表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【後日談追加】異界に逃れて十数年、戦が終わったから戻ってこいとか許嫁(王子)に言われても、もうお姫様じゃなくてただの女子高生なんですケド⁉【本編完結】  作者: 今田ナイ
後日談:姫子成分≑二色シュークリーム分(康代Side)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/40

11.康代、二本足の何か(?)に遭遇する。

 

 

 ふいに、窓から刺す日差しを、何かの影が一瞬だけ遮っていった。


「ああ、もうそんな頃合いですかな。ちょっと失礼をば」


 そう言って、姫子の部屋に康代をひとり残し、老ダンダーンは部屋を出て階段を降りて行ってしまう。この部屋に置き去りにされては理性が危ういと言うことで、ちょっと名残惜しいような気もするが、康代も慌ててあとを追った。


 時間の無い白ウサギ宜しく玄関から出て行く老ダンダーンの後ろ姿を捉え、康代もローファーを履いて表へ出た。




 だだっ広いだけの庭に、丁度、何かがふわわーんと降りてくるところだった。

 着地する寸前、バッサバッサと翼をしならせ、急ブレーキを掛ける。


「――――――――」


 軽自動車位の大きささの、銀色をしたワイバーンが二本足で蹲っていた。間違ってもドラゴンでは無い。その点については、康代は一歩も譲るつもりは無かった。

 銀色のワイバーンは前足に相当する翼を畳み、口の先で丁寧に整えている。


「おや、見付かってしまいましたか。これは不可抗力ですな」

「……ワザとだ、絶対」


 怯えたような声に振り返ると、玄関ドアにへばり付くように――だが、家から一歩も外には出ず――村山智志が苦い顔をしてこちらを見ていた。

 どうやらワイバーンが恐ろしいようだ。極めてまともな感性である。


「きゅるる?」


 その、姫子と同じ銀色をしたワイバーンの背には、同じく銀色の鞍が設えてあった。だが乗り手は居らず、代わりに積み荷だけが括り付けられている。


「康代殿、不用意に近付かない方が宜しいかと。今は、(あるじ)がおりませんからな」


 そう言いながら、よっこらしょとばかりにワイバーンの背に乗り上がった老ダンダーンは、銀の鞍から手早く荷を解いて下ろし始めた。


 きゅるきゅる喉を鳴らしている銀色のワイバーンに、康代はゆっくりと近付いた。康代だって、これがさすがにラプトル――群れで狩りをする小型肉食恐竜――だのプテラノドンだのと言われれば近付いたりはしないが、人間に使役されている生き物となれば話は別である。まさに、今近付かずして、いつ近付くというのだ。


 よく見ると、瞬膜が黒目がちの目を覆ったり外れたりしていた。


 康代はドキドキする心臓を宥めながら、ワイバーンの首にそっと手を当てる。

 ワイバーンは特に嫌がるということもなく、康代の暴挙を許した。ワイバーンは、ヒンヤリした硬い触り心地の鱗に覆われていた。

 鱗の生え替わりとか脱皮するんだったら、まるっと欲しいと密かに康代は思った。そのまま首を擦ってやると、機嫌良く喉の奥をゴロゴロ鳴らし出した。


「――アンタはあの晩、双竜町の上空を飛んでた?」

「きゅるきゅる」


 言葉が通じるとも思えなかったが、なんとなく『是』と言われた気がした。

 その硬くヒンヤリした首筋に頬を付けてみると、ドクドクと脈打つ心臓の音が聞こえた。やばい、本物のワイバーンだ。また泣きそうである。康代は涙を堪えた。


「この銀色飛竜は、姫さまの騎竜であるコカブですな」

 

 ――ちなみに、許嫁のカーディル王子殿下の飛竜は黄金飛竜でして、あちらは小山のように大きく、このだだっ広い庭が狭く見える程ですよと、口の滑った老ダンダーンは企業秘密(?)をガンガン喋り倒した。


(銀のワイバーンに乗った姫君が金のワイバーンに乗った王子様と飛ぶなんて、)


「――それって、なんてファンタジー……」


 小さく呟きながら、康代はぎゅっと、銀のワイバーンの首にしがみ付いた。

 銀色のワイバーンも、(あるじ)から感じたことのある匂いの人間に撫で回されるのは、まんざらでもないようであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ