61.緊急呼び出し
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「翻訳はできそうか?」
「やってみるわ。」
私は古い羊皮紙の日記を壊さないように、ゆっくりと開く。
改めて文字を見るとアルファベットが読み取れない箇所もある。翻訳には時間がかかりそうだ。
(それにしても、はるか昔から転生者がいたのね。)
私は掠れた文字を見ながら、おそらくそうだろうと確信する。あちらとこちらの世界はある程度、強固に繋がっているのかも知れない。スカーレットの祖先であるならば赤毛だろうから、ヨーロッパ圏が多いのかしら…。もしイギリス英語だとよりわからない。
少し腰を据えてみなければいけないと思い、ルーカスさんに椅子と机を準備してもらおうと、ルカと階下へと向かう。
「ルーカスさん、図書室に机と椅子が欲しいのですけれど…。」
「あぁ、ちょうど良かったです、レティシアお嬢様。」
ルーカスさんのところへ行くと、なにやらメイドさんから1通の手紙を受け取っていたところだった。
「何かありましたか?」
「ええ。レティシアお嬢様へ、手紙が届いております。」
「誰からかしら…?」
「魔術師組合のエンブレムが入っておりますから、組合からかと…。」
「スカーレットやルカじゃなくて、私?」
なにかしら、と思いながらルーカスさんから手紙を受け取る。組合からと聞いて、ルカも一緒に覗き込んでくる。
私はルカにも見えるようにして手紙を広げる。
「なになに……ルカ、これって…。」
「要約すると、今すぐ王都に来いってことだな。」
「やっぱり?」
私は、何度もその手紙を読み直すが、ひねくれて読むこともできないほどの簡潔な文章に、はぁ、とため息をつく。
「こないだ私が捕まった時につけられた黒い石を解明するのに、力を貸して欲しいってことよね。なんで私なの?」
「さらわれた時の状況も聞きたいという事もあるだろうが、レティシアが氷の魔術の原理を導き出したのは魔石の特性からだと報告したから、じゃないか?」
「え?誰が?」
「俺だ。」
「なんでそんなことするのよ〜〜〜!」
「聞かれたからだ。あの試合中、どれだけの魔術師に囲まれたか、お前は知らないだろう。」
ルカが億劫そうに頭を振る。
「ただ、まさかこんな事になると思っていなかった。これは、レティシア一人で王都に来いと言っているのか?」
「そうみたいね。」
宛先には、レティシアの名前しかなく、本文にも「一人で来るように」とご丁寧に念押ししている。
「俺も行こう。」
「行かないっていう選択肢もあるんじゃない?」
「お前はあの黒い石の正体が気にならないのか?」
ルカはニヤリと笑って手紙をひらひらとふる。
「き、きになるわ…。」
悔しいが、ルカの言う通りだ。四大魔術以外の魔石はメルクリウスも持っていなかった。ルカも初めて見るという。
「そうだろう。俺も気になるから、俺も行こう。」
ルカはそういうと、私を抱えて魔術を発動させる。
「ちょっと待って!今すぐに行くの?」
「今すぐに来いと書いてないか?」
「でも…急に消えたらみんな心配するわ。」
「着いてから手紙を送ろう。ちょっと気になることもある。とりあえずいくぞ。」
ルカはそういうと、軽く地面を蹴って浮き上がった。
私はルカの腕に抱かれながら、落とされないようにルカの服の裾を掴んだ。
何回かルカと一緒に飛んだことはあるが、まだ慣れない。
落ちることはないだろうが、20うん年間、こんな空の飛び方はしたことがないのだ。落ちないように必死にしがみつく。
「待ってぇぇええええええ!」
私は悲鳴をあげながら、空高く舞い上がった。
スカーレットやパウラがお祖父様と修行しているのが下に見えた。お祖父様がこちらに気がついたようで、手を振ってくる。私は手を振ることができずに忸怩たる想いを胸に、ルカと共に王都へ向かう事になった。
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