59.ガルシアの結界石
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私たちはガルシア領に到着した。
「おかえりなさいませ、スカーレットお嬢様。」
ガルシア領の山のふもとには、スカーレットの自宅である、ガルシア伯爵の城がある。重厚で荘厳な入り口が開くと、メイドさんがずらーっと並んで迎えてくれた。
「支度をしたらみんなに街を案内するから、いつもの準備はいらないわ。荷物を運んでちょうだい。」
「かしこまりました。スカーレットお嬢様。」
「ルーカス、お客様を部屋に案内して差し上げて。」
「承知しました。皆様、こちらへどうぞ。」
ルーカスは、ガルシア家の執事で、私たちをそれぞれの部屋に案内してくれた。パウラはまだ小さいということで、クロエと同じ部屋になったようだ。
その時、何やら地響きが聞こえた。
「スカーーーーーーーーレットオオオオオ!!」
ドドドドと言うような効果音で、老兵のような風貌の人が階段を降りて?飛んできた。ギルバート・ガルシア。スカーレットのお祖父さんだ。
ドシンという音がして、床が揺れた。
「お祖父様、ただいま戻りましたわ。」
「ああ、元気にしていたか?ルカにしごかれてはいないだろうな?」
「じじい。迷惑しているのは俺だ。」
ルカがすかさずツッコミを入れた。
「なんだと?!こんなかわいくて、素直な孫をか?!」
ルカの頭の上にげんこつが落ちた。ルカが床にめり込んでいる。
「うわぁ、爺さん…相変わらずやりすぎだ…。」
「おう!ジャンマルコ!元気だっか!?相変わらず辛気臭い前髪だな!」
「やめてくれー。」
お祖父様はくしゃくしゃと頭をかき乱すが、ジャンマルコの鉄壁の前髪は崩れない。
「フゥ、久しぶりだな、カナリアは楽しいか?」
「キュルキュルー」
お祖父様の登場に、どこからともなく現れたフゥがコロコロと転がっている。フゥの感情表現はわかりやすい。
お祖父様は一通り昔馴染みに声をかけると、こちらに向き直る。
「ガルシア領へようこそ。スカーレットの友人たちかな?」
「はじめまして、レティシアと申します。」
「パウラです。」
「レティシアお嬢様のメイドのクロエです。」
私たちは次々とお祖父様にお辞儀をする。
「おやおや…失礼。ご令嬢がたみな、べっぴんぞろいだ。」
と言って私たちをまじまじと見つめた。
お祖父様との挨拶が終われば、ルーカスさんにそれぞれの部屋まで案内をしてもらう。
スカーレットの豪華なイメージから、ヴィクトリア時代のような派手な家具や建築様式を想像したが、城は質素で、剛健だ。
私たちは部屋で荷物の整理をし、軽装に着替えると、玄関に集合した。そして、「街を案内しましょうか?」というスカーレットの申し出に私たちは快く承諾した。
クロエは家でお手伝いに残る。
ガルシアの街は、鍛治職人と温泉の街だった。
「あれがウルカヌス山ですわ。我が領地でも魔石の採掘をしており、火の魔石が採掘されますわ。結界石を見に行きますこと?」
スカーレットが城の背後にそびえ立つ大きな火山を指差しながら、そう提案する。
「ああ、そうだな。見に行きたい。」
珍しくルカが積極的にそれに同意したので、私たちはぞろぞろと山登りをすることになった。
「結界石ってなに?」
わたしは道中スカーレットに疑問をぶつける。
「ご存じなくて?公国は結界で守られているのですわ。鉱山の発見とともに巨大な魔石を奉納し、防衛にも使用したというのが始まりと言われています。こちらですわ。」
スカーレットが指を刺した先には、私の身長と同じくらいあろうかという、巨大な魔石があった。きちんと土台に設置されており、煌々と鈍く燃えるように光っている。
「これが…結界石。」
結界石を初めて見る私とパウラは、あまりの美しさにふぅと息をのむ。
「ええ。ガルシア家は、この結界石を守るようにもいわれていますわ。公国の国境の要です。」
「初めてガルシアのものをみたが、いい魔石だ。」
「2年前に、良質な魔石が発掘されまして、これであと30年は結界を維持できますわ。」
「イエールにもこんなに大きな結界石があるの?」
「あぁ、イエールの結界石は風の魔石だ。もう少ししたら定期確認の時期だから、お前達にやってみせるつもりだった。」
「じゃあどこかに、これくらい大きな土の魔石もある?」
パウラがワクワクした顔でルカに質問する。
「いや…どうだろうか。土の魔石と水の魔石は、見た事がない。」
「ええーー!残念…。」
「私も残念…。」
水の魔石の結界石がないと聞いて、パウラとともに落ち込んだ。
「こんな大きな魔石見たかったね。」
「そうね… 。でも、なぜ風と火だけなのかしらね。魔石の性質としては確かに似ているけれど…。ここから先は結界の外って事ね?」
「そうだな。レティシアの言いたい事はわかる。結界を行き来できなくなるのか、という質問だな?」
「そうなのよ。わたしはあっちに行けないってこと?」
「いや、簡易結界と一緒だ。外からの侵入は阻むが、内から外に出る分には問題ない。だから気をつけろ。出ると入れないぞ。」
「…気をつけなきゃ。でも…例えば魔獣は行き来できるの?」
「魔獣も同様だ。だが、魔獣も結界があるとなんとなくわかるらしい。うっかり出る事はあるかもしれないが、積極的に出る魔獣は少ない。」
「魔獣達は公国以外、つまり結界の外でも生きていけるのね。」
「ああ、人間と一緒さ。たが、これも人間と一緒で、公国内でしか魔術を使えない。」
「そうなの?!なんで?!」
これは、衝撃の事実だ。
もし万が一お嫁に行ってしまったら、自衛できないではないか。
「原因は不明だ。」
にべもなく言うルカに対して、
これは、なんとしても解明しなければならない…、と思う。
「戻りましょう。お祖父様が秘伝書をご準備なさっているはずですわ。」
スカーレットはそう言ってきた道を戻った
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