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第11話 え、これstdio.hだけで作ったんですか?

 2戦目。下っ端B VS 俺。

 下っ端B……なんて言ってはみたけれど、多分俺より魔術の経験も豊富だし、知識も比べ物にならない。つまりこの試合、最初から結果の決まってる消化試合です。


「《ウインド》」


 でも、負けてはいられない。ルカが繋いでくれたバトンだ。俺だって頑張らないと、シアが多分怒る。だから、出来る範囲で頑張る。まずは俺の使える4種類の基本魔術の1つ。《ウインド》で右手に風を発生させる。出力はやや多めの5倍。右手を中心に、ドライヤーの強設定ぐらいの出力の渦巻きが生まれる。


「なるほど、ボール系やアロー系で射出しないのね……」


 シアが驚いたような声を漏らす。多分、シアさんは俺のこの行動をめちゃくちゃ深い意味のある行動だと思っているのかもしれない。でも、違うんですシアさん。


 ――俺、ボール系もアロー系も習ってないんです。


「……何をするつもりなのか知りませんが、無駄です。《ショック・アロー》」


 俺の対戦相手。下っ端B。ちょっとだけ真面目そうな眼鏡の男は、魔術戦の基本である雷属性の魔術で対応する。シアの使っていた《ショック・ボルト》の下位魔術である《ショック・アロー》。それでも、俺にとっては当たれば負け確。避けるのは分の悪い賭けだ。なら……


「っ……!」


 俺は駆ける。敵に向かって、自分目掛けて飛んでくる雷の矢に向かって。

 まるで自殺行為だと、自分でも思う。けれど、俺には1つだけアイデアがあった。


 雷属性の魔術について、ティオ先生の話を聞いて、俺の中で1つの推測が立っていた。それは《ショック・アロー》や《ショック・ボルト》の本体は『プラズマ』であるということだ。本来、空気は電気を通さない。つまり、『電気の弾丸』という現象を説明するには、電気を通す不可視のプラズマを射出し、そこに電流が流れている状態であると考えるべきだ。


 だから――


「――吹き飛べッ!」


 右手を大きく振りかぶり、そのまま《ショック・アロー》を殴りつける。通常であれば、そのまま電流が流れて俺の負け。だが、今の俺の右手には5倍《ウインド》が渦巻いている。

 プラズマはガス状の粒子であり、当然風の影響を受ける。アロー系の魔術で形状は小さくなっており、矢弾程度のサイズのプラズマであれば――


 ――風の力で霧散する


「馬鹿な……!?」


 下っ端Bは素っ頓狂な声をあげる。確かに、非効率的な方法ではあると思う。例えば防御魔術で盾を作ったり、強化魔術で避けたり、攻撃魔術で相殺したり、そういう方法が一般的なのだろう。だが……俺は最も初歩的な魔術である《ウインド》でそれをやってみせた。あまりないシチュエーションではあると自分でも思う。


「へぇ……《ショック・アロー》を《ウインド》で無効化する、ベストな手段とは言えないけれど、意表は突ける一手。面白いわね」


 シアのお眼鏡にも叶ったらしい。何よりだ。さて、だがこれで俺の打っていた最初で最後の「一手」は使い切った。ティオ先生が魔術師に有効な雷魔術の重要性について教えてくれたからこそ、もし対策しておくなら雷魔術だと判断できた。俺も、少しは成長できているのだろうか。


「なら……《ウォーター・ショット》!」


 続いて下っ端は水の弾を放ってきた。俺が《ウォーター》で作る水球より一回り小さい水球が、ショットの名の通り拳銃並みの速度で飛んでくる。


「10倍……《ファイア》」


 一瞬だけでいい。俺の右手よ耐えてくれ。そう願いながら、《ウインド》を解除し、出力10倍の《ファイア》を右手に発生させる。その炎は直径1mくらいはあるだろうか。

 右手が燃え尽きる前に、大きく腕を振り回して《ウォーター・ショット》を蒸発させる。別に、水属性魔術だから火属性魔術に有利だなんてことはない。属性はそれ自体に相性はないのだと、ラッセル先生も言っていた。


 やれる。戦えている。工夫すれば、基本魔術だけでも、戦える。師匠はやけに俺に新しい魔術を教えたがらなかった。だが、その理由が今なら分かる。基本魔術を深く理解し、扱えるということは、それだけでとても価値があることだと。付け焼き刃で色々な魔術を教わるよりも価値のある時間だったということを。


「理屈としては正しいけれど……何故、リツはウォール系やシールド系の炎魔術を使わないのかしら……基本魔術しか使わないのには何か意味が……?」


 シアが何か言っているが、今はどうでもいい。このまま肉薄して、もう一度《ファイア》を直撃させる。これが俺の唯一の勝ち筋であり、勝利の方程式だ。敵までの距離は残り5m……いける!


「魔術師の癖に接近戦狙いですか……良いでしょう……《ショッ――」


「懲りないな《ウインド》」


 ショック系、つまり……下っ端Bは懲りずに雷魔術か。

 だが大丈夫。こちらも《ウインド》の詠唱を開始する。反復練習だけは腐るほどやってきた。魔術の展開速度であれば、並の魔術師にも負けていない。相手の魔術の発動よりも早く、再び右手に5倍《ウインド》を纏わせる。このまま雷魔術をいなしたあと、そのまま《ファイア》で殴る。完璧なプランだ。


「――《ショック・エンチャント》」


 ん? なんだその魔術。

 未知の魔術の発動と同時に、下っ端Bの拳が、バチバチと電気を放つ。あれ、電撃を飛ばしてこない……? ということは、この魔術はプラズマではなく電流を帯びるタイプの魔術ということ。つまり……《ウインド》で散らせない。これはまずいのでは?


「からの《エンハンス・オーラ》」


 今度は下っ端Bの全身から、オーラのように白い光が立ちのぼる。あ、この魔術は知ってる。ジト目ちゃんが使っていた強化魔術だ。物体の硬度を上げたり、あとは……性能も上げれると言っていた気がする。


「いや待って、やっぱ接近戦はナシで――」


「問答無用!」


 俺は慌てて急ブレーキを掛けて、距離を取ろうとするが、その一瞬の間に相手は拳を振りかぶって踏み込み、そのまま正拳突きが俺の腹部に直撃する。

 まるで馬に蹴られたかのような衝撃、あ……でもジト目ちゃんに轢かれた時よりはマシだな……なんて思いながら、俺は全身に電流を流されながら吹っ飛ばされる。


 動けない。筋肉が言うことを聞かない。魔力も練れない。なるほど、これが雷魔術の強さということか……確かにこれは、魔術師にとって致命傷だ。


「勝負あり……ね……勝者、プラチナのモブ」


「誰がモブですか」


 俺は大の字になって情けなく痙攣したまま、敗北を知る。

 負けた。予想できた結果ではあるが、人並みに悔しい。武術の経験こそないが、相手の眼鏡は見るからに筋肉もなく身長も低く、体格では俺が勝ってた。接近戦に持ち込めば勝てると予想したが、魔術で強化されればその差は埋められる。魔術師だから接近戦が弱い、なんてことは当たり前だがなかったということだ。


「ごめん、シア」


「別に良いわよ、多分負けると思ってたし。あとフルネームで呼びなさいよ」


「事実だけど改めて突き付けられると傷付くなぁ……」


「……まぁでも、あなたの戦い方自体は面白いと思う。風魔術が雷魔術に"限定的な条件下"では有効なのは驚いたわ」


「ありがとう」


 シアに引きずられて、俺もベンチに退場。

 そして、最終戦。シア VS リーダー格の男だ。

 ルカが勝ってくれたから、ここで勝てば俺たちの勝ち。逆に言えばここで負ければ俺たちの負けだ。


「あの青髪の男は確かに強かったが、白髪の男は雑魚だったな」


「どうかしらね、少なくともポテンシャルは同格だと思っているけれど」


「ふふふ、お前は楽しませてくれるんだろうな?」


「さぁ、少なくともあなたが楽しめる戦いではなさそうね」


 互いに挑発しながら向かい合う。

 間違いなくシアは強い。魔力総量も魔力出力も俺なんかとは桁違いだ。

 だから、負ける心配はしていないが……


「――さぁ、始めましょうか」

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