第1話 私は「自分の人生」を生きることに決めました
短編版にていただいた感想をもとに加筆修正して、連載版を開始しました。
お仕事の原稿などとの兼ね合いとなりますので、一部お待たせするかもしれませんが、連載できればと思います。
短めで読みたい方、一部先行して展開をご覧になりたい方は短編版をご覧いただければと思います。
お楽しみいただけますよう、頑張って書かせていただきます!
「アリア、君との婚約を破棄させてもらいたい」
そう口にした彼は、この国の第一皇子であるエドウィン・キシュタルトである。
その隣には袖を目元に当てて涙ぐみ、「か弱き令嬢」を演じている少女がいた。
「アリアお姉様、どうして……どうして私に酷いことをなさったんですか? 私がお姉様よりも優れた聖女だからって、何も、何も夜会に着ていくドレスを捨てることまでしなくてもいいではありませんか……」
(ああ、始まった……)
たった今、婚約破棄されたアリアはそのように思う。
(昔から変わらない。「弱い女の子」を演じて誰かにすがる。もう何度目だろう)
アリアと彼女の妹であるコリンナは二歳差の姉妹である。
幼い頃より両親から、「姉だから」とことあるごとに我慢するように強いられてきた。
姉のアリアは幼い時に好きな色のドレスを着せてもらえなかった。
でも、コリンナは可愛らしいピンクのドレスをたくさん着て、うんとおめかしをしている。
姉のアリアは学院や友人との遊びも門限があり、破った日は屋敷に一晩入れてもらえなかった。
でも、コリンナに門限はなく、夜遅くまで護衛付きで友人と遊んでも叱られない。
(ああ、理不尽なことばかり)
両親もアリアよりも妹であるコリンナを可愛がっているのは、誰が見ても明白だった。
だからこそアリアにはわかった。
目の前の妹の涙は「嘘」であることが──。
姉に虐められている悲劇のヒロインのように、エドウィンには映っていることだろう。
(彼も騙されるのね……なら、もういいかしら……)
アリアはドレスの裾を持ち、気品よくお辞儀をした。
「殿下、婚約破棄の件ですが、確かに承りました」
あまりに呆気ない承諾に、エドウィンとコリンナは目を合わせて驚いている。
(いいわ、これで……仕方ない。殿下の選択だもの)
アリアは長い髪を揺らして、二人に背を向けた。
「婚約者をあっさり捨てるなんて……人の心がないのか」
エドウィンの言葉は確かにアリアの耳に届いた。
しかし、心には響いていない。
(これでもう、私の役目は終わり……)
彼女は階段を一段降りた時、振り返ってコリンナに最後の言葉をかける。
「あなたに殿下は合わないわ」
感情を表に出すこともなく、ただ静かにそう忠告した。
「最後までなんて意地悪なんだ」
そんなエドウィンの呟きが、アリアの耳に届く。
それでも彼女は振り返らない。言い返さない。
(もう、あなたのために生きるのは辞めます)
アリアは今日この時より、婚約者のためでもない、妹の犠牲になるわけでもない。
ただ、自分の人生を生きたいように生きる。
そうすると決心したのだった。
第1話をご覧くださり、ありがとうございます。
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