66.山での異変【ガルシア】
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レティシアとルカが消えた後、屋敷ではバタバタとしていた。
「ルーカス、レティシアたちはどこに行きましたの?」
庭で修行をしていたスカーレットとパウラとギルバートは、飛んでいくレティシアたちを見て、屋敷にもどってきた。
「お嬢様、わたくしめも詳しくはわかりません。この手紙をレティシア様に届けたところ、お二人で王都に行かれました。」
「王都ですって?」
スカーレットはルーカスから手紙を受け取ると、差出人を確認した。
「組合長からですわね。」
「ヘレナか?」
ギルバートが、スカーレットの後ろから手紙を覗き込む。
「黒い魔石とはなんだ?」
「魔術師大会に現れた、卑劣で小汚い盗賊集団が、魔力が出せなくなる黒い石を所持していたのですわ。おそらくそれのことかと。」
「そんな石が出回っておるのか…?ふうむ。魔術師にとっては厄介じゃ。」
「ええ、お祖父様。それより、ルーカス?」
「はい、お嬢様。」
「レティシアはヴァーミリオンの日記をどこに置いたの?」
「それが…ルカ様とレティシア様が持っていかれました。」
「なんですって?!お祖父様、どうしましょう?わたくしのせいですわ…。ルカやレティシアが日記を無くしてしまったらどうしましょう…!」
「落ち着きなさい、スカーレット。ルカは無くしたりせんだろう。気にしなくてよい。」
「ですが…。」
青白い顔のスカーレットが俯いて、ため息をついた。
「レティシアとお師匠様は帰ってくるのかな?」
パウラは心配そうに、手紙をくるくると回す。パウラは、まだ難しい文字は読めない。
「その手紙の内容だとレティシア嬢はしばらくは帰ってこんじゃろう。手紙にはレティシア嬢ひとりでと書いてあるから、ルカは帰ってくるかもしれないな。」
「差し出がましいようですが、ルカ様もご一緒に行かれたような言いかたでした。」
ガルシア翁の言葉をルーカスが訂正する。
「そうか…。」
そこに、ジャンマルコとクロエが買い物から戻ってきた。
「どうしたんだ?帰ってきたら、みんなここにいるって聞いたんだけど…あれ?ルカとレティシアちゃんは?」
「そうですね、お嬢様の姿が見えないようですが…。」
スカーレットが簡単にことの経緯を説明すると、クロエはその場にへたり込んだ。
「お嬢様が、王都に…?」
「王都には馬車だとここから2日かかる。ルカは数時間で飛んでいったようじゃが。きっとすぐ戻ってくるだろう。」
「…。やっぱり私も王都へいっても良いでしょうか?!馬車を出していただきたいのです!」
「それは良いが…。」
「わたくしも行きましょう。秘伝書が心配です。」
「ぼくも!」
「じゃあ俺も?せっかくガルシアに来たのにまた移動か?」
ジャンマルコは、頭をガリガリとかきながら困った顔をする。しかし、前髪は乱れない。
もう夜なので、行動は明日にしようと、全員でぞろぞろと食堂に向かう最中だった。侍女の一人が血相を抱えて走ってきたのだ。
「ギルバート様!大変です…!」
「何事だ?」
「山のふもとにフェンリールが降りてきて暴れております!」
「なんだと?!」
「なんですって?!」
ギルバートとスカーレットは、血相を変えてすぐさま階下の玄関ホールへと向かう。
そこにいた人々も、スカーレットとギルバートを追う形で玄関ホールに向かった。
「じいさん!フェンリールなんて、この辺りにでるのか?」
ジャンマルコが魔獣退治をする時の大剣を持ちながら、声をかける。
「いや、フェンリールはウラカヌス山の奥を縄張りにして静かに暮らしている。麓まで降りてきたことなどない!」
「とにかく現場に行くしかありませんわ。」
「僕も行く!」
「パウラ、もちろんあなたも行きますわよ。クロエは留守番です。」
「わかりました、ご武運を…!」
こうして、ギルバート、ジャンマルコ、スカーレット、パウラは、ガルシア城を出てフェンリールが暴れている山の麓へたどり着いた。
「あれか…。だいぶ怒っておる。猟師小屋の連中がやられたのか?」
フェンリールは、巨大な狼だ。ギルバートの2倍はあろうかという背丈と、豊かな銀色の毛、ギラギラとひかる金色の瞳で、呼吸のたびに口から炎を吐いている。炎属性最強の魔獣だ。
フェンリールの足元には小さな木造の小屋がぺちゃんこになっている。
「お祖父様、おかしいですわ。あんなに興奮したフェンリールは初めてです。このまま街へ出られると、街が壊滅しますわ。」
「うむ…。あのフェンリールは…何かを探しておるのか?」
「じいさん!こっちに気づかれた!」
ジャンマルコがそう叫ぶと、フェンリールがこちらにゆっくりと歩いてくる。
「冷静にさせたかったが…仕方ないのぉ。フゥよ。」
ギルバートがフゥを呼ぶと、足元に小さなトカゲサイズのフゥが現れた。
「きゅる?」
「あのフェンリールを巣に帰そう。よいな?」
「きゅきゅきゅ〜!」
フゥはご機嫌に尻尾をふりふりすると、どんどん大きくなっていった。
可愛らしかった様相が、ヒトと同じくらいの背丈になり、鱗がビキビキと伸びていく。
最終的には中国の幻獣、麒麟のようなツノとタテガミ、蛇腹の鱗が並ぶ腹から伸びた腕には、蝙蝠のような翼が生え、足や手には黒くて大きな爪が伸びる。尻尾は体長と同じくらいだ。まさしくレッドドラゴンといったような姿に変わる。
「これがフゥを使役した姿…?」
フゥの進化を初めて見るパウラは、その姿を見て一歩下がる。
「ギュルギュルぎゅー!!!」
「グオオオオオ!」
フゥが咆哮すると、フェンリールもそれに応えて咆哮した。
フェンリールはフゥの首に噛み付き、炎を吐くが、炎はフゥに効かない。首も硬い鱗に牙が通らなかったのか、早々にフェンリールが諦めた。
次はフゥが火炎放射器のように、炎を吐き出す。炎はフェンリールの周りを取り囲むが、やはりあまり効いていない。お互いに炎に強いのだ。
「山に火が燃え移らないように支援してくれ。」
「はい、お祖父様!パウラは足元の炎に集中してください。わたくしは木々に燃え移りそうな火の粉を払いますわ。」
「わかった!」
そう言うとパウラは半径50メートルほどの範囲に盛土を行い、燃え移る先である草木をどけた。
今度はフゥがフェンリールの首に噛み付く。
フェンリールが苦しそうに悶えるが、逆立っている毛が針のように硬質化し、守っている。
「ジャンマルコ!いまだ!殺すなよ!」
「おう!」
ギルバートのかけ声と共に、ジャンマルコが炎の中に突進する。スカーレットはすかさず炎を操り、道を作る。
「はあぁぁぁぁぁぁあ!」
ジャンマルコは大剣をふりかざし、フェンリールの足を切る。
「グギャーーーーーッ!」
フェンリールは泣き声をあげたあと、切られた脚を引きずりながら山へ帰って行った。
「フゥ、フェンリールの様子を見てきてくれないか?」
ギルバートはフゥを元のサイズにすると、フゥはこくんと頷くと、とことこと、フェンリールについて行った。
「一旦城に戻ろう。少し調べる必要がある。」
ギルバートはそう言うと、みんなは城に戻る事にした。
舞台はガルシアに戻ってきました!
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