49.魔術師大会初戦
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「あなた達が私たちをとんでもない賭けにまきこんでくれた犯人?」
集合門にはエリーの弟子たちと思われる10人くらいの集団がいた。その見習い魔術師の集団は私たちが現れると、さっと道を開け、3人の少女を通した。
その中のリーダー格と見られる女子が、仁王立ちになりながら話しかけてきたのだ。
「私たちが優勝すると思うけど、いいの?」
横の女の子が、嘲るような心配顔で聞いてくる。
(いっけない。スカーレットの爆発を止めなきゃ)
そう思って前に出ると、奥の方に知っている顔がいた。
「まさか、フラビオさん?」
私は、魔術師組合本部で一緒に説明会に参加していた、青年を見つけた。
「ひいい!」
「お久しぶりね。フラビオさん、エリーさんを師匠に選んだのね。」
私は、そういえばオドオドした人だったな、という感想とともにフラビオを思い出してきた。
「この子は、落ちこぼれよ。だから、勝負は実質三人と思ってくれていいわ。その方がフェアでしょう?」
リーダー格の彼女が、言った。
フラビオはしゅんとしたように項垂れている。
「最終戦はよろしくね。それまでに勝ち残ってくれると嬉しいわ。私、ニール。エリー様の弟子は、私と…。」
「カエラよ。」
「ルシアよ。」
そういって自己紹介をして去っていった。
――――――――――――
「見習い戦初戦は…巨大迷路よー!ルールは簡単!ゴールをした順に順位が決まるわ!上位8チームが2回戦に進出よ!皆、頑張ってねー❤️」
ゴンザレスは風の魔術具で大きくした声で試合解説をするようだ。審査員席には、組合長と、オズワルド、ゴンザレスの三人が座っており、観客席に、ルカとジョンマルコ、クロエが見える。
ゴンザレスの初戦開幕宣言と同時に、会場に巨大迷路が出現した。
「なにこれ?」
「土魔術ですわね。」
「僕と一緒ってこと?」
目の前でむくむくと壁がそびえ立つ様子を見ながら、パウラと私が「すごーい」と声をあげる。スカーレットはまだ怒りが収まらないようだ。迷路を冷静に対処できるか心配である。
それぞれのチームの前に迷路の入り口が出現し、ぞろぞろとチームが入り口に入っていく。
「入ってみましょうか。」
私たち3人は迷路へと足を踏み入れた。その瞬間、後ろが閉じる。私たちは高い壁に囲まれた空間にいる。
「この迷路、風の魔術師がいたら、一発でクリアじゃない?」
「そうでもなさそうですわ。」
スカーレットが指をさした方向には、空を飛ぶ魔術師が、壁から伸びた土の手で、足を掴まれているのが見えた。
「なるほど。じゃあ、パウラが、土魔術で迷路を壊す、とかは?」
「やってみるよ。」
そう言って、パウラは、壁に手を当てて、リッキーを作りだす。リッキーになった部分の土は、一瞬壁に穴が開くが、すぐに修復された。
「これもダメね。魔術師大会の突破方法とかあるかしら、スカーレット?」
「ありませんわ。毎年、お題に対して勝つだけですことよ。ただ、迷路は初めてですわね。」
スカーレットは見習い同士の戦いなら勝てると思っていたのだろう。表情に翳りがみえる。
「じゃあ、まずは地道に出口を目指していくしかなさそうね。大丈夫よ。私には秘技があるわ!」
「秘技?」
「そうよ。こうやって、手を片方の壁に沿って歩いていくと、いつか出口につくのよ。」
「なるほどですわ。」
「魔術師の作った迷路で通用するかわからないけどね。」
遠くの方でドカンドカンと言った音や、悲鳴が聞こえる。出口を見つける方法を探しながら歩くしかない。
「リッキーに出口を見つけて来てもらいましょう。」
リッキーはトトトトと走り出した。
リッキーは、縦横無尽に壁をかけながら、迷路を進んで行く。
だが、戻って来たリッキーは、ふるふると頭を振った。
「出口がないということですの?」
「うん、そうみたい。」
「じゃあ、出口を作ることが鍵なのかしら?」
「それに、気になることがありますわ。さっきからどのチームともすれ違いません。」
「そうね。これは、本当にチーム単独での脱出タイムを競うものなのね。」
私たちはどんどんこの迷路の脱出条件を上げていく。
「出口を作ってみますわね。」
そう言って、スカーレットは、ツァーリの先にごぅごぅと音がなるほどの炎の球を作り出した。そしてそれを投げる。
壁は一瞬ぐにゃりと破壊されたが、また元に戻る。
「どうにもならないわね。レティシアもやってみます?」
「スカーレットで無理だったら、私じゃ無理よ。」
「それにしても、ジメジメして嫌になりますわね。」
周囲が土に覆われているせいで、土臭くてジメジメしていたのだ。
「ちょっと広げる?」
パウラがしゃがんで、迷路の壁を押し除けて自分の魔術で内側に壁を作り、無理矢理空間を広げた。
「パウラ、それよ。」
「パウラ、それですわ。」
私とスカーレットはそう言って、指を鳴らした。
「どれ?」
パウラはポカンとしている。
「どんどん広げていきましょう。」
どんどん広げていくと、直径20メートルくらいになっただろうか。そこで、パウラが「あ。」と言った。
「どうしたの?」
「なんか、迷路の魔力が弱いところがある気がする。」
「パウラ、どこかしら?」
そう言ってスカーレットが火の玉をつくる。
ドカンッ!といって、穴が空いた。
そして、それは戻ることはなかった。
私たちは優雅に迷路からでる。
すると、ゴンザレスが、
「第一試合、優勝はチームカナリアよー!」
と叫んだ。
「ええ?優勝してしまいましたわ?」
「なんで?そんなに早かったかしら?」
「やったー!」
私たちはぽかんとして辺りを見渡すと、パウラの作った壁に押し除けられたような迷路の残骸と、そのトリッキーな壁の動きから身を守るためのそれぞれの参加者の魔術で、会場はしっちゃかめっちゃかだった。
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