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カナリアの弟子〜1年後の婚約式が嫌なので逃げ出します〜  作者: 佐藤純
第四章:魔術師大会

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56.悪者達の行方

Twitter(X)リンク:https://twitter.com/jun_satoh_novel

―ひと月前に遡る―


「お前がゲイリー司祭か?ああ、そういえば教会から追い出されたのだったな。」


フードを目深に被った大柄な男が、フランツの外れ、もう人は住んでいないのでは、と思わせるような蔦で覆われた家を訪れていた。

家にはもう司祭とよぶにはみすぼらしく、痩せこけた姿のゲイリー司祭がいた。

オビの街を追い出された司祭は、近隣の小さな村を転々としていたが、教会の影響下にない街など公国には存在しない。人の入れ替わりが激しいフランツでは幾分ましかと思い、目立つまいと、なるべく身なりを清潔にして暮らしていた。

ゲイリー元司祭は、ここを訪れる人間などかつていなかったため、恐る恐るドアを開けたところに、大柄な男が立っていた。男は足首まである黒いコートを着ていたが、コートの中にあるものを見ると、ゲイリー司祭は、みるみるうちに血の気がひいていき、膝をついて、懇願した。


「ひぃい…!申し訳ございません…!わたくしめはもうあなた様方のご要望に応えられる立場ではございません…。どうかご容赦を…。」


「今日は魔石を取りに来たのではない。きっとお前が役に立つと聞いて来たのだ。」


「は?ははぁ…?何でしょうか。しかし、もう私は…」


「魔術師をさらうんだ。」


「魔術師を…?」


「そうだ。お前をそんな目に合わせた奴らを我々に引き渡せ。報酬は弾んでやる。」


「しかし…やつらは厄介でして、正当防衛であれば文字通り魔術を使って攻撃して参ります。こ、この火傷も魔術師の見習い風情に…」


「そうか、では、お前の命はここまでだな。お前から買う魔石は上質で、こちらとしても都合がよかったが、残念だ。もうお前の使い道はない上に、我々が魔石を集めていることを知っているからな。今までいい思いもしただろう?」


「ひっ…?!やります…!やらせていただきます…!」


「いいだろう。1週間後にまた来る。それまでに一人は準備しておくんだな。」


「は、はい…!」


(どうする。どうしたらいいのだ。)


ゲイリー元司祭は、すきま風が入る家の中を、ぐるぐる回るりながら考えた。


(そうだ…魔術師とて万能ではない。奇襲すれば大丈夫だ…。一人のところを狙って…。まだ完全に魔術を扱えない見習いを狙おう)


一人目は偶然だった。なんの計画もなく街にでて途方に暮れていたゲイリー元司祭の前に、魔術師組合のローブをきた魔術師が現れたのだ。その魔術師の女は、都合のいいことに小柄な女の弟子を連れていた。


「あいつだ…あいつを狙おう。一人になる瞬間があるはずだ。」


案の定、一人になる瞬間はすぐに訪れた。依頼が終わったが、宿が取れずに別々の宿になったようだ。フランツの繁忙期だ、なかなか宿は取れまい。


師匠を送って、自分の宿へ向かう見習い魔術師は、後ろから殴ると、意外にも簡単に気を失った。夜だったため、路地裏には人通りもなかった。


(よし…!よし!あとはバレないように運ぶだけだ…)


ゲイリー元司祭は、自分の住む小屋へ魔術師見習いを運んだ。

あの大柄の男は、魔術師を捕まえたあとに手錠をかけるように指示していった。何かわからない石が埋め込まれた手錠だ。今までみた魔石とは異なり、光の加減では黒ともいえるような深い深い緑青色の宝石だ。通常の魔石のような透き通るような赤や緑といった色合いではない。


「とりあえず、この手錠をかけるのか?」


ゲイリー元司祭は、うまくいった興奮から震える手を抑えて

手錠をかけた。その途端、黒っぽかった石にわずかな明暗が蜃気楼のようにちらつき、石の中で何かが渦を巻いているように見えた。


「これでいい…約束の日は明日だ。家に帰ってしばっておくか…」


約束どおり、大柄の男は1週間後に訪ねてきた。

「ご要望の魔術師でございます。まだ、見習いですが、魔術を扱うところはこの目でしっかりと見ました。」


「ふむ。よし、いいだろう。約束の報酬だ。」


大柄の男は、誘拐した少女をちらっと見ると、外にいた部下のよえな集団に指示を出し、麻袋に少女をいれ、荷馬車にのせていった。

もらったお金はずっしりと重く、その重さは、かつてオビで栄華をふるっていた頃を思い出すのに十分なものであった。


「ああ、そういえば。もちろん、見習い風情1人で事足りるわけではない。そうだろう?次も期待しているよ。」


与えた金銭でゲイリー元司祭の目の色が変わったことが分かったのだろう。大柄の男は、多くを語らずに次も調達するよう促した。


ゲイリー司祭は、また強盗の真似事をしなければならないのかという絶望感と、手に乗っているずっしりとした報酬への期待とで、ぐしゃぐしゃと揺れ動く。

(まずは仲間だ…仲間がいる…到底一人では無理だ)

「ええ、ええ、ですが、私一人では効率が悪すぎます。もしよろしければ、そちらの御仁をどなたか私めにつけてくださいませんか。」


「あ〜いいだろう。おい!ネルソン!お前、こいつをしばらく手伝ってやれ。」


呼ばれたのは、その男と同じフード付きコートを目深にかぶっているが、大柄の男よりいくぶん若い男だった。


「ええ〜。マジすか。そんなガリガリのじいさんと一緒なんて…ついてねぇ…。」

「監視もしておけ。頼んだぞ。」

「はいはい…。ジークレヒト様に従いますよ…。」


大柄の男はジークレヒトと呼ばれ、手際よく少女を詰め込むと、速やかに去っていった。


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