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第26話 Pythonって実行中に処理を書き換えられるんですか?

「戦地に赴く前に、お前らに特別授業を行う」


 ティオ先生に呼び出されて、アンオブタニウム1年の3人組は広い訓練場のような教室に集められた。時刻は午後、授業終わりの放課後だ。いつも通り、ルカは眠そう。


「まずはルカ。魔力放出しか使えないと聞いているが、事実か?」


「あぁ……」


「なら覚えるべきは、魔力の形状化だ……例えば」


 ティオ先生は、右手を前に突き出す。同時に、バチバチという電撃が手のひらから生まれ、それが槍のような形状を持つ。形状が構築された魔力の塊である、それをがしりと握り締めると、そのまま投擲の要領で遠くの的へと投げつける。

 先生の胆力で投げられた槍は、標的に衝突すると同時に火花と電撃を散らしながら炸裂し、的を破壊した。


「俺が知る限り、ルカは魔力を球体の形状で射出することしか出来ていない。他の形状で出力する練習をすれば、より応用が効くようになるだろう」


「……なるほど」


 ルカはこくりと頷くと、いつものように指鉄砲のポーズで、何度か魔力放出を行う。が……どれも不定形で霧散するか、球状にしかならない。それを見て、ルカはげんなりとした様子で呟く。


「難しいな……」


「一朝一夕で身に付くものじゃない、が……ルカの魔力操作のセンスは悪くない。練習すれば出来るようになるさ」


 ルカに軽く魔力操作のコツを指南した後に、ティオ先生は続いてシアの方へと近付いてくる。


「夏の課題は空間魔術に頼り過ぎな部分だ。確かに空間切断はあらゆる属性の中でも最強の攻撃手段になる。一方で、座標指定の魔術は座標指定から発動までのタイムラグがある以上、動いている敵には絶対に当たらないと思った方がいい」


「つまり、動きを止められれば良いんですよね」


「そうだな。特にその手法で最も効果的なのは何だと思う?」


「水と土の複合魔術や雷属性の魔術で足止めは狙っていますが……結局、当てられなければ意味がないのでは?」


「より当てやすく、より確実に動きを鈍らせる手段がある」


 そう言いながら、ティオ先生はシアから少しだけ距離を取る。そして、右手を構えると同時に、先生の5本の指に嵌められた指輪のうちの1つが光る。


「っ……!?」


 閃光。文字通り眩むような強い光が瞬間的に放たれ、少し離れていた俺の視界すらも真っ白に染まる。なるほど、フラッシュバンの要領だ。端的に言うならば、目潰しだ。


「《ライト》の効果時間を減らして、その分光量を増やした魔術、《フラッシュ》と呼ばれる魔術だな。これは相手の足を止め、照準を鈍らせ、もし防ごうと目を覆ったのだとしても視界を奪えるという強力な妨害魔術だ」


「……けれど、自分も目を潰されては……」


「座標指定魔術であれば、必ずしも相手を視認している必要はない。事前に座標を予測し、《フラッシュ》で動きを止めると同時に本命の座標指定魔術を当てればいい。因みに、俺がサングラスを付けている理由は《フラッシュ》対策だ。魔術戦における基本戦法だからな」


「なるほど……分かりました」


「それと、夏。必ずしもお前一人で完結する必要はない。仲間と連携して、足止めは仲間に任せるというのも1つの手だ。支援魔術を飛ばしながら、チャンスを見計らって空間切断を入れる、それがベストだろう」


 確かに、シアは1人で戦おうとするきらいがあった。こないだ図書館の連中に襲われた時のように、俺やルカが前線を張って、タイミング良く《ディメンション・カッター》などの魔術で支援してもらう。それこそがシアが最も輝かせる戦い方なのだろう。


「そして、最後にリツ。お前の強みは魔術を改造、ないしは新しく創造できるところだ」


「そうですね、少なくとも相手の知らない魔術で初見殺しのようなことは出来ると思っています……実際、こないだ勝てたのもそれが理由ですし」


「ならその強みをより活かしていこう。というわけで、これをやる」


 ティオ先生は、そう言って一本の杖のようなものを俺に渡す。感覚的に、恐らく魔道具の類なのだろうと思うが……どう使うのだろうか。


「それは、お前の言葉を文字として出力する魔道具だ。より簡潔に効果を伝えるならば、頭の中で組み立てた魔術を、即座に魔導書に書き込むことが出来る」


「……つまり、戦いながら魔術を改造できるってことですか?」


「そういうことだ。慣れるまでは難しいと思うが、お前の強みはそこだ。相手や状況に合わせて適切な魔術を創造する、それが出来ればお前は無敵だろう」


 試しに、魔導書を構えながら、右手の杖で魔導書を叩く。すると、頭の中に思い浮かべた一行の処理が、白紙の魔導書のページに刻まれ、浮かび上がってくる。なるほど、確かにこれは便利だ。


「ありがとうございます」


「あぁ、言っておくがそれは俺からのプレゼントじゃない。ルビイ教授からお前に渡してくれと頼まれたものだ」


「……!? そうなんですか?」


「まぁ、立場もある。表立って渡せないだろうからな」


 そう聞くと、この杖が特別なモノのように感じてくる。確かに、こないだ師匠に色々と報告をした時に、魔術の改造についても話していたが、いつの間にこんなものを用意してくれていたとは。


「リツは素早く魔術を改造、ないしは創造する練習だ。そのタクトは一品物らしいからな、失くすなよ」


「はい!」


 こうして、俺たちは任務に向けて、それぞれの特訓を進めていくのだった。

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