少女は何もかも捨てて自由を謳歌します!
「カーリン=バレット!貴様とは婚約破棄をし、俺はこのミーチェと婚約する!!」
あ゛?今こいつ、何つった?
ミシッと持っていた扇子が音が鳴る。
おっと、危ない危ない。私は淑女です。下品なお言葉は言いませんわ。
しかし、今行われているのは、王国設立記念日の晩餐会。
多くの貴族や他国の王族が集う中で馬鹿……、ごほん、とても愚直である意味で頭がお花畑な王子はとんでもないことをやらかしてくださいました。
そんな彼の隣には金髪の短い髪でオレンジの瞳のマリオネ=カリマスとピンクの長い髪をなびかせて水色の瞳のフリフリのドレスを着ている淑女。先程の殿下が言っていたミーチェ嬢だったか?
あ、ちなみに私の名前はカーリン=バレットと申します。
このカリマス王国に属するバレット公爵家の長女です。
まあ、その家族もゴミなんですけどね。
だって、姉だからと言って妹であるシャネスに玩具やドレス、宝石を奪われ続けた。しかも、妹も性悪で私にいじめられているなどないことを言いつけるものだから家族から冷遇されている。
そんな家族もこの場にいるけれども私を庇うとどころかいつものようにまぁ罵倒してくる。
「カーリン!貴様、シャネスだけではなくコーリン嬢までも虐げていたのか!この恥さらしめ!」
「なんという子なの!今すぐ謝罪なさい!」
「お姉さま!最低です!!」
この三人も大概馬鹿ではある。
周囲の目線は私に同情する視線が多い。
だって、これでも私は学園でもトップの成績を収めており、生徒会長である馬鹿王子の代わりに代理として生徒会を担ってきたのだ。ましてや、公務に関しても何もやらない王子に代わってやっていた私にいじめる暇があると思っているのか?そんな暇があるなら睡眠時間に使っているわ。
「おいっ!聞いているのか!?」
怒鳴り声が響き渡る。
ああ、そういえば、なんか叫んでいたっけ?もう右から左に受け流していたわ。
だって、お茶会する度に罵倒の嵐だから。
え、なんでそんなにメンタルが強いのかって?
それは祖父母の教育のおかげです。
幼少期の私を見て両親を叱り飛ばしたが全く反省が見えないため、私を引き取ってくれた。
両親から貰えなかった愛情を目一杯注いでくれたおかげで心身ともに逞しく育ちました。その為、こんな罵声を浴びせられてもなんともありません。まあ、喧しいし周囲の視線を視えてないのかと呆れるばかりですけど……………。
ああ、先程言ったようにシャネスからドレス等は奪われていますけどシーズンが過ぎている物や偽物を
渡していたのですけど見抜けないのも阿呆と言うしかありません。
「貴様はミーチェだけではなく妹まで!!こんな非道な行いを許す訳にはいかない!よって、貴様は国外追放とする!!!」
「カーリン!貴様は勘当だ!!貴様など家族では無いっ!!!」
二人の言葉を反復する。
こくがいついほう?かんどう?コクガイツイホウ?カンドウ?国外追放?勘当?
え、喜んでお受けいたします!!
だって、国王陛下に進言しても全く取り合わないどころかお前が支えれば済む話だろう?と言うばかりで一人息子を可愛がるばかりであった。まあ、王妃に関してもチクチクと文句を言われていたからストレスが溜まりに溜まる。
しかも、この場に国王陛下達はまだ来ていないこの状態でこの発言。まあ、独断であろう。
貴族から平民への成り下がることで貴族としての矜持をへし折る為に言っているのだろうが、私にとってはどうでもいいことです。
だって、こんな激務でストレスマッハな現場から離れられるならこちらとしては願ったり叶ったりだ。
周囲の貴族達は青ざめているが王子達には目に入ってないようだ。
まあ、私が抜けたらこの国がどうなるかぐらい想像できたのだろう。
私には関係ないけど。
「ここに書面もある!早く」
「はい、分かりましたわ!」
「へ?」
うきうきと書面を拝見し、うん。私に不利なことは書いてないことを確認してさらりとサインをした。
「それでは私はこれで失礼しますわ!」
さっと挨拶をし、その場を去った。
チラッと端を見るとそこには祖父母が見えたがぐっと親指を立てられた。
どうやら、こちらを応援してくれているようだ。とても嬉しいわ。
さてと、さっさと屋敷に行って荷物の整理をしないといけない。まあ、元々私物は魔法道具に入れていたからこのドレスを脱いで地味な服に着替えるだけだ。
こうして、私はこのクソのような王国を去っていった。
「それで今に至ります」
「いや、今至るではないが?」
ここはカリマス王国からかなり離れた国、サシード王国の酒場。
私、カーリンは見た目はプラチナブロンドのロングヘアであったが、今は魔法で髪色をあえてブラウンオリーブと地味の色に、瞳の色もコバルトグリーンから灰色に変化した。
そうしないと絶対にあの国が死に物狂いで私を探しに来るから。
あ、ちなみにカーリンではなくベレッタとギルドで登録している。
え、何で登録しているかって?祖父母のアドバイスで心身ともに鍛えるために冒険者として登録していましたが、その中で私と同じ境遇の人たちが何人かいてこれも何かの縁だと言うことでパーティを組むこととなった。全員、女性ではあるがかなり強者ではある。
「まあ、ある程度は愚痴で聞いていたが腐りきっているな」
呆れたように言う東方の袴を着て上はシャツに鎧を付け、艶があり長い黒髪を結い上げて、ヴァイオレットの瞳をした女性。名を蓮華と言ってファミリネームは無いようだ。本人曰く、破門されて捨ててきたという。あまり詳しくは話してくれないが、まあ、彼女にも色々と事情があるのだろう。あまり深入りはしないようにしてはいる。しかし、彼女はかなりの実力者だ。ジョブは侍であるが、その他の武術関連は既に習得済みである。
「あー、かなり情報が錯乱しているわね。あ、でも戸籍の方はもう排斥されているわ。おめでとう」
魔法陣を展開し、楽し気に色々と情報収集をする魔法使いのローブを纏い、動きやすい様にカスタマイズされているドレスを着ている。
サファイヤブルーのセミロング、ライムイエローの瞳を持つ彼女はリッシェル。嘗て魔法塔のトップにいたのだが同僚とかに嫉妬で嵌められて追い出されたようだ。
「でも、ベレッタ。まずはゆっくりと休んだら?目の下のクマを隠すために厚化粧しているのバレバレだよ?」
リラックス効果のあるポーションあるけどいる?とこちらを気を使う女性。それに関しては有難く頂こう。
彼女はマオ。ライムグリーンのショートヘアにローズピンクの瞳の彼女は錬金術師であり、付与術師のジョブ持ちでこちらは他ギルドに属していたのだが使えないと言われて追放された境遇を持っている。
「まあ、これで自由に旅も出来る!!ダンジョンに潜って一攫千金を狙うわよ!」
グイっとエールを飲む私を呆れたように見つめる三人は顔を見合わせる。
「おい、誰だ。こいつに酒飲ませたの」
「勝手に頼んで飲んでいたわよ。まあ、この分だと明日の昼間に起床ね」
「じゃあ、明日はとりあえずダンジョン攻略の準備かな。ギルドで面白い依頼あったかなぁ」
そんな三人の話など全く耳に入ってこない私はケラケラと口を大きくあけながら笑っていた。
今頃、あの国は大混乱であろう。
それはもう魔法を使わなくても予想がつく。
だって、私が公務も生徒会をしていたのだもの!何がどこにあるかなんてわからないだろう。あ、生徒会の子達は良い子ばかりだったのでマニュアルや引継ぎ事項が掛かれている文書は残しておいた。
でも、それでも自由になったことだし。
「これで漸く四人で旅ができるわ!!」
色んな国に行って色んな料理や魔法を見て、ダンジョン攻略が楽しみでしょうがない。
元々、淑女としてまた時期王妃としての生活は窮屈でしょうがなかった。
私にはこういうのがあっているのだろう。
「……………まあ、ベレッタのあの笑顔を見れればそれでいっか」
「前なんて死んだ魚の目をしていたからな」
私はよーし、もっと飲むぞ!と言って店主にお酒の追加を頼んだ。
一方、私がいなくなったカリマス王国は混沌となっていた。
「お前と言うやつはなんということをしてしまったんだ!!」
王座にてこの国の王であるジュブスはマリオネを怒号を飛ばしていた。
本人はビクッと肩を震わせて青ざめている。その隣ではミーチェ=テレットも同じような様子だった。
二人とも拘束されて、傍には騎士が二人を見張っていた。
あの後、直ぐに知らせに来た宰相の言葉を聞き、慌てて会場に来たがもう遅かった。
他国の王族達は嘲笑し、去っていく。国の貴族達も慌てたように挨拶をし去っていき、会場内は愚行を犯した二人、いまいち状況を理解していないバレット公爵家と自分達となってしまった。
晩餐会での婚約破棄及び破門宣言という国を揺るがす大事だ。
はあとここまで愚かだとは思ってもみなかった。
「これでは我が国は恥さらしになってしまう」
どうにかしないと考えつつもカーリン嬢を何としてでも取り戻さないとと焦りもあった。
彼女は鬼才である。公務に関してもだが、外交では他国から好評である。
言わば彼女無しではこの国は終わる。
内心で頭を抱えながらこの二人を何とかしないといけない。
だが、既に貴族は王族の忠誠は離れつつある。
行きつく先は地獄であろう。
また一方では。
「カーリン嬢が既に国を発った?」
「はい。屋敷に戻って半刻もせずに高速移動をしてしまいまして、今追跡中であります」
西にある太陽の国と言われるサンファイル王国の一室。
王太子である黄金に輝く髪を持ち、紅く輝く瞳を持つレオフェル=サンファイルは婚約破棄をされたカーリンに惹かれていたこともあり、今回がチャンスと言うことで婚約を送ろうとしたが当の本人がもうその国にいないと言うのだ。
あまりにも早く国外へ行ってしまったことへの呆気にとられるが、令嬢がこんなに早く追放できるものなのか?
「しかし、カーリン嬢を探しているのは俺だけではないだろ?」
「はい、今回の一件はカーリン嬢には全く否がありませんから」
そう、あの場ではカーリンに否がある様に言っていたが全てあのミーチェ嬢の証言しかなく余りにも杜撰過ぎて失笑してしまった。しかし、彼女は清々しいように行ってしまった。
「でも、楽しそうだったな。彼女の顔」
まあ、そういうところも新鮮で惹かれるんだけどとポツリと呟いた。
また一方では、東の国である鳳都に聳え立つ白鷗の城。
その奥ではその城の主が嘆いていた。
「何故、私の花嫁はいなくなった?」
白銀のふわりとした耳と尻尾が広がる。
主の前には跪く従者達は冷や汗をかいていた。
そう、この国の王である白銀の艶やかな長髪に海のように蒼い瞳を持つ月景は苛立っていた。
鳳都は獣人の国であり、ここでは『番』つまり運命の者がいるのだが、この王である月景にも番が見つかった。この国でも舞巫女と言われる浄化の力を持つ美しい少女。しかし、番である少女が全く来ない。それどころか、愚かな一家が自分の娘を差し出してきた。
「早く探せ」
「はっ」
そうして、また一つの国が人探しを始めた。
そんな中でもう二ヵ国程、違う者の人探しを始めた。
北の大地にて、南国にてもそれぞれの人探しをしていた。
「ちょっと、何で僕の婚約者が勝手に変わっている訳?しかも、追放ってバカなの」
北の大地、パルディア帝国の後継者であるスカイブルーの少し癖のある短髪に夜明けの空の色の様なオロールの瞳を持っているアスクレス=パルディアは呆れたように魔法塔の重役達を見ていた。いや、見下していたと言った方が良いか。そんな重役達も冷や汗をかいて、どうしたら良いかを考えていた。
魔法塔では勝手に有能な魔法使いの一人を追放してしまった。
「さっさとあの子を連れ戻しなよ。そうしないと魔法塔が駄目になるよ?」
早くしないと潰しちゃうかもね?と遠回りに脅迫をし、重役達は頭を下げてバタバタと足早に去っていった。
「全く、あの子も自由になりたいからってこんなに僕の元をあっさりと離れるなんて」
でも、逃がさないよと子どものように笑いながら呟いた。
南国のランチェルでもギルドの者達を正座させて仁王立ちする第三王子、ジャール=ランチェル。
太陽に照らされた鮮やかな赤みの黄色、まるでマリーゴールドのような短髪で鮮やかなグリーンの瞳に褐色の肌で動きやすい服をしていた。
「お前たち、自分たちが何したか分かっているのか?」
「そ、それは」
元々、ギルド内では何やら問題があったようだ。その中でも一目惚れをしていた少女が追放されたと聞きいて、思っても見なかったことに驚愕をした。そこから調査している中でギルドの腐った内情を知ることとなり、それが今の状況である。彼女は錬金術師であり、付与術師のジョブを両方を持った珍しい素質を持つ者であり彼女は恐らく、パーティにいればその実力は芽生えるであろう。なのに追放された。
まあ、所属していたパーティが無能過ぎたのだろう。
「あの子、今どこで何しているだろう」
一刻も早く見つけないと焦る王子を見ながら侍従の一人ははあと内心で溜息を付いた。
「(これは見つかればすぐに婚約して、結婚するつもりだなぁ)」
彼をよく知っているのでその執着心を甘く見てはいけない。
「「「「ふっ、まるで鬼ごっこだな」」」」
四人の王子達は愉しげに呟いた。
「「「「ひぃ!」」」」
ぞわりと寒気が走った私達。
パーティとして正式に活動し始めた中でギルドからの依頼を受けてダンジョンの入り口に立っていた。
「……………え、ちょっとここのダンジョンってそんなに難易度高い物だったっけ?」
私が訊くと蓮華は否定をした。
「お前の肩慣らしも兼ねて低いのだけど、なんか今、寒気がした」
「奇遇ね。私もよ」
「わ、私も」
三人も同じように寒気がしたことに驚きつつも、少し怖くなったのでダンジョン攻略に関して改めて話し合いをした。
「よし、前衛は蓮華とベレッタ、後衛は私、サポートはマオね。ダンジョン自体は私達三人で何回か入っているから攻略方法から順路も覚えている。慢心せずに行くこといいわね」
リッシェルは私達に言い聞かせるようにそう言った。
「と言っても、蓮華と一緒なら問題ないとは思うけどベレッタはあまり全力を出し過ぎて倒れないでよね?」
「分かっているって!」
私にも釘を出してきた。
服装に関しても貴族として来ていたドレスではなく、格闘家のような動きやすい服装を身に纏っている。
「にしても、意外だよね」
「まあ、格闘家でもありタンク役って」
「あまり無理するなよ」
「もう皆して心配性だな」
グッと両手を握りこぶしにしてにっこりと笑う。
「皆、私が強いこと分かっているでしょ?」
ってことで、ダンジョン攻略を張り切ってやっていきましょう!!
そう言った私に三人はやれやれと肩をすくませて歩き出す。
こうして、私の人生はまた歩き始めた。
しかし、その人生の中に一波乱も二波乱も起こるなど今の私には知る由もないのであった。




