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カナリアの弟子〜1年後の婚約式が嫌なので逃げ出します〜  作者: 佐藤純
第三章:カナリア

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32.初めての依頼

Twitter(X)リンク:https://twitter.com/jun_satoh_novel

「三人とも、依頼がきたぞ。」

ルカが朝食の時に、めずらしく口をきき、一枚の紙を持ってひらひらとさせた。


「依頼?」

私はきょとんとしながらルカに聞く。パウラも同じようにルカを見ていることから、私と知識レベルは同じだろう。

「そうだ。」

「依頼って何?」

「魔術師の仕事だな。」

「私たちがするの?」

口数の少ないルカとの会話には慣れてきたつもりだったが、あまりにも要領を得ない。ちらりも横を見ると、案の定イライラしているスカーレットがいた。机の上に置かれたスカーレットの拳がぷるぷると震えている。


「お待ちなさい!そんな一問一答をしていては日が暮れてしまいますことよ?」

スカーレットはキッとルカと私たち睨んで話し始めた。

「正式な魔術師になるためには、試験を受けなければなりませんわね?」

「そうだ。」

「その試験を受けるために、依頼を3回こなさないといけませんことね?」

「そうだ。」

「その試験要件になっている依頼を受ける、という意味ですわね?」

「その通りだな。」


パウラと私は、思わずぱちぱちと拍手をした。見事なバックキャスト構文だ。

「だから昨日、街の人に依頼をするように言ってたんだ。」

「この街には、本部があったなごりなのか魔術師に正式に依頼をする、ということがなさすぎますわ。」

スカーレットの指摘に、ジャンマルコは、はっとした顔で頷く。

「確かに、俺とルカでほとんど隠居のように過ごしていたから、本来なら依頼するところを、適当に頼まれて適当に仕事していたなぁ。」

私はルフィナおばあちゃんのことを思い出す。ルフィナおばあちゃんの頼みごとも、本来であれば依頼だったのかもしれない。

「いけませんわ。魔術師として正当な対価をいただかなければ。」

「その通りだな。」

ルカが珍しくスカーレットの言葉にうなずいた。


「依頼は、私たちだけでいくの?」

私は依頼の背景が共通認識されたところで、本題に入る。

「あぁ。」

そう返事をしながら、ルカはちらりとスカーレットを見る。

「スカーレットはすでに依頼を3回こなしているだろう。別にいかなくてもいいぞ。」

「ルカは行きますの?」

「俺は行かない。」

「では、わたくしが参りますわ!二人だけでは不安ですもの。」

パウラと私はまたしてもスカーレットの男気にぱちぱちと拍手をしてしまう。スカーレットは追い打ちをかけるようにルカに言い放つ。

「あなた、最近マシになってきたかと思いましたが、わたくしの幻想でしたわね。師匠としての自覚がたりなくてよ。通常、初めての依頼には師匠が同行するものです。わたくしのおじいさまも…。」

「それで、どんな依頼なの?」

スカーレットは、尊敬するおじいさまの話になると、いつも長い。私はルカに依頼内容を確認する。

ルカは、にやっとしながら依頼書を私に渡してきた。スカーレットは、自分の話を中断されたことにムッとしていたが、依頼内容が気になるようで、一緒にのぞき込んできた。

私とスカーレットは依頼書を上から読み上げる。


「依頼主、マリア・テレジア…」

「場所、イエール周辺…」

「「依頼内容、迷い猫をさがして…」」

「あ、猫が描いてあるね〜」


スカーレットと綺麗にハモリ、文字が読めないパウラは猫の絵に最初に目がいったようだ。

そこにかいてある猫のイラストは、魔獣や精霊ではなく、あのかわいい猫のように見えた。


「俺が必要なら、ついて行ってやろうか?」

ルカは依頼書にくぎ付けになっている私たちに、腕を組みながら揶揄するように言い放った。


つまり、私たちの最初の依頼は、猫探しのようだ。

「な、な、な、なんですの…。この依頼は。」

スカーレットの依頼書を持つ手がふるふると震えている。そのままグシャっと握りつぶしてしまいそうな勢いだ。スカーレットの血圧が心配だが、確かにこの依頼内容なら別に魔術師である必要はないよね、とも思う。

とはいえ、れっきとした正式な依頼だし、街の人が困っているのであれば助けてあげたい。

「スカーレット。とりあえず初めての依頼だから、やってみたいな。」

「僕も!」

パウラが勢いよく手を上げる。スカーレットはそんなパウラを見て、目をぱちぱちさせて驚きながら、少し冷静になったようだ。

「そうですわね。この街にまともな依頼を期待したわたくしが間違っていましたわ。それに、少なくともパウラにとっては良いかもしれません。」

スカーレットは思い直して、依頼を受け入れたようだ。この街にまともな依頼があるならば、ルカはこんな隠遁生活は送れていないだろう。


「猫を見つければいいのよね。朝食が終わったらマリアさんに話を聞きに行ってみる?」

私は止まってた手を動かし、朝食を食べ始めた。今日もクロエとジャンマルコが作るスープが絶品だ。

「マリアってどなたですの?」

「確か、街の中心部の花屋の店主さんよ。」

「よく覚えてるな、レティシアちゃん。」

そういいながらジャンマルコは、小さな袋をパウラに渡した。

「森で見つけたムスカリの種なんだが、マリアさんが店頭に咲かせる花に悩んでいたから、ついでにこれ上げてくれ。」

「わかった。」

パウラはお使いができてうれしそうだ。ジャンマルコからはマリアさんのお店までの地図ももらった。


私たちは、おいしい朝食を食べきって、依頼の準備をする。

パウラのツァーリとホルダーが本部から届いたので、パウラは嬉しそうに腰に結わえていた。


朝食の後、ルカとジャンマルコとクロエが玄関からいってらっしゃいと、見送ってくれた。

クロエは初依頼に少し感無量になっているようだ。

「三人とも、おいしいごはん作って待っているから、猫見つけて帰って来るんだぞ。」

「お嬢様、初依頼頑張ってください。」

「達成できなければ笑いものだな。」

ルカは憎まれ口をたたきながらも、師匠らしく見送りをする。


かくして、私たちの最初の依頼はぬるっと始まったのであった。


第三章突入です。ここから本格的に弟子たちと師匠が魔術師になるために動いていきます。

女性嫌いというより若干人間不信だったルカは、突拍子もない弟子たちに振り回されてだんだんと少年心を取り戻していくはずです。ぜひ、評価やブックマークで、応援お願いいたします。誤字報告もありがとうございました。

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