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超短編小説『千夜千字物語』

『千夜千字物語』その42~家族

作者: 天海樹
掲載日:2024/08/11

4、5年ぶりに実家に帰った。

父とは意見のすれ違いでずっと疎遠にしていたからだ。

だからと言ってわだかまりがなくなったわけではない。

ただ報告しておかなければならないことがあったので

急遽帰ることにしただけだ。

それを聞きつけた弟は

わざわざ有休を使って「オレも行く」とついてきた。

昼過ぎに実家に着くと

父はいつものようにぶっきらぼうに迎えてくれた。


久しぶりに帰った実家は何も変わっていなかった。

まずは母に挨拶するために仏壇に行くと

まだ遺骨はそのまま残っていた。

「まだ納骨してないんだ」

と父に言うと黙って返事はしなかった。

母が亡くなってからもう10年。

お墓は生前にすでに購入してあるにもかかわらずだ。


母に手を合わせて顔を見せなかったことを詫びた。

なぜかわからないが涙が出てきた。

ずっとためてきて堪えてたものが

母を目の前にして緩んできたのかもしれない。

慌てて自分の部屋に逃げ込んだ。


しばらくしてリビングに戻ると

「カレーあるぞ。食うか?」

と父が聞いてきた。

父の手料理は久しぶりでぜひもらうことにした。

カレーを食べてる合間にも父は

ゼリーやらアイスやら次から次へと出してくる。

弟と一緒にそれを平らげながら

なぜか父の生い立ちの話になった。

まるで朝ドラのような壮絶な物語は

じっくり聞いたのはこれが初めてだった。


帰ってきた目的の報告はそこそこに、

今度は姉が店を閉めてからやって来た。

姉とも4、5年ぶりで、会う早々「老けたねー」

と相変わらずの口ぶりで迎えてくれた。

ひとしきり4人で話したあと、

なぜか写真を撮ろうということで

何年ぶりかの家族写真を撮った。

「あ、マスクしてた!」

「何やってんの。じゃあもう一枚」

なんてやり取りも久しぶりだった。


姉が帰るといって実家を出たあと

どうやら気をきかせて

晩飯の寿司の出前をとってくれていた。

それが弟が同じように出前を頼んでいたのと

だぶってしまってテーブルの上には

食べきれないほどの料理が並んだ。

「こんなに食えるか!」

「じゃあ持って帰れ」

「こんな持って帰れないよー」

などのやり取りも何年振りだろうか。


親父がお茶を入れにキッチンに立つと

また訳が分からずに涙が出てきた。

もう止まらなかった。

隣で弟が何も聞かず背中をさすってくれた。

誰にも相談することなく一人で抱え込み、

何年もの間いろんなものをため込んできた。

そんな思いを何も聞かず、何も言わずに包み込んでくれた。

そんな家族の優しさに感謝した。

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