第一章 プロローグ
寝れなくてスマホいじってたら、何故か投稿してました。
他の投稿作もあるのでゆっくり投稿にはなりますが、宜しくお願いします!
私はこの世界が嫌いだ。
自分を照らす太陽も、緑の匂いを感じさせるそよ風も、水辺ではしゃぐ子供達の笑顔や笑い声さえも、今の私には苦痛でしかなかった。
ーーこの世界を嫌いになったきっかけ。
簡単な話だ。よくある話だ。ーーそしてそう、とても、とてもつまらないお話。
ーー友達だったと思ってたクラスメートからの突然のイジメ。
ーー笑顔が大好きだった男の子からの、汚いものを見るような眼差し。
ーー元々イジメられていた女の子から感じる優越感。
ーーそして何よりも、偽って無理して誤魔化して好かれる自分を演じてきた自分の結果が、こんな有り様になってしまったという現実。
簡単な話だ。よくある話だ。でも、見たり聞いたりするのと、いざ自分が経験してみるとでは、雲泥の差だ。それこそ、この世に絶望するには十二分に事足りる。
私はこの世界が嫌いだ。大嫌いだ。何よりもこの現状に、毎分、毎秒、傷ついていく私自身が一番嫌い。
自分を照らす太陽が大好きだった。鼻をくすぐり緑を感じさせたそよ風が大好きだった。水辺で友達と笑顔ではしゃぐ子供達が大好きだった。
こんなにも自分を取り巻く世界とは変わるのだろうか?
こんなにも人とは悲しくなれるものなのだろうか?
こんなにも……たった一度の人生に絶望出来るものなのだろうか?
大好きだった両親、お兄ちゃん。今では一番顔を合わせたくない他人。
大好きだった友達。今では一番の恐怖の対象。
大好きだったあの人。今では……
私はこの世界が嫌いだ。
だから残る全ての力を振り絞って私はここにいる。
太陽が隠れた今夜、緑を感じさせないこの強風のビルの屋上、人を感じさせないこの無機質な空間で、私は"最後"を迎えることにした。
本当は死にたくなんてなかった。
今ならわかる、自ら命を絶つ人の気持ちが。
だってみんなこんな気持ちを抱えてたんだよね?
だから私もそっちにいくね?
会ったこともない救われなかった人達を、私の踏ん切りの材料にして、本当にごめんなさい。
こんな状況になって初めて親身に感じるなんて、それこそ身勝手もいいところだよね?
あぁ、こういう時ってこんなにもいろんな事が頭の中をよぎるんだ?
あぁ、ここから落ちたら楽になれるよね?
ねぇ、痛いのは一瞬だよね?
ーーーー。
ーーー。
ーー。
「よし!」
「ねぇ、キミ。飛び降りるの?」
「ひぇ!?」
私は背後からの突然の声に、今までの人生で一度も出したことのない様な変な声を洩らし、気が付けばビルの屋上の縁の部分で腰が抜けて尻餅をついてしまっていた。
「ねぇ、キミ。死ぬの?」
なになになになに!?
一気に現実に引き戻されたんだけど!?
今から飛び降りる恐怖より、後ろから淡々と話してくる若いであろう男の声の方がよっぽど怖いんだけど!?
なんなの、この状況!?
「ねぇ、キミ。どうせ死ぬんだったら、ボクの頼み事聞いてくれないかな?」
「…………」
「ねぇ、キミ。ボクと……」
「ど、どうせ死ぬんだったら、最後に"ヤらせて"とか……い、言うんでしょ!?」
私はこれまたよくあるネットとかの話を瞬時に思い出し、なげやりにそのセリフを夜空に吐き捨て、意を決してその男の方へと振り向いた。
「え……綺麗」
おかしな話だが、今から死のうとしてた私から、そんな思いがけない言葉が、自然に漏れてしまっていた。
そこに佇んでいた男、ーーちょうど少年と青年ぐらいの男の子が、その白髪を月に照らされて、子猫の様な瞳でこちらを真っ直ぐに見つめていた。
「ん? あぁ、確かに今日はお月様が真ん丸で綺麗だよね?」
「そ、そうじゃなくて……あなたが……」
「それよりさぁ、さっきボクが言ったことについて答えてくれる?」
……え!? それよりさぁ……ってなによ!
あはは……私にもこんな感情が残ってたのに少し驚いたよ。
まぁ、最後ぐらいは"昔の偽ってた自分"でお別れするのもいいかもね。
「……これから命を絶とうとしてる人間に向かって、その問い掛けって、なんか失礼じゃないかな? っていうか、常軌を逸しちゃってるよね?」
「くすっ」
え? 今、こいつ私のこと、笑った?
「……なに、笑ってるのよ」
「それがキミの素なんだね」
出会って数十秒の奴に、そんなことわかるわけないでしょ!?
っていうか、これは偽りの私です! 素なんかじゃありません!
「私の素は……さっき後ろから見てたでしょ? 全てに絶望した、ちっぽけな女の後ろ姿を、ね? これは私の最後の空元気です!」
「元気でなにより」
「あなた、私の話ちゃんと聞いてた?」
「聞いてあげる前に、さっきの質問に答えてよ」
「……私の身体はあげれません!」
「いや、いらないけど?」
「え? じゃー何が欲しいのよ」
「キミの方がよっぽどボクの話を聞いてないじゃない。ボクが質問したのは、『どうせ死ぬんだったら、ボクの頼み事聞いてくれないかな?』だよ」
……うっ、確かにそんなこと言ってたような……
それにしたって、これから飛び降りようとしてる人に淡々と話す様な内容じゃないでしょ!?
……はぁ、面倒くさいなぁ。
性格には難がありそうだし、もしかしたら頭がおかしい子なのかもしれないけど、こんな綺麗な男の子と話せるのも、まぁどうせ最後だろうし、聞くだけは聞いてあげようかな?
「……頼み事って何? 聞くだけは聞いてあげる」
「ボクの世界を救ってくれないかな? 聖女様の生まれ変わりのキミ」
「……え?」
ーーこれまたよくあるネットとかのお話。
だけれど、これもまた、見たり聞いたりするのと、いざ自分が経験してみるとでは、雲泥の差だ。それこそ、生に希望を見出だすには十二分に事足りるのだ。
ブックマークしてくれると次話を書くエネルギーになるかもです!