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カナリアの弟子〜1年後の婚約式が嫌なので逃げ出します〜  作者: 佐藤純
第四章:魔術師大会

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49.魔術師大会初戦

Twitter(X)リンク:https://twitter.com/jun_satoh_novel

「あなた達が私たちをとんでもない賭けにまきこんでくれた犯人?」


集合門にはエリーの弟子たちと思われる10人くらいの集団がいた。その見習い魔術師の集団は私たちが現れると、さっと道を開け、3人の少女を通した。

その中のリーダー格と見られる女子が、仁王立ちになりながら話しかけてきたのだ。


「私たちが優勝すると思うけど、いいの?」

横の女の子が、嘲るような心配顔で聞いてくる。


(いっけない。スカーレットの爆発を止めなきゃ)


そう思って前に出ると、奥の方に知っている顔がいた。

「まさか、フラビオさん?」

私は、魔術師組合本部で一緒に説明会に参加していた、青年を見つけた。


「ひいい!」

「お久しぶりね。フラビオさん、エリーさんを師匠に選んだのね。」

私は、そういえばオドオドした人だったな、という感想とともにフラビオを思い出してきた。


「この子は、落ちこぼれよ。だから、勝負は実質三人と思ってくれていいわ。その方がフェアでしょう?」

リーダー格の彼女が、言った。

フラビオはしゅんとしたように項垂れている。


「最終戦はよろしくね。それまでに勝ち残ってくれると嬉しいわ。私、ニール。エリー様の弟子は、私と…。」

「カエラよ。」

「ルシアよ。」

そういって自己紹介をして去っていった。



――――――――――――



「見習い戦初戦は…巨大迷路よー!ルールは簡単!ゴールをした順に順位が決まるわ!上位8チームが2回戦に進出よ!皆、頑張ってねー❤️」

ゴンザレスは風の魔術具で大きくした声で試合解説をするようだ。審査員席には、組合長と、オズワルド、ゴンザレスの三人が座っており、観客席に、ルカとジョンマルコ、クロエが見える。


ゴンザレスの初戦開幕宣言と同時に、会場に巨大迷路が出現した。

「なにこれ?」

「土魔術ですわね。」

「僕と一緒ってこと?」

目の前でむくむくと壁がそびえ立つ様子を見ながら、パウラと私が「すごーい」と声をあげる。スカーレットはまだ怒りが収まらないようだ。迷路を冷静に対処できるか心配である。


それぞれのチームの前に迷路の入り口が出現し、ぞろぞろとチームが入り口に入っていく。


「入ってみましょうか。」

私たち3人は迷路へと足を踏み入れた。その瞬間、後ろが閉じる。私たちは高い壁に囲まれた空間にいる。


「この迷路、風の魔術師がいたら、一発でクリアじゃない?」

「そうでもなさそうですわ。」

スカーレットが指をさした方向には、空を飛ぶ魔術師が、壁から伸びた土の手で、足を掴まれているのが見えた。


「なるほど。じゃあ、パウラが、土魔術で迷路を壊す、とかは?」

「やってみるよ。」

そう言って、パウラは、壁に手を当てて、リッキーを作りだす。リッキーになった部分の土は、一瞬壁に穴が開くが、すぐに修復された。


「これもダメね。魔術師大会の突破方法とかあるかしら、スカーレット?」

「ありませんわ。毎年、お題に対して勝つだけですことよ。ただ、迷路は初めてですわね。」

スカーレットは見習い同士の戦いなら勝てると思っていたのだろう。表情に翳りがみえる。

「じゃあ、まずは地道に出口を目指していくしかなさそうね。大丈夫よ。私には秘技があるわ!」

「秘技?」

「そうよ。こうやって、手を片方の壁に沿って歩いていくと、いつか出口につくのよ。」

「なるほどですわ。」

「魔術師の作った迷路で通用するかわからないけどね。」


遠くの方でドカンドカンと言った音や、悲鳴が聞こえる。出口を見つける方法を探しながら歩くしかない。

「リッキーに出口を見つけて来てもらいましょう。」

リッキーはトトトトと走り出した。


リッキーは、縦横無尽に壁をかけながら、迷路を進んで行く。

だが、戻って来たリッキーは、ふるふると頭を振った。


「出口がないということですの?」

「うん、そうみたい。」

「じゃあ、出口を作ることが鍵なのかしら?」


「それに、気になることがありますわ。さっきからどのチームともすれ違いません。」

「そうね。これは、本当にチーム単独での脱出タイムを競うものなのね。」


私たちはどんどんこの迷路の脱出条件を上げていく。


「出口を作ってみますわね。」

そう言って、スカーレットは、ツァーリの先にごぅごぅと音がなるほどの炎の球を作り出した。そしてそれを投げる。


壁は一瞬ぐにゃりと破壊されたが、また元に戻る。

「どうにもならないわね。レティシアもやってみます?」

「スカーレットで無理だったら、私じゃ無理よ。」

「それにしても、ジメジメして嫌になりますわね。」

周囲が土に覆われているせいで、土臭くてジメジメしていたのだ。

「ちょっと広げる?」

パウラがしゃがんで、迷路の壁を押し除けて自分の魔術で内側に壁を作り、無理矢理空間を広げた。


「パウラ、それよ。」

「パウラ、それですわ。」

私とスカーレットはそう言って、指を鳴らした。


「どれ?」

パウラはポカンとしている。

「どんどん広げていきましょう。」


どんどん広げていくと、直径20メートルくらいになっただろうか。そこで、パウラが「あ。」と言った。


「どうしたの?」

「なんか、迷路の魔力が弱いところがある気がする。」

「パウラ、どこかしら?」

そう言ってスカーレットが火の玉をつくる。


ドカンッ!といって、穴が空いた。

そして、それは戻ることはなかった。

私たちは優雅に迷路からでる。


すると、ゴンザレスが、

「第一試合、優勝はチームカナリアよー!」

と叫んだ。


「ええ?優勝してしまいましたわ?」

「なんで?そんなに早かったかしら?」

「やったー!」


私たちはぽかんとして辺りを見渡すと、パウラの作った壁に押し除けられたような迷路の残骸と、そのトリッキーな壁の動きから身を守るためのそれぞれの参加者の魔術で、会場はしっちゃかめっちゃかだった。


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