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カナリアの弟子〜1年後の婚約式が嫌なので逃げ出します〜  作者: 佐藤純
第五章:ガルシア領

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65.夜のおとも

Twitter(X)リンク:https://twitter.com/jun_satoh_novel

Twitterプロフィールに、カナリアの三人娘のAIイラストを公開しています。

「待って!結局今日はどうするの?」

私は、ルカを追いかけて組合長の部屋を出た。

「ああ、まずは宿舎に案内する。そして、俺も一緒に泊まる。」

「俺も一緒に泊まる…?!」

「仕方ない。寝る場所がないんだ。俺は床に藁でもひいて寝るが、気にするな。」

「き、気にするに決まっているでしょう?!」

私は、研究室で男子と雑魚寝で寝泊まりすることはあっても、狭い部屋で一夜を共にしたことはない。しかも、気になっている相手とだ。


「家族なんだろう?」

「うっ…!」

ルカを見ると、ニヤニヤと笑っている。焦る私をみて楽しんでいるのだ。


「すまない、冗談だ。だが、宿舎も街の宿も満室だ。ばあさんが言うには明日には一部屋空くそうだから、今晩だけだ。」

「…ゴンザレスさんは?」

「ゴンザレスは…一緒に寝ると悪夢を見る…。歯軋り、抱きつき癖、寝言…。」

ルカがおぞましそうに首を振る。これは過去に何かあったに違いない。

「………。はぁ…。仕方ないわね。」

「何度も言うが、俺は床で寝るし、何もしない。」

「わかっているわ。それに…寝るなんて許さないわよ、ルカ。」

「どういうことだ…?」


私は頭にクエスチョンマークを飛ばしているルカを見ながら、ふふふふふと不敵に笑う。

私は、ずっと持っていたヴァーミリオンの日記を右手に掲げて振り上げた。

「今夜は徹夜で翻訳をします!」

ルカはその宣言に目を見開いていたが、すぐに不敵に笑い、「いいだろう。夜は長い。」とのたまった。


私たちは夜も更けた頃にお風呂を済ませ、部屋に戻ってきた。水がかかるとフルーテの魔術がとける、と聞いていたのと、ルカが共同湯船に入ると、男でも失神者がでる、という過去を聞いて、一番最後に入れるようにゴンザレスが配慮してくれた。


「うっ…!」

「どうした?」


ルカの長くて色素の薄い髪は少し濡れており、魔術師の服から軽装に着替えている。風呂上がりのルカはカナリアで何度も目にしていたが、自室のようなプライベート空間で間近に見ることはなくて、少し戸惑って悲鳴が出た。

ルカと王都に来てから、目が合うたびに心臓が高鳴る。他方、お父様の問題や、婚約式の事など、考えなければいけないことがいっぱいで、心のバランスがとれない。こんな時にクロエがいてくれたら!と思う。


「なんでもないわ。始めましょう。」


ルカの色気に自分を慣れさせ、平静を保つ。そして私は、ルカに英語の簡単な文法を教えることにした。


「まず、この言語には主語と述語があって…主語はこのIやyou、この日記にはheが多いわね。」

「これはなんと読むんだ?やたら多いぞ。」

「それは…love。愛してるという意味よ。」

「愛してる…?」

ルカが首を傾げるのもわかる。この日記は、ヴァーミリオンからカエサルへの愛の日記だった。

ヴァーミリオンはカエサルを尊敬して愛していて、とても強い女性だったようだ。


「これは?」

「これは…I'm crazy about you.…あなたに夢中。」


「これは?」

「Can you go out with me?…デートしてくれない?かしら。」


「…ふ。」

「なんで笑うの?」

ルカはある程度の文法と簡単な単語を覚えると、次々と気になるフレーズをピックアップしてくる。ただ、新しい言語の単語量を見て、自分が翻訳の主力になることは諦めたようだ。翻訳というより、未知の言語を自分の興味のままに解明しようとしている。


「いや…続けてくれ。これはこの動詞が変化したものだな?」

「ええ。これは現在進行形といってingがつくのだけれど、これは副詞ね。泣きながら、よ。」

「ほう。これは?」


私はルカが指をさした先の英文を確認する。

I love everything about your beautiful hair and purple eyes.

「ええと…あなたの美しい髪も、紫の瞳も、全部…。」

私はそこまで読み上げると、視線を感じて顔を上げる。そこには、カエサルと同じ紫の瞳でじっと見てくるルカの顔がある。

「「好き」か?」

「…ええ。そうよ。」

私は、ヴァーミリオンの日記を読み上げているだけなのに、自分がルカに言っているように感じて恥ずかしくなってしまう。


「わ、私そろそろ、集中するわ。ルカは寝てていいわよ。」

私は、引き込まれそうな紫の瞳から、ぱっと目を逸らす。


(私はこの日記を翻訳して、スカーレットにフゥちゃんを使役してもらわなきゃいけないんだから。)

私は、気をしっかり持って、ヴァーミリオンの日記に集中した。


フゥとヴァーミリオンが出会ったのも、カエサルがらみだったようだ。ウラカヌス山に結界石を設置しにいく途中で、サラマンダーと出会った、と書いてある。

フゥはお気に入りの場所に人間がやってきたことに怒り狂い、カエサルとヴァーミリオンに攻撃をしかけた。カエサルが結界石を設置させている間、ヴァーミリオンはフゥからカエサルを守った。

ヴァーミリオンの炎が気に入ったフゥは、そのままヴァーミリオンになついた。それからはずっと一緒にいる。


フゥはヴァーミリオンの恋愛話を聞くのが好きだったようだ。日記には「今日はカエサルに好きと言ったが相手にされなかった、フゥがなぐさめてくれた。」という流れが多い。


日記を読み進めていくとカエサルは、最終的にリヴィエールと結ばれているようだ。そこからのヴァーミリオンの荒れようはすごかった。文字が乱雑で掠れて読めないものが多い。

リヴィエールとは親友でもあったから、ヴァーミリオンの胸中は、複雑だったようだ。


ここまで翻訳できたが、フゥを使役するような記述はでてこない。日記はあと半分くらいある。


気がつくと窓が白んできていて、夜が明けたことに気がついた。


「朝…朝だわ…。続きはまた今度ね…。」

私はぼそりとつぶやいた。


すると、「お疲れ様。」という声が後ろから聞こえてきた。

「ひゃあ!!びっくりした!ルカは起きていたの?」

「あぁ、ずっとレティシアを見てた。」

「眠たくなかったの?寝ていてよかったのに。」

「翻訳を見ている方が有意義だったが、寝てた方がよかったか?」

「…それならいいけれど。」


私たちはバレないように別々に部屋を出て会議室に向かうことにした。


ルカはレティシアで遊んでいます。心を許した人に対しては、必要以上に甘えることができて、いじめちゃうタイプです。

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