58.イエールへ帰還
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「やっと帰ってきたわ。」
私が馬車から降りると、「楽しかったね。」と言うパウラは優勝賞金を抱えて、嬉しそうだ。
私たちは一週間ぶりにカナリアで食卓を囲む。
「そういえば、3ヶ月後には魔術師試験じゃなかったか?」
と、ジャンマルコが言う。
パウラが「試験って何をするの?」と聞くと、
「毎年違う上に、あのばあさんが決める。去年は障害物競走、一昨年は水球大会だった。」とジャンマルコは答える。
「そんな楽しそうな試験でいいの?」
「名前から軽いものを想像すると痛い目に遭う…。ばあさんの性格の悪さが一番にでるのが正魔術師試験だよ。毎年1/4は脱落者がでるから、終わった後はゴンザレス達が敗者復活戦をとり行ってる。だから、正魔術師の中でも純正魔術師と複正魔術師と揶揄されていてだな…。」
「なるほど…なんとなく理解できたわ。」
「ただ、きっとみんなは試験に受かるさ。大会でも優勝したしな。手続きはしておくよ。」
「お待ちなさい。ジャンマルコ。」
スカーレットが、ジャンマルコを制止する。
「どうしたんだい、スカーレットちゃん?」
「わたくし、試験を受けるとは言っていませんわ。」
「受けないの?」
私はスカーレットの言葉にびっくりして聞き返してしまう。
「あなたがた…。わたくしがカナリアに来た理由を忘れておりますわね?」
スカーレットは額を押さえて首を振り、呆れた様子だ。
「なんだったっけ?お祖父様に言われたんだっけ?」
「わたくしは、フゥを使役するために来たのです!」
スカーレットは大きく宣言した。
「そ、そうだったわね。」
「わたくし、実力がなくて魔術師試験を受けないのではなく、フゥを使役できるまで魔術師試験は受けないと決めているのです!」
「ちょ、ちょっと待って。スカーレットはフゥちゃんを使役できていないの?」
「できていませんわ。」
「じゃあ、大会でフゥちゃんと一緒に戦っていたのは何?」
「あれは、使役している状態ではないのです。難しいのですが…。」
スカーレットが、説明の仕方を考えあぐねてると、ルカが口を出す。
「俺も詳しく知らないが…ガルシアの爺さん曰く、使役しているという状態は一緒にいるという状態とは全く別物らしい。精霊という存在はサラマンダーさか確認されていない。もしかしたら他にもいるのかもしれないが、まだわからないことだらけだ。」
「そうなのね。でも、魔術師試験を受けられないことはないのよね?」
私はルカの説明にあまり納得できていないながらも、スカーレットがそこまで試験の受験にこだわる理由がわからなかった。
「そうだ。あくまで試験は依頼を3回こなすことだけが要件だ。」
「じゃあ、とりあえず一緒に受けようよ。正魔術師になっても、サラマンダーの使役はできるのよね?じゃあ受けられる時に受けておけばいいじゃない。」
私はスカーレットに向き直り、試験を受けるように促す。
「わたくしの目標は、試験に合格する事ではありませんの。ガルシア家は代々フゥを使役して初めて一人前と名乗れるのです。フゥを使役できなければ魔術師資格など必要ありませんわ!」
スカーレットは食事を終えて、そのまま食堂を出て行ってしまった。
スカーレットが去った後は、みんなで作戦会議が始まる。
「僕、スカーレットと一緒に試験を受けたいな。」
「そうね、パウラせっかく一緒に修行してきたから、受けたいわよね。」
「でも、スカーレットちゃんだぞ?あの調子だと、下手な説得をするとかえって逆効果だ。」
ジャンマルコは的確にスカーレットの性格を見抜いている。
「試験までに使役できる方法はないのですか?」
クロエが発想の転換を試みる。
「そこに関しては、実は俺もよくわからない。そもそもガルシアの爺さんがスカーレットをここによこした理由もわかっていない。スカーレットは俺の弟子にならなくても、実力は備えていたからな。なぜ来たんだ?」
ルカはここにいないスカーレットに対して疑問を投げかける。
「知らないわよ。これはもう…スカーレットのお祖父さんのところへ聞きに行くしかないわね。秘伝書もあるって言っていたし…。」
わたしは、スカーレットと一緒に試験を受けたいし、精霊の秘密も解明したい。その二つを達成するには、鍵であるおじいさんに会いに行くしかない。
「レティシアちゃん、ガルシアへ行くのか?」
ジャンマルコは驚いた顔でこちらを見る。
「え?みんなは行かないの?」
「僕は行く!」
「お嬢様が行くのでしたら私も参ります。」
パウラとクロエはすかさず同意してくれた。
ジャンマルコがそれに遅れをとるまいと声を発するが、苦渋の表情だ。
「くっ…爺さんに会いに行くのか…だが…お、俺も行くよ!」
「ルカはどうするの?」
ルカは、うーんと目をつぶって考えたあと、「……俺も行く。」と重い口を開けた。
「決まりね!スカーレットに言ってくるわ。」
私はスカーレットの部屋へ向かい、半ば無理矢理な了承をとって、見事カナリアの住人達のガルシア行きが決まった。
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