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第23話 挙動から処理を予測する

 魔力操作の試験は、文字通り魔術における魔力操作の技術力が試される試験だ。

 魔力量や魔力出力が要求されない、単純な技術だけの科目なので、場合によってはアイアンやブロンズのようなクラスでも満点を狙える、勤勉な努力家に優しい試験になっている。


「次、86番、アンオブタニウムのリツ」


「はい」


 名前を呼ばれて、試験会場に入室する。中には試験官のラッセル先生と、高そうな服を着た見知らぬ方々。これは、シアから聞いた話だが……この大学の試験には、成績評価以外の趣旨が含まれているらしい。魔術界の重鎮が見に来るらしく、卒業後の進路に関わるとか何とか。試験で良いところを見せられれば、この人達に卒業後にスカウトでもされるのだろうか。あまり俺は興味のない話だ。


「それではまずは第一試験だね。この桶に書かれた赤い線になるべく近づくように《ウォーター》で水を生み出してほしい。溢れた場合、線に足りなかった場合はどちらも減点だ。《ウォーター》を複数回使用するのも禁止。一度の魔術で条件を満たせるように、頑張ってくれ」


「分かりました」


 これは俺にとってかなり有利な課題だ。《ウォーター》の魔力操作に関しては自信がある。毎日のように《ウォーター》で風呂を沸かしてたのは、この日の為だったと言っていい。

 左手に魔導書、右手を桶に向けて構える。目算だと、通常の《ウォーター》だと足りないのは明確だ。1.75倍の《ウォーター》だと結論づける。


「《ウォーター》」


 手のひらから水球が生まれ、そのまま桶へと落ちていく。自信があるだけあって、量は完璧。赤い線と同じだけの水が、桶には満たされていた。


「良いね。満点としよう」


「ありがとうございます」


 良かった、上手くいったみたいだ。ラッセル先生もうんうんと頷きながら、にこやかに微笑みかけてくれている。さて、だがもちろんこれで終わりではない。


「続いて第二試験だね。最大3回の魔術で、約15m先にある5つの標的を破壊してみてくれ。使う魔術はどれでも構わないよ」


 次の試験は的当てだ。今俺が立っている位置から、15m先に5つの標的が、やや無作為に並んで立っている。あれをなるべく少ない魔術の回数で破壊しなければならない。

 正攻法は、魔力操作で大きな弾を作り出し、同時に当てることだが……俺の場合は少しズルが出来る。


「《ウォーター・ボール・マシンガン》!」


 右手から、小さな魔力の弾丸が無数に放たれる。精密な魔力操作や照準が出来なくても、これだけ多くの弾をばら撒ければ、一度の魔術で全ての標的を破壊することが出来るという算段だ。

 この試みも見事成功。5つの標的が見事に撃ち抜かれ、試験会場におぉ……という小さな歓声が満ちる。


「リツくん。それは君の作った魔術かな?」


「あ、はい……ダメでしたか?」


「いや、問題ないよ。ただ凄いなぁと思ってね。初めて見たよ、あれだけの弾を同時に飛ばす魔術は。あ、もちろん満点だね、おめでとう」


 そう言いながら、先生はパチパチと拍手をしてくれる。自分が作った魔術がこういう形で評価されるのは、中々に嬉しいものだ。会場にいる魔術界の重鎮達も、ざわざわと頻りに何かを話し合っているのが聞こえる。中々に良い結果を出せたのではないだろうか。


「では次が最後の第三試験だ。目を閉じた状態で、今から渡すスクロールがどんな魔術か当ててみてくれ。魔術を起動して良い回数は無制限だけれど、少ない回数で当てた方が高得点だ」


「なるほど……」


 これは知らない試験だ。シアから試験対策として、第一試験と第二試験については聞かされていたが、この第三試験は知らない試験だ。今年から追加されたのだろうか。しかも結構な難問だ。確かに、魔術を発動した時の"感覚"は魔術によって異なる。だから"感覚"を頼りに、魔術を当てるというのも出来ないことはないはずだが……


「では、始めてくれ」


「はい」


 俺は渡された目隠しで目を閉じた状態で、右手に渡されたスクロールに魔力を注ぐ。魔力が失われる感覚。消費量は……いや、何かがおかしい。まるで全身の魔力がごっそりと抜け落ちるような、膨大な魔力消費だ。と思った矢先に、まるで魔力が逆流するよぅに全身に魔力が注がれていく。


「……さぁ、何の魔術だと思う?」


 ラッセル先生の声だけが響く。確かに特徴的な魔力の流れだ、こんなユニークな魔術は多くは存在しないだろう。それに、俺はこの感覚を"覚えて"いる。何処かで、この魔術を発動したことがあるはずだ。


「……あ、もしかして」


 そこで、俺は閃く。この感覚の既視感は、入学式の時の"アレ"だ。魔力を全て注いで、それが身体に返ってくる魔術など、あれ以外にありえない。そう確信して、俺は大きな声で宣言する。


「入学式の時に行った《魔力測定》の魔術、ですね?」


「お見事。1発で正解だね、これも満点だ」


 シュルシュルと目隠しが取られる。実際に手元へと視線をやると、確かにあの時のスクロールを俺は握り締めていた。同時に、ラッセル先生が拍手を送ってくれる。これで、全試験満点……つまり……


「流石はアンオブタニウム生だね、おめでとう。これで魔力操作の科目は満点だ。お疲れ様」


「ありがとうございました」


 盛大な拍手に送られながら、俺は大きくお辞儀をして部屋を退出する。

 会場の外には、シアとルカ、そしてリュミエ先輩が待ってくれていた。


「お疲れ様。どうだった?」


 シアの言葉に、俺は黙って親指を立ててみせる。それを見て、三人は顔を見合わせて小さく笑った。どうやら俺は、仲間の期待に応えることが出来たらしい。


「リツなら問題ないだろう」


「うん、リツなら多分大丈夫。私も信じてた」


「とか言いながら、わざわざ部屋の前で待ってるってことは心配だったんじゃないの?」


「……さぁな」


 ルカがふっ、と悪戯っぽく笑う。万が一、悪い結果だったとして、そんな俺を労うためにきっと3人はここで待っててくれたのだろう。

 師匠。俺は、とても良いクラスメイトを持ったみたいです。


「格好つけてる暇あるの? 次はルカの番でしょ?」


「まぁな。自信はないが、やれることはやる」


 残る科目はルカの魔術戦とリュミエ先輩の障害踏破。どちらも試験の目玉科目で、他の生徒も観戦する盛大な感じでやるらしい。ルカもここ数ヶ月で色々と成長しているし、そんなに心配する必要はないのだろう。ルカが俺を信じてくれたように、俺もルカを信じなければならない。


「さて、私たちは観戦席に行くから、ルカも早めに会場に行くのよ」


「あぁ……ところで、会場は何処なんだ?」


 ……いや、やっぱりサポートは必要かもしれません。

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