自分がその想いに至ってはじめて気づける現実。

 そして、レクセンが見つめる先にリゼがいるということにも。


 仲間を使って、印象を操作して、レクセンの婚約者という立場をリゼから奪ってしまった。

 

 本当はどちらが婚約者になるかは微妙はところだった。

 けれど、確かに私はリゼに力を使わないように指示し、自分がその立場になるよう誘導していた。

 その醜さを。まざまざと思い知らされた。


 全身から血の気が引くようだった。

 リゼの。あの子の幸せを望んでいたはずだったのに。

 私自身がその未来を奪っていた。

 

 吐き気をもよおした。自分の邪さに。

 だから、消えかけていた復讐の炎が、別の火種でもって燃え盛った。


 私が消えれば丸く収まるのではないか。

 

 禁書を閲覧して一応の完成をみた魔法は、強力過ぎて一個人では扱えない。

 仲間全員の命を支払っても足りないかもしれない。

 それは術者の私自身にも言えることだった。

 成功するかも確実ではない。検証に必要な時間もない。

 なにせ、ある決められたタイミングの間にしか発動できないからだ。

 

 この星の周辺を巡る天体が、三百年に一度ほどの機会に交差する瞬間。

 その間だけ用いることが出来る魔法。極重力魔法。

 その絶好のチャンスが、迫っていた。


 どうするか。迷っていた。

 仲間は、竜を殺す目的で集まった同士。命を捨てる覚悟は持っている。

 私も、その命を使うことをためらうことはない。

 

 迷っていたのはリゼのことだ。

 ひとりになるあの子が心残りだった。

 けれど、私がいなくなった後に、レクセンがリゼを支えてくれるならば、なにも問題はなかった。


 心おきなく、竜を殺せる。


 私は静かに覚悟を決めた。


 

 竜を殺し、しかしカルラは死ななかった。

 

 その肉体のほとんどが不自由になったが、一命は取り留めた。

 仲間は全員死んだ。増幅器として使用した各地の遺跡も崩壊した。

 

 被害は不明。だが国一つ分の領土が竜の遺骸で覆われて、使い物にならなくなった。 

 カルラはできるだけ人的被害の起きない場所で魔法を発動させたが、予測は予測。なにが起きても不思議ではない。

 自らの復讐のためにその他一切を犠牲にする。その一念でもって敢行した。

 恨まれる覚悟も当然できている。

 だから前代未聞のこの事態の行方を誰が責任をとるのかと、代名詞に掲げられたことにも文句はなかった。


 特に竜を神聖視していた教会がカルラの死を強烈に望んでいた。

 昔から竜の被害を天命だと、民衆に言い聞かせて効率よくコントロールする役割を担っていた。

 各国もそれはよくわかっていて、お互いに利用し合っていた。

 

 しかしそこに、竜を殺せる魔法がある、という目に見える事実が現れた。

 

 使い手は、主犯のカルラを除いて生きてはいない。

 情報はカルラからしか得ることができない。

 禁術使用の影響か治癒魔法の利きが悪く、加えてその肉体が弱りすぎていて、自白を強要することもできない。

 だから教会の苛烈な願いとは裏腹に、カルラはその存在を、かろうじてだが許されることになったのだ。


 竜を殺すと決意を新たにした後、カルラは自身の死を偽装した。

 代わりの死体を用意し。顔を変え、髪色も変え、声も変えた。

 誰もカルラだと気づかないように。

 少しでもリゼにその影響がいかないように。努めた。はずだった。


「姉さん!」


 公開裁判の決まり切った判決を受け、引きずられて退出する寸前、カルラにとって忘れたくても忘れられない声が聞こえた。

 振り返るとそこにはリゼの姿があった。

 

 なにをバカな。知らない。私に妹はいない。

 調べればわかる。血がつながっていないことは。

 そうだ思い出した。どこかで会って、利用したかもしれない。

 騙されやすそうな面をしているじゃないか。そんな奴はたくさんいた。

 だから、こんなバカな女のことなんて、私は、知らない。


 そう、しゃにむに叫びまわって、頭のおかしいふりをする。

 一生、出ることの叶わぬ、牢獄に向かう。

 動かぬ体にさらに魔力路を断絶する枷をはめられて、魔術師としてもカルラはそこで死んだ。


 名もない、ひとりの大罪人として、ひきずられていく。

 その背中に、最後に一言だけ。


「生きて!」


 とリゼの声だけが届いた。カルラはそれを背負いながら収監された。


 

 牢獄の中、暇つぶしなのか、世間話を独り言のように喋る看守がいた。

 伝え聞くと、リゼがレクセンと結婚したという。

 その力から聖女と呼ばれ、国を問わず、支援活動をし、慕われていると。

 子供も生まれたとか。可愛い女の子なのだと。

 

 その事を、今までで一番、嬉しく思う。


 竜を殺した時よりも、ほっとしたかもしれない。

 あれほど憎かった竜は、隕石に頭をぶつけて死んだ。

 あっけなく。あっさりと。

 竜もこんな気持ちだったのだろうか。それは笑える。

 私はいつの間にか、憎むあまり、それと同じ存在になっていたというのか。

 そんなことはないと、思いたい。

 

 その後の聴取では素直に答えた。どうせもう再現不可能な魔法だ。

 検証しようにも資料は散逸していて、時間はかかるだろう。

 あれはこの世界に生きる竜の犠牲者たちが起こした、たった一度きりの奇跡だった。

 私はただ、その先鋒に立っていただけだ。

 そして残りの命を最後まで、自身を見届けることに費やす。


 そう、思っていた。



 ある日、突然、扉が開き連れ出される。

 長年暗闇に慣らされた目が、光りにつぶされる。


 抵抗する気力もないまま引きずりまわされ。

 水をかけられ、ごしごしと強引に身体をふかれる。


 もしや、死刑が確定したのか。

 そんな想像が頭をよぎる。しかしすぐに、それもそうかと、納得した。

 何年たったかは知らないが、ようやく決まったのか。


 それを聞こうにも、声が出ない。

 発することをやめてから長いのだろう、出し方を忘れてしまった。

 そうこうしているうちに、馬車に詰め込まれる。


 座席に横倒しになったまま、うすく目を開けた。

 内装の良い、死刑囚を連れて行くものではありえない。

 対面に座る人物の足だけは見えた。

 仕立ての良いズボンと靴。それだけで身分の高い人物だと知れる。


 誰だ。と考えた時には向こうから声をかけられた。


「…久しぶりだな。カルラ」


 よく、知っていた声だ。リゼの次に記憶に残っている男。


「…レ、ク…セン」


 なぜこの男がここにいるのだろう。

 終身刑のはずの自分をどうやって連れだしたのか。

 久しぶりに見るレクセンは、記憶よりも老けて貫禄がでていた。

 しかし、体感していた年月よりも年は取っていない。

 

 そのカルラの疑問を感じたのか、レクセンが口を開いた。


「お前が捕まってから、十二年になる。なぜお前を連れ出せたのか。それは恩赦が下ったからだ。内密に。…表向き、竜を堕とした女は獄中で衰弱死したことになっている。だから、お前はカルラだ」


 恩赦。という言葉にさらに疑念がわく。

 いったいどうすればそんなものが下るのか。

 そしてレクセンがここにいて、リゼがいないということは、どういうことなのか。

 

 そのカルラの視線を察してレクセンは続ける。


「己が身よりもリゼのことか? 相変わらずだな。ならばなぜ諦めなかったのだ。妹のために。リゼにはお前が必要だったのに。残されたあいつのことを考えなかったのか?」


 その言葉にかすかに残っていた命の火が灯る。

 

 考えた! その結果がこれだ。

 何が悪いというのだ。リゼは想う相手と結ばれて子をなした。

 それが最上の結果ではなくてなんなのか。

 私がいれば邪魔だったのだ。私には目的もあった。それを忘れることはできなかったのだ。


「お前は思い違いをしている。リゼが俺と結婚したのはお前のためだ。お前を救う力を欲したからだ。…わかるか、俺のこの虚しさが。姉妹ふたりからフラれた哀れな男の気持ちが」


 私のため? 

 どうしてそうなる。

 リゼは明らかにレクセンを好いていた。そのはずだ。

 レクセンもそうだったはずだ。

 だから、だから私は。


「俺も、煮え湯を飲まされ続けて堪忍袋が喪失している。だから言う。遠慮はしない」


「ーーリゼは死んだ」


 その言葉は、カルラの耳を通り過ぎる。

 

 何をいっているのかわからない。

 死んだ? 誰が。

 リゼが? どうして。

 

「回復魔法を使った。あいつが望まぬ、高位の者たちに近づき望むままふるった。結果、融通を利かせられる力を得て、そして寿命を失った。お前のために」


 私のため?

 どうして、使うなとあれほど言ったのに。

 一部の権力者に都合するなんて、リゼも本当はイヤだったから言うことを聞いていたんじゃなかったのか。

 そんなに私を助けたかったのか? 

 自分を犠牲にしてまで?

 

 うそだ。私にそんな価値なんてない。

 私はそれと気づかずにリゼを利用していたんだ。

 生まれてこなかった弟妹の代わりに可愛がって。

 寂しいから愛情を与えるふりをして。

 私は復讐だけでは身が持たないと理解していて、それでリゼを傍らに置いて、自分を保っていたんだ。

 そんな、そんな卑怯者のために。

 

ーーリゼが、死んだ?


「…う、そ…だ」


 声が枯れて出ない。枯れ木のようになったこの体では、涙も思うようにでない。

 そもそもリゼの為に泣くことさえ烏滸がましい。

 

 声にならない声をあげる。

 

 慟哭というにはあまりにもか細く、力ない。

 しかしその弱り切った身体であらんかぎりの力で叫ぶ。

 それは、そういった類の声だった。


 

 どれだけの時間を眠っていたのか。体は着実に癒えていた。

 

 馬車の中で気を失った私を、レクセンは自分の屋敷に連れ帰ったらしい。

 豪奢なベットの天蓋を眺め、いっそこれが夢であってほしいとさえ思う。

 今はまだ夜で、月明りだけが、部屋を照らしていた。

 闇に目の慣れた私には丁度よい明るさだった。

 

 上体を起こし、視線をあげると、サイドテーブルに一通の手紙が置かれていた。

 名前が見えるように。そこにはリゼの名前があった。

 きっと恨み言か何か書かれているのかと、考えもしたが、そんな子ではない。

 でもなんでもいい。なんでもいいからリゼからの言葉が欲しかった。

 もたつく指で、手紙を開く。



『ようやく、私のいうことを聞いてくれたみたいで良かったわ。姉さん』


『生きていてくれてありがとう。間に合わないかと思って焦っちゃったわ。だからちょっと配分を間違えてしまった。それは本当にごめんなさい。でも姉さんも私の言うことを聞かなかったのだから、おあいこよね?』


『姉さんがずっと竜を憎んでいたのは知ってた。私がそれを忘れさせるって思って頑張ったけれど、どうやら足りなかったみたいね。残念だわ』


『これは、恥ずかしくて、今まで言えなかったけど。もう死んでるし、ここで言うわね』


『ありがとう姉さん。私の家族になってくれて。あの真っ暗な中から私を助けてくれて。あの時、私は天使さまが現れたのかと思ったのよ。自分も悲しかったくせに、私の前で泣かないようにしていたの、知ってるんだから』


『貴女をずっと見てきた。貴女をずっと大切に想ってきた。だからこれは犠牲とかそんな大袈裟なものじゃないの。貴女から受け取ったものを返しただけ。だって水臭いじゃない。私たちは、この世にたった二人だけの姉妹なんだから』


 

 ようやく。ようやくと涙が出た。

 この体にまだこれだけの水分が残っていたのかと不思議なほどに溢れてくる。

 後悔の、涙ではない。

 文面から伝わる。あの子の、リゼの想いが溢れて出る涙だ。

  

 愚かだった。竜を殺した瞬間を、なぜ覚えていないのか。

 あの時、振り返ったとき。そこにはリゼがいたのだ。

 最後まで私を止めようとして、追いかけてきていたリゼの顔があった。

 もう二度と会えないと思っていた、あの顔を見れて、竜の死に様よりも見惚れてしまっていたのだ。

 その事実にようやく気付く己の愚かさが、何よりも恨めしかった。


 嗚咽の止まらぬ身体をそのままに、残されたもう一つの手紙を読む。

 

 そうして身体が落ち着きを取り戻したところで、頼りない体を起こして、脇に置かれていた杖を支えに、屋敷の裏庭へと足を向けた。

 

 そこにいる、ひとりの少女と会うために。



 月明りの中、佇むひとりの少女がいる。

 そのまま溶け込んで消えてしまいそうな雰囲気がある。

 儚げなその顔には、確かにリゼとレクセンの面影があった。

 

 杖と、引きずる足の音に気づいたのか少女はカルラに顔を向ける。


「…だれ?」


 どう答えたものかと、カルラはそのまま首肯するように近づいた。

 

 リゼのもう一つの手紙には、娘のことが書かれていた。

 もしも娘に回復魔法の兆候がみえたら、よろしく頼むと。

 死にかけのぼろぼろの姉に対して、要求が高すぎないか。とカルラは思う。

 カルラにできることは少ない。

 レクセンの娘でもあるのだ。あの男がある程度、危険を払っているはずだ。

 その網の目を搔い潜ってくる小さいのを、追い払うだけなら、できなくもない。


 例えばそう、この娘の傍に控える侍女に扮した、刺客とかなら。


「殺気がもれてるよ。私を隠れ蓑にできるかと、欲が出たか?」


 刺客はバレたと見るや、すぐさま娘に襲い掛かった。

 距離としては刺客と娘の方が近い。カルラの足では追いつけない。その判断は間違いではない。

 間違いなのは、カルラがいかに死にかけのぼろぼろで足を引きずっていても、その実態は、竜を堕とした女である、ということだった。


 ”魔弾”という。魔力を弾にして打ち出す魔法がある。

 この世界で魔法を学ぶ人間がはじめに教わる魔法だ。

 誰もが、その先の魔法を覚えれば使うことはなくなる。

 大魔法の火力を広範囲にばらまきながら戦場を駆けたカルラにとっては、ありえないほどの小さな威力の魔法。故に、小さな魔力で使用できる。

 

 しかし、枷の封印で魔力の途切れた体では魔法は使えない。

 だが、たったひとつ。封印の施されなかった箇所がある。

 それは脳。そのデリケートさから本来魔力を通す事がない臓器。

 カルラは時間にあかせて、脳内に魔力路を敷いていた。

 もちろん肉体と比べれば耐久力のない、ほんの小さな魔力しか使えない路だ。

 だが早い。考えてから魔法を構築し打ち出す、他の魔術師とは一線を画す速度。

 

 思った時にはもう撃っている。

 

 脳が耐えられるぎりぎりの出力の魔弾。

 しかしそれでも、人間の急所に命中すればそれなりの威力。

 おそらくは史上最速のカルラだけの魔法。

 人間の認識の外の速度で、刺客の顎が魔弾で撃ちぬかれる。

 そして、糸の切れた人形のように地に伏したのだった。


「…? どうしたの、マーヤ」


 一見すると、バランスを崩して転倒したようにも見えるその侍女に扮した刺客を、娘は心配して駆け寄る。ぐったりと動かない。顎を正確に狙い打たれ、脳を揺らされたから当然の結果ではある。


「…疲れがでたんじゃないかしら。暇を出してあげた方がいい」


 カルラのその言葉に、娘は怪訝な顔で思案した。

 そして鈴を鳴らして護衛を呼び、刺客を連れていかせた。

 勘は良さそう。それに慣れている節もある。


 この娘を狙った理由。回復魔法関連ではないのか。

 どちらにせよカルラのやることは変わらない。

 

「カルラよ。初めまして。貴女の叔母にあたるわ。…名前を聞かせてくれる?」


「ラズリエルです。おばさま。初めまして」


 そう言って、ラズリエルはちょこんとカーテシーをした。

 

 ラズリエル。タルボ村の近くには、ラズと呼ばれる木の実が自生していた。

 それを子供の頃によく食べていた。リゼもそのことを忘れていなかったことに、カルラは少し懐かしむように微笑んだ。

 

 そのカルラを見てラズリエルはおそるおそる、口を開いた。


「おばさま。…おばさまは、私の新しいお母様に、なるの?」


 その言葉に、カルラは固まる。

 確かにレクセンとは婚約者だった時もあったが、それはもう過去の話だし。

 カルラは罪状は明確ではないが、犯罪者だし。

 リゼの手紙にはついでのように「レクセンのこともよろしく」と書いてあった気がするが、そこまで面倒はみきれない。


「…いいえ、貴女のお母様はリゼだけよ」


 リゼに何を言い含められていたかは知らないが、思い通りになってやるつもりはない。

 私の妹のくせに、死んでしまうなんて情けない。イヤなら化けて出てくるといいのだ。


 間違えて、間違えて、辿り着いた先には何もない。

 それでもただひとつ。妹の残した宝がある。

 それは私のものではない。

 リゼが見守るはずだった時間を、私が受け取った。

 だから、これはそのお返しなのだ。


「ラズ、と呼んでいいかしら。貴女のお母様によろしくと、頼まれたのよ」


 そっと差し出したカルラの手を見比べながら、ラズリエルはゆっくりと手を出した。


 小さく、やわらかいその感触をまだ覚えている。

 この娘の顔を見るたびに、きっと貴女のことを思い出す。

 色褪せて、消えてしまいそうだった記憶が息を吹き返すように甦る。


 月明りの下、カルラは握手を介して、新たな家族の絆を結ぶ。

 そして今度こそ、その小さな絆を守り切ると、心に決めた。

 

 かつての愚かな女は妹の願いによって殺された。

 たとえ竜を堕とそうとも、妹に、姉は弱いものなのだから。

 

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


この作品とは雰囲気が異なりますが、「ママはネクロマンサー」という連載も投稿しています。

ご興味があれば、そちらもご覧いただけると嬉しいです。


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